播種性血管内凝固症候群(DIC)について

播種性血管内凝固症候群(DIC)について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

敗血症で入院中の患者さんの静脈留置針刺入部から、いつもよりじわじわと出血が続いている——採血後の止血に普段より時間がかかる、皮膚に点状出血が広がってきている。こうした所見に「あれ?」と引っかかりを感じたことはありませんか?

DIC(播種性血管内凝固症候群)は、敗血症、悪性腫瘍、産科的合併症、外傷など、様々な基礎疾患に続発して起こる病態であり、一般病棟でも決して珍しい合併症ではありません。出血傾向と血栓傾向という、一見矛盾するような症状が同時に進行するこの病態を理解しているかどうかで、アセスメントの精度が大きく変わってきます。


目次

サクッと復習!疾患の概要

DICは、基礎疾患に伴う組織因子の血中への放出や血管内皮障害を契機として、全身の細小血管内に微小血栓が多発的に形成される病態です。この過程で凝固因子と血小板が消費性に減少し、同時に線溶系が活性化(二次線溶)することで、血栓傾向と出血傾向が同時に出現するという特徴があります。

主な原因疾患には、敗血症、急性白血病(特に急性前骨髄球性白血病:APL)、固形がん、羊水塞栓症などの産科的合併症、大動脈瘤、重症外傷などが挙げられます。

症状としては、皮下出血斑、消化管出血、血尿などの出血症状と、微小血栓による臓器障害(急性腎障害、意識障害、呼吸不全)が同時に、あるいは経過の中で入れ替わるように出現します。

診断には日本血栓止血学会のDIC診断基準や、急性期DIC診断基準が用いられ、血小板数、フィブリノゲン、FDP(フィブリン分解産物)、D-ダイマー、プロトロンビン時間(PT)などの検査値を組み合わせて評価します。

治療は基礎疾患の治療が最優先であり、それと並行して抗凝固療法(ヘパリン、トロンボモジュリン製剤など)、補充療法(新鮮凍結血漿、濃厚血小板、フィブリノゲン製剤など)が行われます。


観察ポイント&根拠

観察項目観察ポイント根拠・予測
皮膚の出血斑点状出血と紫斑の分布範囲を、四肢だけでなく背部・殿部などの圧迫を受けやすい部位も含めて確認し、範囲を経時的に比較する出血斑の拡大は血小板数減少と凝固因子消費の進行を反映しており、皮膚所見は血液検査の結果が出るより早く変化に気づける指標になる
穿刺部位・創部からの出血採血や静脈留置針穿刺後の止血時間を測定し、通常より止血に時間がかかっていないか確認する。ドレーン排液や創部ガーゼの血性の程度を前回と比較する止血時間の延長は凝固因子の消費性減少を示唆し、DICの進行を疑う具体的なサインとなる。排液の血性が強まっている場合は出血傾向が悪化している可能性がある
血小板数とフィブリノゲンの推移血小板数を前日・前々日のデータと比較し、急激な減少がないか確認する。フィブリノゲン値も同時に評価する血小板数の急激な減少は微小血栓形成による消費が進行していることを示唆し、フィブリノゲンの低下と組み合わせて評価することでDICの進行度をより正確に予測できる
FDP・D-ダイマーの推移FDPとD-ダイマーの値を、単発ではなく経時的な推移で評価するこれらの上昇は線溶系の活性化、つまり形成された血栓が分解されている過程を反映しており、値の上昇速度が速い場合はより急速な病態の進行を疑う視点を持つ
尿量と尿の性状時間尿量を測定し、減少傾向がないか確認する。血尿の有無も併せて確認する尿量減少は微小血栓による腎血流障害(急性腎障害)への進行を示唆し、血尿は出血傾向の悪化を示す。両方が同時に出現している場合は病態の複合的な進行を疑う
意識レベルの変化GCSやJCSを用いて経時的に評価し、普段と比べてわずかな傾眠や見当識の変化がないか確認する中枢神経系の微小血栓形成や、脳出血のリスクを反映している可能性があり、意識レベルの変化は他の臓器症状より先行して出現することがある
呼吸状態(SpO2、呼吸回数)SpO2の値だけでなく、酸素投与量の増加傾向、呼吸回数の増加を確認する肺の微小血管における血栓形成は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)への進行を示唆する。SpO2が保たれていても、酸素投与量が増えている場合は肺機能低下が進行している可能性がある

もし患者さんからこう言われたら、あなたはどうする?

