褥瘡の発赤について|観察の仕方から看護のポイントまで徹底解説
あずかん体位変換のとき、仙骨部や踵に赤みを見つける。看護記録には「発赤あり、経過観察」。病棟ではよくある光景です。
ただ、この「発赤」には性質がまったく違う2種類があります。
・消退する発赤:圧迫を解除した後の反応性充血。皮膚と毛細血管はまだ持ちこたえている状態
・消退しない発赤:真皮内で血管が傷み、赤血球が血管外に漏れ出ている状態。NPIAP分類のステージ1、DESIGN-R®2020のd1(持続する発赤) に当たり、すでに「褥瘡」です
前者は除圧で戻りますが、後者は組織障害が始まっています。さらに厄介なのが、表面は暗赤色の「ただの発赤」に見えて、筋層や皮下組織が先に壊れているDTI(深部損傷褥瘡)疑いです。見た目が軽いため「経過観察」とされがちですが、数日で黒色壊死や深いポケットに変わり、「昨日まで赤いだけだったのに」という事態を招きます。
赤みを見つけたら必ず指で押す。この1秒の判断が、患者さんの数か月の治療期間を左右します。
【保存版】観察項目&根拠
| 観察項目 | 観察ポイント | 根拠・予測 |
|---|---|---|
| 発赤の消退の有無(指押し法) | 発赤部を示指で約3秒軽く圧迫し、離した直後に白くなるか(白→赤に戻る)を見る。体位変換直後ではなく、除圧して30分程度おいてから再評価する | 白くなる=毛細血管が保たれ、血液が押し出されて戻る反応性充血。 白くならない=赤血球が血管外へ漏れた真皮内出血で、押しても色素は移動しない。 除圧直後は反応性充血が強く出るため、時間をおいた評価で偽陽性を減らせる |
| 発赤の消退の有無(ガラス板圧診法) | 透明なプラスチック板やガラス板を発赤部に当てて圧迫し、押しながら色調を観察。指で隠れて見えない部分も評価できる。判断が分かれる時はこちらでダブルチェック | 指押し法は「離した瞬間」の判断で主観が入りやすい。圧迫中に赤みが残れば血管外の出血を示し、消退しない発赤(d1/ステージ1)と判断しやすい |
| 色調 | 鮮紅色か、暗赤色・紫色・栗色か。周囲の健常皮膚と比較し、明るい自然光またはペンライトで観察。写真をスケール付きで撮る | 暗赤〜紫色は深部組織の虚血・出血を反映し、DTI疑いを考える。圧とずれは骨突出部に近い深部組織ほど集中するため、表皮より先に筋層が壊れることがある |
| 皮膚温 | 手背で発赤部と周囲・対側を触り比べる。熱感か冷感かを両方確認 | 熱感=炎症反応の亢進。冷感=血流途絶による虚血の進行を示唆。どちらも健常部との差があれば深部障害のサインとなりうる |
| 硬さ・浮腫(触診) | 指腹で周囲と比べ、硬結か、ぶよぶよした泥のような感触かを確認 | 硬結や泥状感は皮下組織・筋層の浮腫や壊死を示唆し、DTIを疑う所見。色調が分かりにくい肌でも、触診で拾える |
| 疼痛 | 発語可能なら「押すと痛い?」「何もしなくても痛い?」と聞く。意思疎通が難しい方は、触れた時の表情・顔をしかめる・逃避動作・バイタル変化を見る | 損傷部の痛みは表面所見より先に出ることがある。表面が軽い割に痛みが強い場合は、深部損傷を疑う根拠になる |
| 形状・部位と原因の一致 | 骨突出部(仙骨・尾骨・大転子・踵・後頭部)に一致するか、医療機器(NPPVマスク、弾性ストッキング、酸素チューブ、シーネ)の形と一致するか。形と大きさを計測(長径×短径) | 骨突出部に一致=自重による圧迫・ずれ。 機器の形に一致=医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)。 原因が違えば除圧の方法も変わる |
