
生活習慣病は、かつて「成人病」と呼ばれていましたが、食生活、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣がその発症・進行に深く関与することから、1996年に厚生省(当時)によって「生活習慣病」と改称されました。この記事では、日本の主要な死亡原因であるがん、心疾患、脳血管疾患の危険因子でもある、生活習慣病について詳しく説明していきます。
生活習慣病とは
生活習慣病は単一の疾患ではなく、不適切な生活習慣によって引き起こされる様々な疾患の総称です。代表的なものに高血圧症、脂質異常症、2型糖尿病、高尿酸血症(痛風)、肥満症などがあります。これらの疾患は、それぞれが独立しているだけでなく、相互に密接に関連し合って病態を形成します。この状態は「メタボリックシンドローム」と呼ばれ、動脈硬化を強力に促進させる点が病態生理学的な最大の問題です。
動脈硬化の進行プロセス
- 高血圧: 血管壁に常に高い圧力がかかることで、血管の内皮細胞が傷つきます。
- 脂質異常症: 血液中の過剰なLDL(悪玉)コレステロールが、傷ついた血管内皮から血管壁に侵入し、酸化して粥状(アテローム)のプラークを形成します。
- 高血糖(糖尿病): 過剰な糖が血管内皮を傷つけ、また、糖化によって生じるAGEs(終末糖化産物)が血管の弾力性を失わせ、動脈硬化をさらに悪化させます。
- プラークの増大と破綻: アテロームプラークが徐々に大きくなると血管が狭窄し、血流が滞ります。プラークが破れると、その修復のために血栓が形成され、血管を完全に閉塞させることがあります。
この結果、閉塞した場所に応じて脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症といった重篤な虚血性疾患を引き起こします。これが生活習慣病の最も恐ろしい帰結です。
高血圧とは
高血圧とは、血圧が持続的に高い状態を指します。具体的には、家庭や医療機関での血圧測定で、上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上または下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。この状態が続くと、血管に負担がかかり、さまざまな疾患を引き起こす可能性があります。
高血圧の種類
高血圧は、主に以下の2種類に分類されます。
原発性高血圧:(95%のケース)特定の原因が不明で、遺伝的要因や生活習慣が影響しています。
続発性高血圧:(5%のケース)腎疾患や内分泌疾患、薬剤によるものなど、他の病気や状態によって引き起こされる高血圧です。
高血圧の原因
高血圧の原因には多くの要因が影響しますが、主なものを以下に示します。
1. 食生活
塩分の摂取:塩分を多く含む食事は、体内で水分を保持し、血圧を上昇させる要因となります。
肥満:過剰なカロリー摂取は、肥満を引き起こし、これも血圧を上昇させる要因です。
アルコール:過度のアルコール摂取も高血圧を引き起こすことがあります。
2. 運動不足
体を動かさないことで心臓や血管の健康が損なわれ、血圧が上昇しやすくなります。定期的な運動は血圧を下げる効果があります。
3. ストレス
精神的なストレスは、血圧を一時的に上昇させることがありますが、長期的には慢性的な高血圧に繋がることがあります。リラクゼーションや趣味の時間がストレス軽減に役立ちます。
4. 遺伝
家族に高血圧の人が多い場合、自分も高血圧になりやすいという遺伝的要因も考慮すべきです。
高血圧の症状
高血圧は「沈黙の病」とも呼ばれ、自覚症状がほとんどありません。しかし、症状が進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
頭痛、めまい、動悸、肩こり、視力障害
これらの症状が現れた場合、すでに高血圧が進行している可能性があるため、早めの受診が望まれます。
高血圧の影響と合併症
高血圧は、そのまま放置すると、以下のような深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
1. 心臓病
高血圧により心臓に負担がかかり、心筋梗塞や心不全のリスクが高まります。


2. 脳卒中
脳の血管に負担がかかり、脳卒中(特に脳出血)を引き起こす可能性があります。
3. 腎不全
高血圧は腎臓の血管にも影響を与え、慢性腎不全の原因となることがあります。
4. 目の障害
網膜に影響を及ぼし、視力が低下することがあります。
高血圧の診断と治療
高血圧の診断には、医療機関での血圧測定が一般的です。初めての診断後は、定期的に血圧を測定し、日常生活での見直しが求められます。
生活習慣の改善
食事療法:塩分を減らし、野菜や果物を多く摂取する食事を心がけることが重要です。
運動:ウォーキングや軽いジョギングなど、定期的な運動を取り入れることが推奨されます。
ストレス管理:リラクゼーションや趣味の時間を大切にし、ストレスを軽減する工夫が必要です。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは効果が見られない場合、医師から処方された薬を使用することもあります。降圧剤にはいくつかの種類がありますので、医師と相談しながら適切な治療を行うことが大切です。
高血圧予防のためにできること
高血圧を予防するために、日常生活の中で以下の点に注意しましょう。
バランスの良い食事:特に塩分を控え、野菜や果物を取り入れた食事を心掛けます。
定期的な運動:週に150分以上の軽い運動を目指します。
十分な睡眠:質の良い睡眠が心身の健康を保つために重要です。
ストレスを減らす:リラックスする時間を持ち、趣味や友人との交流を楽しみます。
定期的な健康診断:血圧を定期的に測定し、自分の健康状態を把握します。
高血圧は生活習慣病の一つで、多くの人が影響を受けています。しかし、自分の生活習慣を見直し、適切な予防と治療を行えば、リスクを軽減することが可能です。特に30歳から60歳代の方々は自分の健康管理が重要ですので、日々の生活を振り返り、必要であれば医師に相談することをお勧めします。健康な生活習慣を取り入れることで、高血圧の予防や改善が期待でき、長い目で見て心身ともに健康でいられることでしょう。