圧迫骨折時の治療について

圧迫骨折の治療について|治療の概要や看護のポイントまで徹底解説

あずかん

同じ「圧迫骨折」という診断名でも、ある患者さんは軟性コルセットで数日後には歩行練習が始まり、別の患者さんは硬性コルセットを装着してベッド上安静が続く。さらに別の患者さんはBKP(バルーン椎体形成術)という手術を受けて、翌日には離床が進んでいく——この違いを「先生が決めたことだから」で終わらせてしまっていませんか?

治療方針の違いには、骨折の新鮮度、不安定性、疼痛の程度、神経症状の有無といった医学的な判断根拠があります。この背景を理解しているかどうかで、患者さんへの説明の説得力も、日々のケアで注意すべきポイントも変わってきます。


目次

サクッと復習!疾患の概要と治療の選択肢

脊椎圧迫骨折の治療は、骨折の安定性、疼痛の程度、神経症状の有無によって大きく保存療法手術療法に分かれます。

保存療法:コルセットによる外固定

保存療法の中心は体幹装具(コルセット)による外固定です。コルセットには大きく2種類あり、この違いを理解しておくことが重要です。

軟性コルセットは、伸縮性のある布製やメッシュ素材でできており、腹圧を高めて脊柱への負荷を軽減することを主目的とします。装着・脱着が容易で、比較的疼痛が軽度な症例や、骨折後の回復期、あるいは予防的に使用されることが多いのが特徴です。

硬性コルセット(プラスチック製硬性装具)は、患者さんの体型に合わせて作成される熱可塑性樹脂製の装具で、脊柱の可動性をより強固に制限することができます。新鮮な圧迫骨折で疼痛が強い症例、椎体の不安定性が高い症例、あるいは楔状変形の進行リスクが高いと判断された症例で選択されることが多く、装着期間も軟性コルセットより長期になる傾向があります。作成にはギプス採型や3Dスキャンを用いることもあり、フィッティングまでに数日を要することもあります。

手術療法:BKP(バルーン椎体形成術)

保存療法で疼痛が遷延する症例、偽関節形成のリスクが高い症例、椎体の圧潰進行による神経症状の出現が懸念される症例では、経皮的椎体形成術が検討されます。その代表的な術式がBKP(バルーン椎体形成術)です。

BKPは、経皮的に椎体内へバルーンを挿入して拡張させ、圧潰した椎体の高さを一部回復させた上で、その空間に骨セメントを注入して固定する術式です。局所麻酔下または全身麻酔下で、低侵襲かつ短時間で施行できることが特徴であり、術後の疼痛緩和効果が早期に得られやすく、早期離床につながりやすいという利点があります。

BKPの適応は一般的に、受傷後4週間以内程度の新鮮骨折保存療法で疼痛コントロールが困難な症例日常生活動作(ADL)の著しい低下を伴う症例とされていますが、施設や医師の判断により基準は異なります。合併症として骨セメントの椎体外漏出隣接椎体の新規骨折などがあり、これらの可能性も念頭に置いた術後観察が求められます。


観察ポイント&根拠

観察項目観察ポイント根拠・予測
コルセット装着時の皮膚状態装着部位(特に腸骨部、肋骨弓、剣状突起周辺)の発赤、皮膚損傷の有無を装着・脱着時に毎回確認する硬性コルセットは圧迫が強くかかりやすく、特に骨突出部では褥瘡様の皮膚障害を起こしやすいため、早期の皮膚変化に気づくことでコルセットの調整(クッションの追加など)につなげられる
装着中の疼痛変化コルセット装着前後での体動時痛、安静時痛の変化を比較する装着によって疼痛が軽減しない、あるいは増強する場合は、フィッティング不良や骨折の進行を疑う視点につながり、装具の再作成や再評価の必要性を判断する材料になる
BKP術後の下肢神経症状術後の下肢筋力(MMT)、感覚障害の有無を、術前の状態と比較して評価する骨セメントの椎体外漏出により、まれに神経根や脊髄が圧迫されることがあり、術前と比較して新たな神経症状が出現していないかを確認する視点が重要になる
BKP術後の疼痛の質と部位術前の疼痛部位と、術後の疼痛の変化(軽減の程度、新たな疼痛部位の出現)を確認する疼痛の著明な軽減はBKPの効果を示す一方、新たな部位への疼痛出現は隣接椎体の新規骨折を疑う所見となり得るため、疼痛部位の変化そのものを重要な情報として捉える視点が必要になる
コルセット装着下での呼吸状態特に硬性コルセットや、胸椎レベルの骨折で装着範囲が広い場合、呼吸様式や呼吸苦の有無を確認するコルセットによる体幹の圧迫は胸郭の動きを制限し、浅い呼吸につながることがあるため、排痰状況や無気肺のリスクも併せて観察する視点が求められる
離床時の姿勢とコルセットの位置起立・歩行時にコルセットが正しい位置(骨折部を支持できる高さ)にあるか、ズレていないかを確認するコルセットの位置がずれると本来の固定効果が得られず、疼痛の増強や骨折部への不必要な負荷につながる可能性があるため、離床のたびに位置を確認する習慣が重要になる
BKP施行前の抗血栓薬の内服状況抗凝固薬、抗血小板薬の内服状況と、術前の休薬期間が指示通りに守られているかを確認するBKPは低侵襲とはいえ経皮的な穿刺を伴う手術であり、抗血栓薬の継続は術中・術後の出血リスクに直結するため、術前カンファレンスでの確認が重要な観察項目になる

