血液培養の手順について

血液培養について|検査の手順から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

発熱、悪寒戦慄、血圧低下、qSOFAの該当、カテーテル挿入部の発赤。こうした場面で、抗菌薬を開始する前に必ず求められるのが血液培養です。敗血症が疑われる患者さんでは、抗菌薬投与の1時間以内開始が目標とされており、培養採取はその直前に済ませる必要があります。採取に時間がかかれば抗菌薬の開始が遅れ、予後に直結しかねません。

一方で、血液培養は「採れば良い」検査ではありません。皮膚常在菌が混入するコンタミネーションが起こると、CNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)などが陽性となり、真の菌血症か汚染かの判断が難しくなります。その結果、不要なバンコマイシン投与、入院期間の延長、追加検査が生じます。つまり、無菌操作の精度が、そのまま診断の精度と患者さんの利益に直結する手技です。

【重要事項】
※本記事は一般的な手順・根拠を解説したものです。実施の際は、必ず所属施設の院内マニュアルや医師の指示を優先してください。(消毒薬の種類・待機時間、ボトルの種類、採取量は施設・製品により異なります)


目次

【完全ガイド】手順と根拠

前提:採取の基本ルール

  • 2セット以上(異なる部位から)採取する(1セット=好気ボトル+嫌気ボトル)
  • 1ボトルあたり8〜10 mL(成人。製品の規定量を確認)
  • 抗菌薬投与前に採取(すでに投与中なら、次回投与直前の血中濃度最低値の時点で採取)
  • カテーテル由来血流感染(CRBSI)疑いでは、カテーテル採血と末梢静脈採血を同時に採取(差分陽性時間の評価のため)

手順・根拠・ポイント

手順根拠・予測ここがポイント!
【1. 指示・適応の確認】
医師の指示内容(セット数、部位、採取時期)、患者氏名、抗菌薬の投与状況を確認する。抗菌薬がすでに投与されていれば、最終投与時刻を記録する
抗菌薬の影響で培養陽性率が低下する。血中濃度が最低となる次回投与直前に採取すると、偽陰性を減らせる「抗菌薬が始まる前に採る」が原則。抗菌薬の準備ができてから採血を始めるのでは遅いので、発熱の報告を受けた時点で採取の準備を同時に進める
【2. 物品準備】
血液培養ボトル(好気・嫌気)×セット数、採血針(翼状針またはホルダー用針)、ホルダー、消毒用アルコール綿、消毒薬(例:クロルヘキシジン・アルコール製剤、またはポビドンヨード)、滅菌手袋、駆血帯、止血用テープ、シャープスボックスを準備する。ボトルの有効期限と破損・変色・混濁を確認する
ボトルの培地に混濁・変色があると、製造時の汚染や劣化を示す可能性がある。有効期限が切れた培地では菌の発育が不十分になることがあるボトルは必ず室温に戻して使用する(冷蔵保管の施設は注意)。準備の段階で2セット分を揃えておくと、焦らず進められる
【3. 手指衛生・個人防護具】
手指衛生(擦式アルコール、または手洗い)を実施する。滅菌手袋を着用する(施設によっては清潔手袋可)
皮膚常在菌の混入を防ぐ。採血部位の再触診が必要な場合、未滅菌の手で触れると汚染につながる滅菌手袋を着用したら、静脈の触診と穿刺は必ず手袋のまま行う。触診で一度汚染したら、再消毒が必要
【4. 穿刺部位の選択】
末梢静脈(肘窩の正中皮静脈、橈側皮静脈など)を選ぶ。駆血帯を巻いて血管を触診・確認し、穿刺部位を決定する。原則として、静脈ルートが入っている腕や、点滴をしている側からの採取は避ける。2セット目は別の部位(反対側の腕など)にする
点滴ルートがある側の採血は輸液・薬剤の混入で結果が不正確になる。別部位にすることで、皮膚常在菌が混入した場合にも、1セットのみ陽性となり、真の菌血症との区別がしやすくなる穿刺部位を決める作業は消毒前に済ませる。消毒後に再触診は禁止。血管が見えにくい患者さんでは、消毒前に十分に確認しておく。駆血は1分以内にとどめる
【5. 駆血帯を外し、皮膚消毒】
いったん駆血帯を外す。穿刺予定部位を中心に直径5〜10cm程度を、消毒薬で消毒する。
アルコール綿:円を描くように、中心から外側へ、30秒以上こする(摩擦しながら消毒)
クロルヘキシジン・アルコール:製品の指示に従い、30秒間こすり洗い(往復)
ポビドンヨード:2分以上乾燥させる
皮膚常在菌は、角質層や毛包に潜んでおり、物理的な摩擦が消毒の効果を高める。クロルヘキシジン・アルコールは速効性と持続性に優れる。ポビドンヨードは乾燥する過程で殺菌効果を発揮するため、乾燥を待つことが必須「消毒して終わり」ではなく「乾燥するまで待つ」。消毒液が濡れたまま穿刺すると、消毒効果が不十分なうえ、刺入時に痛みを強く感じやすい(アルコールが皮下に入る)。ポビドンヨードはアレルギー(ヨード過敏)と、新生児・甲状腺疾患への使用に注意
【6. ボトルの消毒】
ボトルのゴム栓部分を、アルコール綿で消毒し、乾燥させる。ボトルは平らな場所に立てて置く
ボトルのキャップは滅菌されていないことがある。ゴム栓の汚染が培養のコンタミ原因になる手袋で触れたボトルは清潔ではないことを意識する。ボトルのゴム栓消毒を省略している施設もあるため、施設の運用を確認する
【7. 穿刺・採血】
駆血帯を再び巻く(消毒後)。皮膚を末梢側に軽く引いて伸展し、針の刃面(ベベル)を上に向けて、15〜30度の角度で穿刺する。血液の逆流を確認したら、角度を寝かせて数mm進める。採血ホルダー使用の場合は、嫌気ボトルより先に好気ボトルに接続する(翼状針の場合はエアが入っているため、先に好気ボトル)。ボトルに8〜10mL採取する
皮膚を伸展することで、針の通過抵抗が減り、痛みが軽減する。ベベルアップは静脈を貫通しにくい。翼状針のチューブ内には空気があり、嫌気ボトルに空気が入ると嫌気性菌の発育が阻害されるため、先に好気ボトルに接続する最初に採った血液ほどコンタミリスクが高い(皮膚片が針に入りやすい)ため、一部の施設では「最初の血液を別に採取して捨てる」手法(初流血液除去)を採用。採血量はボトルの目盛りを確認しながら調整(不足すると陽性率が低下する)。1セットあたりの採血量が多いほど、感度が上がる
【8. ボトルの混和・針の抜去】
採取後、ボトルを静かに転倒混和(数回)。駆血帯を外し、針を抜去し、止血(圧迫は2〜5分)。抗凝固薬内服中は延長
血液凝固を防ぎ、培地と血液を均一に混和する。ボトル内での溶血・泡立ちは測定に影響する強く振ると溶血する。止血は揉まずに圧迫(皮下出血予防)。患者さんには「痛みはないですか、しびれはないですか」と声をかける
【9. 2セット目の採取】
別の部位で、同様に手順4〜8を繰り返す。1セット目と同時刻帯(30分以内)に採取する
持続性の菌血症は複数セットで陽性になるが、コンタミは1セットのみのことが多い。2セット以上採取することで、感度(約90%)が向上患者さんが悪寒戦慄を訴えている時間帯は陽性率が高い。ただし、抗菌薬を遅らせてまで悪寒を待つ必要はない
【10. ラベル貼付・提出】
ボトルに患者氏名・ID・採取日時・採取部位・採取者名・セット番号を記載し、貼付する。バーコードを隠さないように。速やかに検査室へ搬送する。冷蔵禁止(常温)
取り違え防止。冷蔵すると菌の増殖が抑制され、陽性率が低下する。提出が遅れると菌が死滅または増殖する(保管は常温、2時間以内の提出が理想)提出が遅れる場合は、施設のルール(室温保管)に従う。採取部位(右肘、左手背など)を記録すると、結果解釈の助けになる
【11. 後片付け・記録】
針をリキャップせずシャープスボックスに廃棄する。手袋を外し、手指衛生を行う。記録に採取日時、部位、セット数、患者さんの状態(悪寒の有無、体温)を記載する
針刺し事故防止のためリキャップ禁止(標準予防策)。記録は、結果解釈(陽性時に医師が判断)の材料となる採取時の体温、悪寒の有無、抗菌薬の投与状況を残しておくと、医師の判断に有用