| 鑑別:IAD・真菌など | 赤みが肛門周囲・殿裂・鼠径部に広がり、境界不明瞭でびらんを伴うか、骨突出部に限局するか。失禁の有無、衛星病変(周囲の小さな赤い点)を確認 | 失禁関連皮膚炎(IAD)は尿・便の化学刺激による接触皮膚炎で、皮膚保護と排泄ケアが優先。カンジダは衛星病変が特徴。褥瘡と混同すると、除圧だけ強化してスキンケアが手薄になる |
| 経時変化(48〜72時間) | 同じ部位を毎勤務で観察し、色・大きさ・水疱・表皮剥離の出現を記録。マーキングするときは皮膚に直接書かず、写真で比較 | DTIは発生後数日で急速に進展し、壊死や潰瘍として顕在化することがある。入院・手術・長時間の検査の2〜3日後に暗赤色病変が出たら、その時の圧迫が原因の可能性がある |
| リスク評価(ブレーデンスケール・OHスケール等) | 知覚・湿潤・活動性・可動性・栄養・摩擦とずれを採点し、点数の変化を追う | 点数が低い(ブレーデン)ほど発生リスクが高く、除圧マットレスの変更などの根拠になる。発赤を見つけた時点で再評価する |
| 検査データ | Alb・TP、Hb、血糖・HbA1c、CRP・WBC、DTI疑いではCKを確認。体重推移、食事摂取量も見る | 低栄養・貧血は組織の酸素供給と修復力を落とす。高血糖は創傷治癒を遅らせ感染リスクを高める。CK上昇は筋組織の損傷を示唆する所見の一つ(褥瘡単独での診断根拠にはならない) |
| 全身状態・循環 | 血圧低下、昇圧薬使用、末梢冷感、浮腫、発熱、鎮静の深さを確認 | 低灌流状態では、通常なら耐えられる圧でも組織が虚血に陥る。昇圧薬使用中・鎮静中の患者さんは、同じ体位変換間隔でも発生しやすい |
現場で役立つ+αの看護ポイント
発赤部をマッサージしない
「赤いからさすって血流を良くしよう」は、現場でまだ見かける行為です。日本褥瘡学会のガイドラインでも、発赤部へのマッサージは推奨されていません。脆弱な組織にずれ・摩擦を加え、障害を深めるためです。保湿は、こすらず手のひらで「乗せる」ように。
消退しない発赤を見つけたら「その部位に体重をのせない」
体位変換のスケジュール通りにしていても、その部位が下になる体位は避けます。30度側臥位、踵の浮かせ(下腿全体で支えるクッション)、ギャッチアップ後の背抜き・足抜きでずれを取る。体圧分散マットレスの種類が合っているかも、このタイミングで見直します。
夜勤帯で見つけたときの報告の組み立て
暗赤色・紫色の発赤は、夜間でも「朝まで様子見」ではなく、勤務帯のうちにリーダーへ共有し、除圧を開始します。ドクターコールや皮膚・排泄ケア認定看護師への相談前に、次を揃えておくと話が早く進みます。
・部位・大きさ(cm)・色調・消退の有無
・熱感/冷感、硬結/泥状感、疼痛の有無
・発生のきっかけ(手術、長時間の同一体位、機器装着など)
・写真(スケール付き)と、ブレーデンスケールの点数
「仙骨部に5×4cmの暗紫色の消退しない発赤、周囲より熱感と軟らかい感触あり。2日前に約6時間の手術。DTI疑いと考え、除圧を開始しています」と伝えれば、相手も状況をすぐにつかめます。
色素の濃い皮膚では、色より「触る」
肌の色が濃い方では、発赤そのものが見えにくくなります。皮膚温・硬さ・浮腫・疼痛を優先して観察し、健常部との比較で変化を拾います。
記録は「発赤あり」で終わらせない
「消退しない」「暗赤色」「硬結あり」まで書けば、次の勤務者が同じ基準で比較できます。DESIGN-R®2020で評価しておくと、経過も共有しやすくなります。