もし患者さんからこう言われたら、あなたはどうする

「こんな硬い装具、苦しくてつけていられません」
これは硬性コルセットを新たに装着した患者さんが、装着初期によく口にする言葉です。

言葉の裏のニード
「今まで自由に動かせていた体幹が固定されることへの単純な不快感」に加えて、「本当にこの装具が必要なのかという治療への疑問」が隠れていることが多くあります。

ここで「治療のためだから我慢してください」とだけ返してしまうと、患者さんは自分の苦痛を理解してもらえていないと感じ、装具からの逸脱行動(こっそり外してしまうなど)につながるリスクがあります。対応としては、

「窮屈に感じるお気持ち、よく分かります。この装具は、骨折した部分がさらに潰れてしまわないように、体幹をしっかり支える役割があるんです。今の苦しさは、骨がしっかりくっつくまでの期間限定のものなので、装着時間を少しずつ確認しながら、皮膚の状態も一緒にチェックしていきましょうか」

と、苦痛への共感を示した上で、装具の目的と期間限定であることを具体的に伝えると、患者さんは治療への理解を持ちやすくなりますよ。その上で、実際に皮膚状態を確認し、フィッティングに問題がないかを評価しながら、必要であれば医師や義肢装具士に調整を相談する視点が重要です。


現場で差がつく看護のコツ

工夫・アイデア期待できる効果
硬性コルセットの初回装着時は、装着時間を「起床後から徐々に延長する」形で段階的に増やす提案を医師と相談する皮膚の適応や患者さんの心理的な慣れを促し、いきなり長時間装着による皮膚トラブルや強い不快感を避けやすくなる
コルセット装着前に、下着やインナーの上にガーゼやパッドを挟むひと工夫を患者さんと一緒に試す直接的な摩擦を減らし、発汗による皮膚トラブルの予防につながる
BKP術後の初回離床時は、まず端座位で疼痛や気分不快の有無を確認してから立位へ進める段階を必ず踏む手術による急激な疼痛変化や、稀に起こる血圧変動による起立性低血圧を早期に捉えられる
軟性コルセットの患者さんには、「咳やくしゃみの際にコルセットの上から手で軽く支える」動作を指導する咳嗽時の腹圧上昇による疼痛増強を軽減し、患者さん自身が症状コントロールに参加できる感覚を持てる
コルセットの洗濯・交換用にもう1着準備できないか家族に相談する衛生管理がしやすくなり、長期装着による皮膚トラブルのリスクを軽減できる

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人さんがよくやってしまうのが、「コルセットをつけているから、もう安心」と考えてしまうことです。コルセットは骨折部を保護する目的で装着されていますが、フィッティング不良やズレがあれば十分な固定効果は得られません。装着したという事実だけで安心してしまうと、装具の位置確認や皮膚観察といった継続的なケアが疎かになってしまうことがあります。

このことを知らないと、「装具はついているから大丈夫」と思っていたら、実はコルセットが上にズレて骨折部を全く支持できていなかった……というケースに気づけないことがあります。装着していることと、正しく機能していることは別だという視点を持つと、観察の質が変わってきます。

もう一つ、新人さんが混同しやすいのが、BKP施行後の患者さんを「手術したからもう安静にしなくていい」と考えてしまうことです。BKPは低侵襲で早期離床が可能な術式ですが、それは「無制限に動いていい」ということとは違います。術後も骨セメントが完全に固定されるまでの期間や、隣接椎体への負荷を考慮した動作指導が必要であり、この点を混同すると患者さんへの説明も不十分になってしまいます。

軟性コルセットと硬性コルセットの違いを「硬さの違いだけ」と単純に捉えてしまう新人さんも多いです。ですが、それぞれ適応となる骨折の状態や治療のフェーズが異なるという理解があると、「なぜこの患者さんにはこのコルセットが選ばれたのか」という視点でカルテを読めるようになり、医師とのディスカッションの質も上がってくると思いますよ。


参考資料

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