帯状疱疹について

帯状疱疹について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

清拭や入浴介助の際、患者さんの背中や胸に「ピリピリする赤いブツブツ」を見つけること、病棟にいると結構な頻度で遭遇しますよね。または、外来で「虫に刺されたのか、すごく痛くて…」と来院される方も多い疾患です。
帯状疱疹は、皮膚のトラブルというだけでなく「神経の炎症」です。初期の発見と疼痛コントロールが遅れると、患者さんは何ヶ月も、時には何年も激しい痛みに苦しむことになります。今回は、あの特徴的な皮疹を見逃さず、患者さんの将来のQOLを守るための観察眼とケアのポイントを紹介していきます。


目次

サクッと復習!疾患の概要

帯状疱疹(Herpes Zoster)は、過去に感染した水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって発症します。

  • 病態と原因
    水ぼうそうが治癒した後も、ウイルスは知覚神経節に潜伏感染しています。加齢、疲労、ストレス、悪性腫瘍、免疫抑制薬の使用などにより細胞性免疫が低下すると、ウイルスが再び増殖し、神経線維に沿って皮膚へと移動し発症します。
  • 症状
    初発症状として、特定の神経支配領域(デルマトーム)に一致した神経痛様の疼痛(ピリピリ、チクチク、ズキズキ)が数日〜1週間先行することが多いです。その後、同部位に片側性の浮腫性紅斑が現れ、小水疱、膿疱、びらん、痂皮(かさぶた)へと経過をたどります。
  • 治療
    抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、アメナメビルなど)の全身投与が基本です。同時に、急性期痛や帯状疱疹後神経痛(PHN)への移行を防ぐため、アセトアミノフェンやNSAIDs、プレガバリンなどの鎮痛薬を用いた積極的なペインコントロールを行います。

観察ポイント&根拠

観察項目観察ポイント根拠・予測
皮疹の分布と正中線の確認患者さんの衣服をめくり、皮疹が「身体の片側だけ」に留まり、「正中線(体の真ん中のライン)を越えていないか」を視診する。デルマトーム(皮膚分節)の図を思い浮かべながら分布を追う。【帯状疱疹の鑑別と汎発性の評価】
ウイルスは特定の知覚神経に沿って移動するため、皮疹は片側性の帯状に配列します。もし正中線を越えて全身に水疱が散在し始めている場合は「汎発性帯状疱疹」を疑い、重篤な免疫不全状態や空気感染リスクへの切り替え(個室隔離など)を迅速に判断する必要があります。
顔面・頭部の皮疹出現部位皮疹が顔面、特に前額部から鼻背(三叉神経第1枝領域)や、耳介周囲(顔面神経領域)に出現していないかを詳細に観察する。【重篤な合併症の早期発見】
三叉神経第1枝領域の病変は、角膜炎やぶどう膜炎など失明に繋がる眼合併症のリスクが高いです。耳介周囲の場合は、Ramsay Hunt症候群(顔面神経麻痺、難聴、めまい)を合併しやすいため、眼科や耳鼻科へのコンサルトを医師に促す根拠となります。
疼痛の性質と強さの推移「痛いですか?」と聞くのではなく、「NRS(0〜10の数字)で今の痛みはいくつですか?」「服が触れるだけでも痛みますか(アロディニアの有無)?」と具体的に問診し、カルテに残す。【PHN(帯状疱疹後神経痛)移行リスクの予測】
急性期に強烈な痛みがある場合や、アロディニア(通常なら痛くない刺激を痛みと感じる状態)が出現している場合は、PHNに移行するリスクが高いとされています。鎮痛薬の効果を評価し、不十分なら医師へ薬の追加や変更を上申するための客観的データとなります。

患者さんからの訴え、どう行動する?

「服がすれるだけでも、ヒリヒリして夜も眠れないんです…」と患者さんが言ってきたら、あなたはどう行動しますか?
帯状疱疹の痛みは、経験した人にしかわからないほど苛烈なことがあります。これを「ただの皮膚の痛み」と軽く見てはいけません。

言葉の裏にある病態とニード
これはアロディニア(異痛症)と呼ばれる、神経の過敏状態を示すサインです。患者さんは「痛くて眠れない=体力が回復しない=さらに免疫力が下がる」という悪循環に陥り、強い不安と疲労を抱えています。

対応アクションと会話例

  • 「服が触れるだけでも痛むのですね、それは本当にお辛いですよね。この痛みは神経の炎症から来るもので、我慢してしまうと後まで痛みが残りやすいと言われているんです。今の痛みを10段階でいうとどれくらいですか?医師に相談して、夜しっかり眠れるようにお薬を調整してもらいましょう。それから、服が直接当たらないように、少し工夫をしてみますね」
    • 患者さんの痛みを否定せず受容した上で、痛みを我慢しないことの重要性を伝えます。すぐに医師へSBARで報告し、鎮痛薬(神経障害性疼痛に対する薬剤など)の調整を依頼します。

現場で差がつく看護のコツ

工夫・コツ・アイデア具体的な手技・環境調整期待される効果・メリット
軟膏は「塗る」のではなく「のせて貼布する」処方された軟膏(抗ウイルス薬や潰瘍治療薬)を、直接患部に擦り込むのではなく、リント布やガーゼに厚めに伸ばし、それを患部にそっと当ててテープで固定する。摩擦による水疱の破綻や強い疼痛を防ぎます。また、衣服と患部が直接擦れるのを防ぐクッションの役割も果たし、アロディニアの軽減にも繋がります。
患部の「温罨法」と冷えの防止急性期の炎症だからと冷やすのではなく、室温を適切に保ち、電気毛布や温かいタオルで患部周囲を保温する(※医師の許可のもと)神経痛は寒冷刺激で血流が低下すると悪化しやすいため、基本的には「温める」方が痛みが和らぎます。(ただし、化膿しているなど炎症が強すぎる場合は医師に相談してください)。
担当看護師の割り当て配慮(接触予防策)水疱が結痂するまでの間は、標準予防策に加え接触予防策を実施する。さらに、妊娠中のスタッフや、水痘未罹患のスタッフを部屋持ちから外すようリーダーに調整を依頼する。水疱内容物にはウイルスが含まれており、水痘に対する免疫がない人に感染すると「水痘(水ぼうそう)」として発症します。患者さんだけでなく、スタッフや胎児を守るための必須のアクションです。

新人さんが陥りやすいミスへの対策

患者さんに「チクチク痛い」と言われても、「昨日から鎮痛薬(ロキソプロフェンなど)を飲んでいるから大丈夫だろう」と自己判断していませんか?
帯状疱疹の痛みはNSAIDsだけでは抑えきれない神経障害性疼痛が混ざっています。新人さんが、「鎮痛薬を飲んでいるのに痛いなんて、患者さんが神経質になっているだけでは?」と勘違いして痛みの訴えをスルーしてしまうと、数ヶ月後にPHNで苦しむことになってしまいます。


「痛みをゼロにするのは難しくても、夜眠れるレベルまで下げるのが私たちの仕事」といった視点を持つと、アセスメントが深まり、医師への報告のタイミングも掴みやすくなりますよ。水疱が全部かさぶたになるまでは、手袋とエプロンでの感染対策も忘れずにしてください。


参考資料

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