リファンピシン尿について

リファンピシン尿について|症状の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

呼吸器内科や感染症病棟、あるいは結核病棟などで勤務していると、「患者さんの尿が真っ赤(あるいはオレンジ色)です!血尿でしょうか!」と、新人ナースが血相を変えて報告に来る場面に遭遇することがあります。

カルテを確認すると、抗結核薬であるリファンピシン(RFP)が処方されている――。このとき、ベテランナースであれば「あ、リファンピシンの排泄尿ね」とピンときますが、ここで思考停止してはいけません。なぜなら、「リファンピシンを内服しているから赤いのは当たり前」と決めつけてしまうと、その影に隠れた「本物の血尿」や、重篤な副作用による「血便」を見落としてしまう危険があるからです。

今回は、薬剤性の着色尿と病的異常(血尿・血便)を見分けるアセスメント視点と、ベッドサイドでの実践的な対応のコツを紹介します。


目次

サクッと復習!疾患・薬剤の概要

まずは、リファンピシンの特徴と、鑑別すべき病的出血(血尿・血便)の病態を整理しましょう。

リファンピシン(RFP)による着色尿

リファンピシンは、結核や非結核性抗酸菌症、重症感染症(レジオネラ等)に用いられる強力なアンサマイシン系抗生物質です。薬物自体が「赤橙色」の結晶であるため、内服後に代謝・排泄される過程で、尿、汗、涙、唾液、便などの分泌液が赤橙色から橙色に変化します。
内服開始後、早ければ数時間〜翌日には出現します。これは無害な「着色」であり、生体への悪影響はありません。

鑑別すべき病的異常(血尿・血便・偽膜性大腸炎)

血尿: 尿路結石、尿路感染症、尿路上皮がんなどによる出血。

血便: リファンピシンの重篤な副作用(頻度不明)である「偽膜性大腸炎」や過敏症症候群に伴う消化管出血。血性下痢や粘血便、重篤な腹痛を伴います。

急性腎障害(AKI): リファンピシンの副作用である間質性腎炎などにより急激な腎機能低下(尿量低下、血清クレアチニン値の上昇)を引き起こし、本物の血尿(腎性血尿)を伴うことがあります。


観察ポイント&根拠

観察項目観察のポイント根拠・予測
尿試験紙による尿潜血反応の確認赤色尿を認めた際、ただちに尿試験紙(または簡易尿検査)を用いて尿潜血反応(マイナス〜3+)を測定する。同時に、顕微鏡的血尿(沈渣での赤血球数)の有無を確認する。【潜血反応による「着色」と「血尿」の確実な鑑別】
リファンピシンによる着色尿は、尿中に薬物の色素が溶け出しているだけなので、尿潜血反応は「陰性」になります。もし赤色尿でありながら潜血反応が「陽性」、あるいは尿沈渣で赤血球が確認された場合は、尿路結石や尿路感染症、あるいは薬剤性間質性腎炎による本物の血尿とアセスメントできます。
便の性状、下痢・腹痛の有無排便があった際は、電子カルテのスケールを用いて便の性状(泥状便、水様便など)を記録し、肉眼的な血性(鮮血便、暗赤色便、粘血便)や腹部膨満、腹痛の有無を随時評価する。【偽膜性大腸炎(薬剤性腸炎)の早期発見】
リファンピシンを含む抗菌薬の投与により、腸内細菌叢が乱れてClostridioides difficileが異常増殖し、偽膜性大腸炎を発症することがあります。便が赤橙色に着色するだけでなく、水様下痢、腹痛、発熱、粘血便(血便)を伴う場合は、早急に薬剤を中止し、偽膜性大腸炎の治療(バンコマイシン内服など)を開始する必要があるため、性状の変化を見逃してはいけません。
涙液の着色(コンタクトレンズ装着状況の確認)入院時または処方開始時に、患者さんがコンタクトレンズ(特にソフトコンタクトレンズ)を使用しているか問診する。【コンタクトレンズの永久変色防止】
リファンピシンの色素は「涙」にも排泄されます。ソフトコンタクトレンズを装着したままにすると、レンズ自体が赤橙色に永久着色(変色)して使用不可能になります。処方開始前にメガネへの変更を促す必要があります。

もし患者さんがこう言ったら、あなたはどうする?