これはDICのリスクが高い基礎疾患(敗血症や血液疾患など)を持つ患者さんが、出血傾向の初期変化として実際に「歯磨きしたら、いつもよりすごく血が出た」よく口にします。

言葉の裏のニード
「普段とは違う体の変化への戸惑い」という身体的な要因と、「何か重大なことが起きているのではという不安」という心理的な要因が隠れています。

ここで「歯磨きだから多少は出ますよ」と一般論だけで返してしまうと、DICの初期サインを見逃すことにつながりかねません。対応としては、

「教えてくださってよかったです。歯茎からの出血は、体の中の血を止める仕組みに何か変化が起きている可能性があるので、少し詳しく確認させてくださいね」

と、訴えを軽視せず、具体的な評価行動につなげる姿勢を言葉で示すと、患者さんは自分の訴えが正しく受け止められたという安心感を抱きやすいですよ。その上で、他の部位(皮膚、鼻粘膜、眼球結膜など)の出血傾向の有無を確認し、直近の血小板数・フィブリノゲンの値をカルテで確認してから、必要に応じてSBARで報告する準備を進める視点が重要です。


現場で差がつく看護のコツ

工夫・アイデア期待できる効果
採血後の止血は通常より圧迫時間を長めに確保し、圧迫解除後も再出血がないか一定時間観察する凝固因子減少による止血遅延を早期に把握でき、穿刺部位からの持続出血を防ぎやすくなる
皮膚の出血斑を観察する際は、同一部位を毎回同じ照明条件・体位で確認し、範囲をメモやシェーマに残すシフト間での変化を客観的に比較でき、「広がっている」という感覚的な判断ではなく根拠を持った申し送りができる
血小板減少がある患者さんの体位変換や清拭は、皮膚を擦るような動作を避け、優しく支えるように行う皮下出血斑の新規出現や既存の出血斑の悪化を防ぎ、皮膚への物理的負担を最小限にできる
口腔ケアの際は、硬い歯ブラシを避けてスポンジブラシや軟らかい歯ブラシを選択する歯肉からの出血を誘発しにくくなり、患者さんの不快感や不安の軽減にもつながる
家族への説明時は「血が止まりにくい」だけでなく「血栓もできやすい」という一見矛盾する状態を、具体的な体の部位の例を挙げて説明する家族が病態を正確に理解しやすくなり、皮膚の変化や出血に気づいた際に速やかにスタッフへ報告してもらいやすくなる

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人さんがよくやってしまうのが、「出血傾向がある」と聞いて、出血症状だけに注目してしまうことです。DICは出血傾向と血栓傾向が同時に進行する病態であり、出血症状ばかりに気を取られていると、尿量減少や意識レベルの変化といった血栓性の臓器障害のサインを見逃してしまうことがあります。

このことを知らないと、「出血がないから大丈夫」と判断してしまい、実は微小血栓による腎機能障害が進行していた……というケースに気づけないことがあります。出血症状の有無だけでなく、尿量や意識レベルなど血栓側の症状も併せて観察する視点を持つと、アセスメントの幅が広がってきます。

もう一つ、新人さんが混同しやすいのが、血小板数の低下だけを見て「出血のリスクが高い」と判断し、フィブリノゲンやFDP・D-ダイマーの値を見落としてしまうことです。血小板数単独では病態の全体像を捉えきれないため、複数の凝固関連データを組み合わせて評価する姿勢を持つと、報告の精度が上がってくると思います。

穿刺部位からの止血に普段より時間がかかったとき、「たまたま血管が細かったのかな」で終わらせてしまう新人さんも多いです。ですが、これがDICの初期サインである可能性を知っていると、些細な所見の変化から重大な病態の進行に気づけるようになり、報告のタイミングが早くなってきますよ。


参考資料
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次