意識評価について

意識評価について|JCSとGCSの概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

受け持ち患者さんのラウンド時、「なんだかいつもより返事が遅いな」「寝ているだけにしては、呼吸のテンポがおかしくない?」と直感的に異変を感じたことはありませんか?
意識障害は、脳卒中や頭部外傷といった脳自体の病変だけでなく、重篤な呼吸不全、ショック、低血糖、敗血症など、体の中で起きている「生命の危機(急性増悪)」を知らせる最も鋭敏なサインです。

臨床現場で日常的に使われる意識評価スケールが「JCS(ジャパン・コーマ・スケール)」と「GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)」です。これらは単なるカルテ記載用の数字や記号ではありません。スケールを正しく評価し、その微妙な変化から「今、脳灌流圧(CPP)が下がっているのでは?」「脳幹網様体が圧迫されつつあるのでは?」と臨床推論を展開する力こそが、急変を未然に防ぐ鍵となります。

今回は、教科書的なマニュアルを超えて、夜勤帯や緊急時に迷わず動き、的確なアセスメント情報を持ってドクターコールやSBAR報告に繋げるための超実践ガイドを紹介します。


目次

観察項目&根拠

観察項目観察ポイント根拠・予測
JCS・GCSの低下幅と「移行スピード」の評価呼びかけや痛み刺激に対する開眼・運動反応を確認し、数時間前の自部署の記録や前医・救急隊からの申し送り時のスコアと比較する。特にGCSの「M(運動反応:Best Motor Response)」が「命令に従う(M6)」から「屈曲逃避(M4)」や「異常伸展(M2)」へスライドしていないかを評価する。【急性頭蓋内圧(ICP)亢進・脳ヘルニアの兆候】
意識レベルの急速な悪化は、脳出血の拡大、脳浮腫の進行、水頭症の発症などによる脳圧(ICP)の急激な上昇を意味します。特にM(運動反応)の低下は、大脳皮質から脳幹(中脳〜橋レベル)へと圧迫が下行性に及んでいる(脳ヘルニア切迫)決定的な証拠です。
呼吸パターン、呼吸回数、およびSpO2のトリプルチェック単にSpO2モニターの数値を見るだけでなく、患者さんの胸壁の動きを目視し、1分間の呼吸回数、下顎呼吸などの努力様呼吸の有無、Cheyne-Stokes(チェーン・ストークス)呼吸などの異常呼吸パターンがないかを直接確認する。【呼吸中枢(脳幹)障害の部位特定と気道閉塞の回避】
意識障害の進行(JCS III桁など)に伴い、舌根沈下や喉頭反射の消失が起こり、容易に上気道閉塞や誤嚥を引き起こします。また、間脳レベルの障害ではチェーン・ストークス呼吸、中脳〜橋レベルでは中枢性過換気、延髄レベルでは失調性呼吸(あえぎ呼吸)を呈するため、呼吸の「深さとリズム」は脳障害の深達度評価に直結します。
瞳孔径、左右対称性(瞳孔不同)、および対光反射ペンライトを用いて、「左右の瞳孔径(mm)が同じか(瞳孔不同:Anisocoriaの有無)」「光をあてた際の収縮スピード(迅速・緩慢・消失)」を両目同時に確認する。【動眼神経圧迫(テント切痕ヘルニア)の指標】
瞳孔径と対光反射は中脳・動眼神経の機能を反映しています。片側の瞳孔が散大し対光反射が消失する(片側散瞳)現象は、同側の動眼神経が脳ヘルニア(鉤ヘルニアなど)によって物理的に圧迫されているサインです。不可逆的な脳損傷を防ぐ緊急開頭減圧術等のインジケーターとなるため、発見後直ちにコールすべき極めて緊急性の高い所見です。
クッシング現象の追跡バイタルサインのトレンドグラフを遡り、「収縮期血圧の上昇」「脈圧(収縮期と拡張期の差)の開大」「徐脈(脈拍50回/分以下)」の3条件が徐々に、または急激に揃ってきていないか確認する。【代償限界を超えた頭蓋内圧亢進の検出】
脳幹への血流を維持しようとする生体の防御反応です。高まった頭蓋内圧に抗って脳血流を送るために血圧(収縮期圧)を極限まで引き上げ、その代償として圧受容体が反応して徐脈が引き起こされます。このサインが出現している時期は、脳幹が完全に圧迫されて心停止に至る一歩手前の最終警告段階です。
血糖値の即時測定(POCT)意識障害や不穏、異常言動を認めた際、頭部CT室に搬送する前、または他検査を開始する前に、ベッドサイドで穿刺吸光式血糖測定器を用いて即座に血糖値を測定する。【「脳血管障害」と酷似する低血糖症の除外】
血糖値が50mg/dL以下に低下すると、中枢神経の唯一のエネルギー源が枯渇し、意識障害や共同偏視、片麻痺など、脳梗塞と全く同一の神経症状を引き起こします。迅速にグルコースを静注すれば速やかに回復しますが、見逃すと恒久的な脳損傷を残すため、意識障害における最優先除外項目です。

