褥瘡で使用する薬剤について vol.2

褥瘡で使用する薬剤について vol.2

あずかん

「褥瘡の処置、指示通りに〇〇軟膏を塗っているのに、全然良くならないどころかジュクジュクしてきた…」と悩んだ経験はありませんか?
褥瘡の処置において、医師の指示をただ遂行するだけの「軟膏運び職人」になってしまうのは非常に危険です。なぜなら、褥瘡の局所状態(組織の壊死、感染・炎症、湿潤バランス、創縁の異常)は日々刻々と変化するからです。
「創部の水分量(滲出液)」と「軟膏の基剤(吸水性か、保湿性か)」のミスマッチが起きているのに漫然と塗り続けると、創周囲の皮膚までズルズルに浸軟させてしまったり、逆に乾燥させて壊死組織をカチカチにしてしまったりと、治癒を劇的に遅らせる原因になります。
今回は、現場で頻用される9つの褥瘡外用薬について、「この創部だから、この薬が選ばれている」という医師の臨床推論を読み解き、私たちが処置の際に何をアセスメントすべきかを徹底解説します。


目次

観察項目&根拠(褥瘡外用薬のアセスメント)

薬剤名と適応となる創部所見観察ポイント薬理作用と基剤の特性
ゲーベンクリーム
(スルファジアジン銀)
【黒色期〜黄色期 / 感染・壊死組織】
壊死組織の上に「ケーキの生クリームのように」厚め(約2〜3mm)に塗布する。処置の際、ガーゼを剥がして緑色の膿(緑膿菌感染)や悪臭が消退してきているかを評価する。【抗菌+壊死組織融解】
広域抗菌スペクトルを持ち、特に緑膿菌に有効です。また、基剤が水溶性クリーム(O/W型)で水分を適度に保つため、カチカチの黒色壊死組織を柔らかく溶かす(自己融解を促す)目的で使われます。ただし、銀アレルギーの患者には禁忌です。
イソジンシュガー軟膏
(ユーパスタなど)
【黄色期 / 滲出液:多 / 感染創】
滲出液を吸ってドロドロに溶けるため、前回の軟膏を微温湯とたっぷりの泡で完全に洗い流す
塗布時、患者が「しみるような痛み」を訴えないか表情を観察する。
【強力な抗菌+吸水・乾燥】
ポビドンヨードの強力な殺菌作用に加え、白糖の浸透圧で過剰な滲出液をグングン吸い取り、創部を乾かして浮腫を軽減します(マクロゴール基剤)。ただし、肉芽形成細胞も殺してしまう細胞毒性があるため、感染が落ち着き良性肉芽が上がってきたら速やかに変更を提案すべきサインです。
イソジンゲル
(ポビドンヨード)
【黒色期〜黄色期 / 滲出液:少〜中 / 感染創】
イソジンシュガーと間違えないよう指示を確認する。
滲出液が少なく、少し乾き気味の感染創にすり込むように塗布する。
【抗菌+適度な保湿】
同じイソジンでも、こちらは水溶性ゲル基剤です。シュガーのように「強烈に水を吸う」作用がないため、滲出液が少ない創部に用いても、創をカラカラに乾燥させすぎずに殺菌効果を発揮します。甲状腺機能異常のある患者にはヨード吸収による悪化リスクがあり要注意です。
フィブラストスプレー
(トラフェルミン)
【赤色期 / 滲出液:少〜中 / 肉芽形成】
創部から約5cm離して、創面全体に均一に噴霧する(目安:5cm四方に3プッシュ)。
スプレー後、創部が乾燥しすぎないよう、非固着性ドレッシング材などで適切に覆う。
【強力な肉芽形成促進】
細胞増殖因子(bFGF)そのものであり、線維芽細胞を増殖させ、爆発的に肉芽を盛り上げます。非常に高価な薬です。細胞を増殖させるため、悪性腫瘍の部位には絶対禁忌です。また、感染がある状態で使うと細菌も増殖させてしまうため、感染コントロールがついていることが絶対条件です。
オルセノン軟膏
(トレチノイントコフェリル)
【赤色期〜白色期 / 滲出液:少〜中】
周囲の皮膚に付着しないよう、肉芽部分(赤い部分)にのみ的確に塗布する。
