生活習慣病は万病のもと

生活習慣病の病態生理から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

生活習慣病は、国民の健康における大きな課題であり、臨床現場で向き合うことの多い疾患群です。本記事では、生活習慣病の基礎知識から実践的な看護のポイントまで、網羅的に解説します。

目次

生活習慣病とは

生活習慣病とは、食事、運動、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣が深く関与して発症・進行する疾患の総称です。具体的には、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満症などが含まれます。

これらの疾患に共通する病態生理の基盤には、「動脈硬化」があります。不適切な生活習慣が続くことで、血管の内壁が傷つき、そこにコレステロールなどが蓄積して血管が硬く、狭くなる状態です。動脈硬化が進行すると、血流が悪化し、臓器に必要な酸素や栄養素が届きにくくなります。その結果、様々な重篤な合併症を引き起こすリスクが高まります。

生活習慣病の主な原因

生活習慣病の主な原因は、その名の通り日々の生活習慣にあります。

食生活の乱れ: 高塩分、高脂肪、高カロリーの食事は、高血圧、脂質異常症、肥満、糖尿病のリスクを著しく高めます。
運動不足: 運動不足は、エネルギー消費を減少させ、肥満やインスリン抵抗性の原因となります。
喫煙: 喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を促進する強力なリスク因子です。
過度の飲酒: 過度のアルコール摂取は、肝臓への負担だけでなく、血圧上昇や中性脂肪の増加を招きます。
ストレス: 慢性的なストレスは、ホルモンバランスの乱れを介して、血圧や血糖値に悪影響を及ぼす可能性があります。
遺伝的要因: 家族に高血圧や糖尿病の人がいる場合、体質的に発症しやすい傾向があります。

これらの要因が複合的に絡み合い、生活習慣病の発症に至ります。

症状と恐ろしい合併症

生活習慣病の多くは、初期段階では自覚症状がほとんどない「サイレントキラー」と呼ばれ、症状が現れたときには、すでに病状が進行しているケースが少なくありません。そして、進行すると以下のような様々な合併症を引き起こします。

心臓病(狭心症・心筋梗塞)

動脈硬化により心臓の血管(冠動脈)が狭くなったり詰まったりすることで、胸の痛みや圧迫感が生じます。最悪の場合、心筋が壊死し、生命に危険が及びます。心機能が低下し、心不全に至ることもあります。

脳卒中(脳梗塞・脳出血)

脳の血管が詰まったり破れたりすることで発症します。麻痺や言語障害などの後遺症が残ることが多く、重症の場合は死に至ることもあります。

腎不全

高血圧や糖尿病によって腎臓の細かい血管がダメージを受け、徐々に腎機能が低下します。進行すると、体内の老廃物を排出できなくなり、人工透析が必要になります。

糖尿病の合併症

糖尿病はそれ自体が生活習慣病の一つですが、コントロールが悪いと特有の合併症を引き起こします。
網膜症: 目の網膜の血管が障害され、進行すると失明に至ります。
神経障害: 手足のしびれや感覚の麻痺などが起こります。
腎症: 上述の腎不全の原因となります。

治療・対症療法

生活習慣病の治療の基本は、原因となっている生活習慣の改善です。

  • 食事療法: 管理栄養士の指導のもと、塩分、糖質、脂質をコントロールした食事を実践します。
  • 運動療法: 医師の指導のもと、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を継続的に行います。
  • 薬物療法: 生活習慣の改善だけではコントロールが難しい場合、降圧薬、血糖降下薬、脂質異常症治療薬などが用いられます。

これらの治療は、単独ではなく、組み合わせて行われることが一般的です。

看護のポイント

生活習慣病の患者への看護は、単にバイタルサインを測定し、服薬を管理するだけではありません。患者が自ら生活習慣を改善し、生涯にわたって自己管理を続けられるように支援する「セルフケア支援」が中心となります。

  • アセスメント
    • 患者の生活背景、食生活、運動習慣、疾患に対する理解度、価値観などを詳細に把握します。何が生活習慣の改善を妨げているのか、患者と共に問題点を明確にすることが重要です。
  • 個別性のある目標設定
    • 「血圧を下げましょう」といった漠然とした目標ではなく、「まずは1日10分歩くことから始めてみませんか」「お味噌汁の汁を半分残してみましょう」など、患者が実行可能で具体的な目標を一緒に設定します。
  • 動機づけ支援
    • 患者が治療や生活習慣の改善に前向きに取り組めるよう、動機づけを行います。疾患や治療について分かりやすく説明し、改善によるメリットや、放置した場合のリスクを丁寧に伝えます。成功体験を積み重ねられるよう支援し、自己効力感を高めることも大切です。
  • 多職種連携
    • 医師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師など、多職種と連携し、チームで患者を支援する体制を構築します。看護師は、その中で患者に最も近い存在として、情報共有のハブとなる役割を担います。
  • 継続的なモニタリングと評価
    • 定期的にバイタルサインや検査データを確認し、治療効果や生活習慣改善の状況を評価します。目標の達成度に応じて、計画を修正し、継続的に支援を続けます。

参考資料
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