スキンテアについて

スキンテア(皮膚裂傷)について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

病棟で、患者さんのおむつ交換や更衣介助をしている時に、「あれ?いつの間にか前腕から血が出ている!」「医療用テープを剥がしただけなのに、皮膚がペロンと剥がれてしまった…」と、血の気が引くような経験をしたことはありませんか?
それは、超高齢社会の臨床現場で今や褥瘡以上に警戒すべき皮膚障害、「スキンテア(皮膚裂傷)」です。

スキンテアは、加齢やステロイド薬の長期内服などによって極限まで菲薄化した皮膚に、摩擦や剪断力(ずれ力)が加わることで生じる真皮深層までの裂傷です。たかが擦り傷と侮るなかれ、疼痛によるQOLの著しい低下、難治性潰瘍への移行、蜂窩織炎などの二次感染を容易に引き起こします。さらに、「介助者の手技による損傷」と捉えられ、患者・家族との信頼関係の破綻に直結しかねない、非常にシビアな問題です。

今回は、単に「傷ができたから保護材を貼る」という対症療法を脱却し、予測的アセスメントと病態生理に基づいた「発生させない予防・初期ケア」を徹底解説します。


目次

【保存版】観察項目&根拠

観察項目観察ポイント根拠・予測
皮膚の「脆弱性」の事前評価(ドライスキン、紫斑、浮腫)全身清拭や更衣時に、特に前腕、下腿、手背の皮膚を観察する。指先で軽く触れ、皮膚が「サティン(半透明の薄い紙)」のように薄くなっていないか、真皮内出血(老人性紫斑)が多発していないか、圧痕性浮腫(ピッティング)がないかを評価する。【超高リスク患者の事前スクリーニング】
加齢により表皮・真皮の結合(表皮突起)が平坦化し、わずかな横ズレの力で表皮が容易に剥離します。さらにステロイド薬の内服は膠原繊維(コラーゲン)の合成を阻害し皮膚の菲薄化を極限まで進めます。紫斑がある部位や浮腫を伴う四肢は、少しの衣類の擦れだけでもスキンテアを起こす「要警戒ゾーン」です。
創面のSTAR分類によるカテゴリー評価スキンテアが発生した際、創部を生理食塩水で洗浄後、「めくれた皮膚(皮弁)が残っているか」「その皮弁で創面をすべて覆えるか(元に戻せるか)」を慎重に確認し、STAR分類(※下記解説)を用いて速やかにカテゴリー分類を行う。【創傷被覆材の選択と治癒予測】
皮弁が残存し、創面を1mm以内に元通りカバーできる状態(カテゴリー1a)であれば、皮弁を愛護的に戻して固定することで早期に上皮化します。一方で、皮弁が壊死している、または完全に欠損している場合(カテゴリー2や3)は、乾燥を避けて湿潤環境を保つ親水性コロイドやハイドロポリマー等の創傷被覆材を適切に選択しなければ、肉芽形成が遅延し難治性潰瘍化します。
外力(摩擦・剪断力)の発生源環境アセスメントベッド周辺を観察し、「サイドレールの金属部分が露出していないか」「車椅子のフットレストが裸足の皮膚に当たる位置にないか」「使用しているポジショニングピローのカバーがゴワゴワしていないか」を確認する。【機械的・物理的要因の排除による再発予防】
スキンテアの多くは、ベッドから車椅子への移乗時や体位変換時、あるいは患者自身が柵に四肢をぶつけることで発生します。リスク要因となる硬い構造物(サイドレール等)をあらかじめクッションで覆う、患者にアームカバーやレッグカバーを装着するなどの環境調整が、発生率をゼロに近づける唯一の方法です。
貼付されている医療用テープ・ドレッシング材の確認留置針固定部、持続ドレーン刺入部、創傷被覆材の周囲を観察し、「強力な粘着テープが直接皮膚に貼られていないか」「剥がす際に皮膚が一緒に引っ張られていないか」を評価する。【医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)およびテープ剥離刺激の低減】
高齢者の表皮真皮結合力は、医療用テープの粘着力よりも遥かに弱くなっています。何も考えずに強力なプラスチックテープや不織布テープを脆弱な皮膚に直貼りすると、次回剥離時に100%の確率で表皮が剥がれ(表皮剥離)、巨大なスキンテアへと発展します。事前にシリコン系粘着剤などの「低剥離刺激性テープ」への変更が必要です。

STAR分類(スキンテアの分類ツール)

カテゴリー 1a: 皮弁は生存しており、元通りに創面をカバーできる(1mm以内の隙間)。
カテゴリー 1b: 皮弁は生存しているが、創面を完全にはカバーできない(1mm以上の欠損)。
カテゴリー 2a: 皮弁は一部生存しているが、皮弁自体の色が蒼白・暗紫色で、創面を完全にはカバーできない。(皮弁の一部壊死疑い)
カテゴリー 2b: 皮弁の一部が壊死、または完全に消失している。
カテゴリー 3: 皮弁が完全に欠損している(創面がすべて露出している)。


現場で役立つ+αの看護ポイント

発生直後!動転して「皮弁をハサミで切り取る」のは絶対に禁止

スキンテアが発生した際、めくれてグチャグチャになった皮弁を見て、「邪魔だから」「死んでいるように見えるから」と滅菌ハサミでチョキチョキと切り取ってしまう新人看護師が後を絶ちません。これは最大の禁忌です。
どんなに縮んで汚く見えても、皮弁は「患者さん自身の天然の被覆材」です。生理食塩水で優しく洗浄しながら、湿らせた滅菌綿棒をローリングさせて皮弁を元の位置にそっと広げ直してください。これを行うだけで、上皮化のスピードが数週間単位で早まり、治癒後の瘢痕組織も非常に綺麗に仕上がります。

ドクターコールする前に!応急処置の「固定方向」を意識する

皮膚を元の位置に戻したら、保護のためのテープ(または被覆材)を貼りますが、この貼付・剥離方向には明確なルールがあります。

①貼る時
必ず「皮弁の根元(付着部)から、めくれた先端(フリーエッジ)に向けて」優しく撫でるように貼ります。逆方向に貼ると、貼る瞬間に皮弁が再度めくれ上がってしまいます。

②剥がす時(後日の処置時)
必ず「皮弁の先端(フリーエッジ)から、根元(付着部)に向けて」、皮膚に対して並行に180度寝かせながら、ゆっくりと剥がします。逆方向に剥がすと、せっかく生着しかけた皮弁を再び引きちぎることになります。
医療テープの上に、あらかじめ「剥離方向(アローマーク:矢印➔)」をマジックで大きく記載しておくと、勤務をまたぐ他スタッフへの安全な申し送りとなり、再剥離事故を完全に防ぐことができます。

「泡洗浄+ワセリン」で剥がさないスキンケアを習慣化する

脆弱な皮膚の洗浄時、固形石鹸をガーゼにつけてゴシゴシ擦る行為は、それ自体がスキンテアを誘発します。
弱酸性の泡ソープをたっぷりと皮膚に乗せ、手のひらの「面」を使って、皮膚を横にずらさないように押し洗い(圧迫洗浄)します。水分を拭き取る際も、タオルを押し当てて吸い取る「パラパラ拭き」を徹底します。
仕上げには、皮膚の摩擦抵抗を減らす(滑りを良くする)ために、白色ワセリンやヘパリン類似物質泡スプレーをたっぷりと塗布します。皮膚表面に潤滑性を持たせることで、衣類やシーツとの摩擦エネルギーを逃がし、物理的に裂けるのを防ぐことができます。


参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次