よくあるトラブル・疑問(Q&A)

ぴよナース

血管が細く、血液が8〜10mL採れない場合はどうすればいいですか?

あずかん

採血量が不足すると陽性率が低下しますが、採れた量で対応する場面も多いです。以下の優先順位で考えます。

・好気ボトルを優先して、先に採取する(多くの菌が好気ボトルで検出されやすい)
・残りの血液を嫌気ボトルに採取する
・採血量を記録して医師に報告し、必要時は再採取を相談する
・小児や新生児では、体重に応じた採血量の目安があるため、施設プロトコルを確認する

 血液を得るために針を刺し直すのは、そのたびに再消毒が必要です。針先を動かして血管を探る操作(ぐりぐり動かす)は、痛みと汚染のリスクを高めます。

ぴよナース

消毒後に血管が分からなくなり、触診してしまいました。どうすればいいですか?

あずかん

再消毒してください。 消毒後に素手や汚染した手袋で触診すると、皮膚常在菌が再付着します。以下の手順を取ります。

①駆血帯を外す
②触診した範囲を再度消毒し、乾燥を待つ
③滅菌手袋を着用している場合は、そのまま触診可能(ただし、手袋が他の物に触れていないこと)

消毒前に、血管の位置を指先でマーキング(爪で軽く跡をつける、ペンで点を打つなど)しておくと、消毒後に触診せずに済みます。

【NG行動まとめ】
❌ 消毒薬が乾燥する前に穿刺する
❌ 消毒後に未滅菌の指で血管を触る
❌ 点滴ルートがある腕から採取する
❌ 血液培養ボトルを冷蔵庫で保管する
❌ 1セットのみで提出する(CRBSI疑いなど特定の状況を除く)
❌ 使用済み針のリキャップ
❌ 抗菌薬を投与してから採取する(敗血症で投与を遅らせるべきではないが、可能な限り直前に)


参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次