ゆるく、ひといき
疾患

大腿骨近位端部骨折について

大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折って骨折部位が違う以外に何があるの?
詳しく比べてみると、色々違いがあるよ!
よくある骨折だから、しっかり違いを説明できるようにしていこう!

 

大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折の違いってなに?

共通部分

股関節の骨折
骨粗鬆症を背景とする脆弱性骨折
高齢女性に好発
股関節痛や起立不能がみられる

大腿骨頸部骨折

初めから人工骨頭置換術が選択されることがある
大腿骨頭壊死を起こすことがある

大腿骨転子部骨折

骨癒合がしやすく、骨接合が第一選択
骨折部で短縮変形が生じやすい
カットアウトによる再手術のリスクがある

なんで大腿骨頸部骨折は骨癒合がむずかしいの?

関節は関節包という袋で覆われており、大腿骨頸部骨折はこの関節包の内側で起きた骨折のことをいう。
骨膜は骨芽細胞などの骨を作る細胞でできた膜であり、骨膜がないと折れた骨はくっつきにくくなる。
関節包内には骨膜がないため、関節内で骨が折れると骨はくっつきにくい。=大腿骨頸部骨折は骨癒合しにくい

 

カットアウトってなに?

整復位喪失が進行していくと、やがて骨が金属に負けてしまい、金属が骨の外側に飛び出してしまう。
大腿骨近位部骨折に対して、術後の早期離床・早期荷重が最重要である。しかし、大腿骨転子部骨折では、骨折型が不安定な場合やうまく手術ができていない場合に早期荷重を行うと、カットアウトを生じしやすくなる。この場合には、荷重を早くさせたいができないというジレンマに陥ることがある。

 

治療方法は?

大腿骨頸部骨折

・転位が小さい場合の手術
ハンソンピン:ピンを2本入れ、ピンの先端からフックを出し回らないようにする
スクリュー(CCS):中空性のスクリューを3本入れる
プレート(SHS):細い中空スクリューを2~3本、あるいは太いスクリューを1本入れる。最大の特徴はプレートと連結してスクリューが固定される

・転位が大きい場合
人工骨頭置換術(BHA):人工材料で大腿骨頭と頸部を置換する

大腿骨転子部骨折

髄内釘(γネイル):短い髄内釘と太いスクリュー(ラグ・スクリュー)で固定する。固定力が高く、手術時間が短いため現在の主流
プレート(SHS):サイド・プレートと太いラグ・スクリューで固定する。治療成績は髄内釘と比べても遜色ないが、最近は使われなくなってきている

予後は?

歩行能力・移動能力の低下が大問題!
・手術をしても、受傷前と同じくらい歩けるようになる患者は半分くらいで、殆どは受傷前より2ランクほど歩行能力が低下する。
・最終的な歩行能力は、受傷前の歩行能力・認知症・年齢の3つが影響してくる。

寝たきり→全身合併症
・脆弱性骨折を起こす高齢者は、もとから体が弱っている人が多く、骨折を契機に寝たきりになってしまうこともある
・寝たきりになると、肺炎・尿路感染・褥瘡などの合併症が問題となる。

入院中の死亡原因No.1は誤嚥性肺炎

 

 

 

参考文献
患者がみえる新しい「病気の教科書」 整形外科
病気がみえる11 運動器・整形外科