創縁の上皮化(ピンク色の薄い皮膚の広がり)が進んでいるか観察する。
【肉芽形成+上皮化促進】
ビタミンAとEの誘導体で、血管新生やコラーゲン合成を促します。マクロゴール基剤ですが、吸水性は中等度です。肉芽が上がってきて、いよいよ皮膚のフタ(上皮化)を完成させたい時期に大活躍します。
アクトシン軟膏
(ブクラデシンナトリウム)
【赤色期 / 滲出液:多】
肉芽が赤く盛り上がっているが、滲出液がまだ多い(ガーゼがビショビショになる)状態で使用する。
出血しやすいもろい肉芽になっていないか確認する。
【肉芽形成+吸水】
血管拡張作用と肉芽増殖作用があります。マクロゴール基剤で非常に吸水性が高いため、「肉芽は上がってきたけれど、まだジクジクと滲出液が多い」という、赤色期への移行期〜中期にベストマッチします。
プロスタンディン軟膏
(アルプロスタジルアルファデクス)
【赤色期〜白色期 / 滲出液:少〜乾燥】
ポケット形成がある場合、シリンジ等を用いてポケットの奥まで充填する。
創部がカラカラに乾燥していないか確認し、必要ならフィルム材を併用する。
【血管拡張・血流改善+保湿】
プロスタグランジンE1誘導体で、局所の血流を劇的に改善します。基剤が油脂性(マクロゴールを含まない)であるため水分を吸わず、創部をしっかり保湿します。滲出液が減ってきて乾燥気味の赤色期〜白色期や、血流の悪いポケット内部の肉芽形成に最適です。
アズノール軟膏
(ジメチルイソプロピルアズレン)
【深達度Ⅰ度(発赤のみ) / 予防・保護】
発赤部位や、便失禁などでかぶれやすい周囲皮膚に薄く塗布する。
指で押して白くなる発赤(反応性充血)か、白くならない発赤(初期褥瘡)かを見極める。
【消炎+皮膚保護】
カモミール由来の抗炎症成分です。基剤がワセリンや精製ラノリン(油脂性)のため、水を弾くバリア機能に優れています。表皮剥離や初期の赤み、あるいは強い外用薬から周囲の健常皮膚を守るための「マスキング」として非常に有用です。
サトウザルベ軟膏
(亜鉛華軟膏)
【周囲皮膚の浸軟防止 / 滲出液のコントロール】
滲出液が多くて周囲の皮膚が白くふやけている(浸軟)場合、健常皮膚の境界線に「土手を作るように」厚塗りする。
洗浄時はオリーブオイル等で優しく拭き取る(水では落ちないため)。
【収れん+吸水・保護】
酸化亜鉛がタンパク質と結合して被膜を作り、炎症を抑えつつ滲出液を適度に吸収します。創部そのものに塗るというより、「滲出液の氾濫から周囲の皮膚を守る防波堤」としての役割が大きいです。ゴシゴシ洗うと皮膚が剥けるので、洗浄方法には注意が必要です。

現場で役立つ+αの看護ポイント

「古い軟膏を残さない」ことが最大の治療

どんなに高価で優れた外用薬(フィブラストスプレーなど)を使っても、前回の軟膏や壊死物質が創面に残っていれば、成分は組織に届きません
ドクターコールで「薬を変えてほしい」と相談する前に、まずは「微温湯とたっぷりの泡(弱酸性石鹸など)で、愛護的かつ徹底的に創部を洗浄できているか」を振り返ってみましょう。シャワーボトルでサッと流すだけでは、マクロゴール基剤の軟膏は意外と落ちていません。

「薬の変更時期」のサインを見逃さない

イソジンシュガーやゲーベンクリームは「攻めの薬(壊死組織や感染をやっつける)」です。悪臭が消え、赤い肉芽が見え始めたら、これらは細胞毒性となり治癒を阻害します。
「赤いお肉が見えてきたので、そろそろアクトシンやプロスタンディンといった『育てる薬』に変更しませんか?」と医師に提案できるのが、プロの看護師のアセスメントです。


参考資料
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