JCS・GCS 評価基準詳細表

JCS(Japan Comma Scale:3-3-9度分類法)

JCSは日本で広く普及しているスケールです。「覚醒度」を基準に、桁数が増えるほど意識障害が重いと判断します。

段階(桁数)点数具体的な患者の状態
I桁
(刺激しないでも覚醒している)
1だいたい意識ははっきりしているが、自分の名前や生年月日、今いる場所(見当識)が言えない。
2自分の名前や生年月日は言えるが、今いる場所や時間がわからない(見当識障害がある)。
3自分の名前や生年月日、見当識のすべてが言えない。または、なんとなく活気がない。
II桁
(刺激すると覚醒する:刺激を止めると再び眠り込む)
10普通に呼びかける、あるいは普通の声で話しかけることで目をあける(開眼する)。
20大きな声で呼びかける、または強く体を揺さぶることで目をあける。
30痛み刺激(強めの強圧)を加えながら呼びかけることで、かろうじて目をあける。
III桁
(刺激しても覚醒しない)
100痛み刺激(胸骨圧迫や爪床圧迫)に対して、手を払いのけるなどの払避動作(身振りの反応)をする。
200痛み刺激に対して、顔をしかめたり、手足を少し動かす(逃避的な動作)のみ。
300痛み刺激に対して、まったく反応を示さない。

※不穏(R)、失禁(I)、失語・失認・失行(A)などの随伴症状がある場合は、JCS 20-Rなどのように表記します。


GCS(Glasgow Comma Scale)

GCSは国際的に広く用いられるスケールで、E(開眼)、V(言語)、M(運動)の3要素をそれぞれ評価し、その合計点(最悪3点〜満点15点)で表記します。

評価領域(スコア)点数反応の段階と評価基準(具体的な動き)
E:Eye Opening
(開眼反応)
4刺激しなくても自発的に開眼している。
3呼びかけや音声刺激によって開眼する。
2呼びかけには応じず、痛み刺激(指への圧迫など)によって開眼する。
1どのような刺激を加えても開眼しない。
V:Verbal Response
(言語反応)
5見当識が保たれており、時間・場所・名前を正しく答えられる。
4会話は成立するが、混乱しており見当識が失われている。
3単語(名詞など)は発するが、文章としての意味のある会話にならない。
2 言葉になっていないうめき声(理解不能な発声)のみ。
1まったく発声がない。
M:Best Motor Response
(運動反応)
6「手を握ってください」「手を挙げてください」などの指示に従って正しく動かせる。
5痛み刺激(眼窩上切痕や僧帽筋つまみ)に対して、刺激された部位に手を伸ばして払い除けようとする。
4痛み刺激に対して、手足を引っ込めるような通常の屈曲逃避運動を見せる。
3痛み刺激に対し、上肢を内転・屈曲させ、手を握りしめる(除皮質硬直様反応)。
2痛み刺激に対し、上肢を内旋・回内させ、突っ張るように伸展する(除脳硬直様反応)。
1痛み刺激に対して、手足にまったく何の動き(脱力)も見られない。

現場で役立つ+αの看護ポイント

1. JCS「II-30」と「III-100」の境界線を絶対に見誤らない

臨床で最も多いスコアリングのブレが、この「II-30」と「III-100」の混同です。
アセスメントの鉄則は、「一瞬でも目が開いたか(開眼したか)」です。
痛み刺激を加えながら大きな声で呼びかけたとき、顔をしかめて手を強く振り払ったとしても、目が一度も開かなければ「III-100」です。逆に、ほんの一瞬でも薄目をあけたのであれば、どれほど反応が鈍くても「II-30」になります。
ここを曖昧に申し送ると、「覚醒できている(II桁)」のか「覚醒できない(III桁)」のかという、脳幹網様体賦活系の機能変化を見落とすため、厳密に区別するようチームで統一してください。

2. GCSにおける「痛み刺激」の正しい当て方

GCSの「M(運動反応)」を評価する際、患者さんの指の爪をペンなどで強く圧迫する(爪床圧迫)方法がよく取られますが、片麻痺や末梢神経障害がある場合、局所の反応だけで脳幹レベルの運動中枢を正しく評価できません。
プロが実践する中枢への痛み刺激は、「眼窩上切痕(眉毛の内側の骨のくぼみ)を親指の腹で強く圧迫する」、あるいは「僧帽筋(首から肩にかけての筋肉)を根元から強くつまみ上げる」方法です。これにより、局所の障害に惑わされず、脳幹レベルでの「5点(定位)」「4点(逃避)」を正確に識別できます。


参考資料

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