抗結核薬の治療を開始した翌日、あるいは外来で処方された患者さんがベッドサイドやナースステーションで非常に不安そうな表情で発する、「看護師さん、今トイレに行ったら、おしっこが真っ赤でびっくりした!どこかから出血しているの?」というな訴えです。

言葉の裏にある病態とニード
リファンピシン内服による「予測された無害な赤橙色尿」ですが、患者さん自身は事前に十分な説明を受けていない(あるいは失念している)場合、「体の中で大出血が起きた」「癌が進行したのではないか」と強い恐怖とパニックを感じています。必要なのは、即座の安心感の提供と、本当に病的出血がないかの迅速なスクリーニングです。

対応アクションと会話例

  • 対応アクション
    1. まず患者さんの目線の高さに腰を下ろし、驚かせたことを共感的に受け止めます。
    2. 尿の色の詳細(濁りがあるか、凝血塊(血の塊)が混じっているか)をアセスメント。
    3. 排尿時の痛み(排尿痛)や残尿感、腰背部痛、発熱がないかフィジカルアセスメントを行います。
    4. 簡易尿検査で尿潜血が「陰性」であることを確認し、患者さんに視覚的・科学的根拠を示して説明します。
  • 会話例
    「おしっこが真っ赤になっていたら、本当にびっくりしますよね。怖かったですね。お腹や背中の痛み、おしっこをする時の痛みはありませんか?(患者:『痛みは全くないです』)
    実は、昨日から飲み始めた結核(あるいは感染症)のお薬『リファンピシン』は、お薬そのものがオレンジ色をしています。それが体に吸収されて、おしっこや汗から出てくるときに赤く染まる特徴があるんです。これはお薬がしっかり体に届いて効いている証拠で、体に害はありません。念のため、おしっこを少しいただいて、出血の赤さではないことを検査(尿潜血試験)で確認しました。お薬の成分による赤さで間違いないので、どうぞ安心してくださいね。」

現場で差がつく看護のコツ

工夫・コツ・アイデア具体的な手技・環境調整期待される効果・メリット
「血尿の基本」である凝血塊の有無を確認赤色尿の詰まったウロバッグや尿器を観察する際、光を当ててバッグの底を軽く揺らし、フィブリンの塊や「凝血」が沈殿していないかを確認する。【器質的出血の迅速な見極め】
リファンピシンによる着色尿は、均一に透き通った「赤橙色(ワインレッド〜オレンジ)」を呈し、沈殿物は生じません。もしバッグの底にドロッとした暗赤色の塊(凝血塊)が沈殿している場合は、活性のある器質的出血(膀胱出血や腎出血など)と即座に判断できます。
血便との見分けには「便潜血・培養・CDトキシン」をセットで迅速に手配リファンピシン内服中の患者さんが「赤い下痢便」をし、腹痛や発熱を伴った場合、ただちに医師へ報告し、臨床検査室に「便潜血検査」「便培養」「CD(クロストリジウム・ディフィシル)トキシン検査」のオーダーを提案し、検体を採取する。【偽膜性大腸炎の診断遅延防止】
薬の色素による「便の着色」と、副作用による「偽膜性大腸炎(血便)」を臨床症状(下痢・腹痛)と糞便検査で速やかに確定診断します。治療方針(RFPの中止やフラジール・バンコマイシンの開始)を数時間単位で早く決定できます。

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人の頃って、内服薬のパンフレットに「おしっこが赤くなります」と書いてあると、赤い尿を見た瞬間に「あ、リファンピシンのやつね」とカルテに『RFPによる着色尿あり。様子見』とだけ書いて、アセスメントを終わらせてしまいがちですよね。

でも、ちょっと待って。その患者さん、本当に「ただの着色」ですか?
もし、その赤い尿の中に、目に見えない顕微鏡的血尿(尿潜血陽性)が混ざっていたら?
もし、赤い下痢便を「薬の色のせい」とスルーして、偽膜性大腸炎が重症化(毒素性巨大結腸症など)してしまったら?

プロの看護師は、「薬による着色がある時期だからこそ、本物の出血(血尿・血便)を見逃しやすい」というリスク管理の視点を持っています。
「赤いですね」と患者さんに言われたら、すかさず簡易尿検査スティックを1本持ってトイレに行く。このフットワークの軽さと、病態生理に基づいた「裏付けを取るアセスメント」こそが、新人さんと中堅ナースの決定的な差になります。

「薬のせいだから大丈夫」という思い込みを一度捨てて、必ず「根拠」を取りに行く姿勢を大切にしてください。


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