
こちらでは、コンパートメント症候群について詳しく解説しています。
コンパートメント症候群とは
外傷などの後に四肢で膜状組織に囲まれた区画(筋区画=コンパートメント)で組織が腫脹し、区画内圧が上昇して循環障害が生じること。
循環障害が生じることにより、疼痛を中心とした様々な症状が現れ、治療を行わない場合、神経・筋に不可逆性壊死を引き起こす。
外傷などを原因とする急性コンパートメント症候群と、激しい運動を原因とする慢性コンパートメント症候群がある。


原因・症状は?
コンパートメント症候群の原因
筋区画内圧の上昇をきたす組織の障害があればリスクとなり、例えば、外傷・長時間の圧迫・不適切な点滴などが挙げられる。
またコンパートメント症候群は、発症すると内圧の上昇と循環不全が相互に増悪しあう悪循環に陥る。
外傷:骨折、筋挫傷(肉離れ)、四肢の術後、血管損傷、熱傷、蛇咬傷 など
長時間の圧迫:手術やICU管理中の体位・四肢の固定、睡眠薬使用下の同じ体位での長時間睡眠、ギプスによる圧迫 など
不適切な点滴:広範囲な点滴漏れ、カテーテル抜去部からの出血 など
コンパートメント症候群の症状
5P徴候〔Pain(疼痛)、Paresthesia(感覚異常)、Paralysis(麻痺)、PulseLessness(拍動消失)、Pallor(蒼白)〕がみられる。
5Pの他に、Passive stretching pain(他動的伸展による疼痛増強)が見られることも特徴であるため、検査にも用いられる。
5Pが揃っているときには、すでに重篤で手遅れとなっていることが多い。
コンパートメント症候群が生じていても、末梢の動脈は蝕知できることがある。早期の拍動消失や蒼白は、むしろ血管損傷を疑う。
安静時であっても鎮痛薬が効かないような激しい疼痛を訴えれば、まずコンパートメント症候群を疑う。
意識障害や鎮静化の患者では、痛みの訴えがなく、症状がわかりにくいので要注意。
短時間で不可逆性の阻血性拘縮(前腕:Volkmann拘縮、下腿:前脛骨区画症候群 が代表的)をきたし、運動機能障害や変形などの重大な後遺症を残す。
検査方法と治療方法
徒手検査:Passive stretch test
内圧上昇が疑われる区画の筋肉が、伸ばされる方向に他動的に動かされると激痛を生じる。
筋区画内圧の測定(医師施行)
動脈圧測定用の圧トランスデューサーの先端に18G針を取り付けて、動脈圧モニターで測定する。
緊急手術での減張切開
切開方法は、部位によって変わる。
減張切開後、shoe lace法(減張切開後、靴紐のように糸をかけておき、腫脹の軽快に合わせて切開部の皮膚を幅寄せする方法)後に、局所減圧閉鎖療法を併用することもある。
1~2週間後に腫脹が改善したのを待って、閉創または植皮を行う。
予後・合併症
治療が遅れると、筋壊死・拘縮・神経障害が生じ、重篤な機能障害が残る。場合によっては、廃用肢の切断を選択することもある。
小児の上肢外傷後に生じる前腕屈筋コンパートメント症候群によって阻血性壊死に至り、手指・手関節に生じた拘縮をVolkmann(フォルクマン)拘縮と呼ぶ。