【制度】離床なきリハビリの減算

「寝たきり」はリハビリ対象外に?2026年制度改定が突きつける「行き場を失う高齢者」と回復期病棟のリアル

あずかん

最近、ナースステーションで後輩たちがため息をつきながらカルテを見つめる姿が増えました。その背景にあるのが、2026年6月から導入される「ベッド上リハビリの減算(評価の引き下げ)」という制度改定です。
一見すると「より活動的なリハビリを促すための制度」に見えますが、現在、回復期リハビリ病棟で働く私たちからすると、これは「ある一定の患者さんたちが、行き場を失うサイン」に他なりません。今回は、この改定が現場や地域の患者さんにどんな影響を及ぼすのか、現場のリアルな声をお届けします。

2026年6月から「ベッド上リハビリ」が減算へ。現場に走る激震

ニュースでも少しずつ取り上げられていますが、簡単に言うと「ベッドの上で行う関節の曲げ伸ばしなどのリハビリは、これまで通りには診療報酬(病院の収入)として評価しませんよ」という流れが加速しています。

本来、回復期リハビリ病棟は、脳卒中や骨折の後に「自宅に帰るために集中的にリハビリをする」ための専門病棟です。国は「寝たきりを防ぎ、早く起きて活動的にリハビリをしよう」という方針を強く打ち出しています。

回復期リハビリ病棟のジレンマ〜そこは「施設待ち」の場所ではないけれど〜

しかし、私たちが日々直面している現実は、国の理想通りにはいきません。

現在、私たちの病棟に入院してくる患者さんの中には、実際には「リハビリによる回復が難しい」方がたくさんいます。

入院前から寝たきりで、自力で動くのが難しい方
特別養護老人ホームなどの「施設」の空きが出るまでの「繋ぎ(待機)」として入院している方
高齢すぎて、入院という環境変化だけで体力(ADL:日常生活動作)がガクッと落ちてしまう方

こうした方々にも、拘縮(関節が固まること)を防ぐためにベッド上でのリハビリを行ってきました。しかし、これが評価されなくなるということは、病院側にとって「このような患者さんを受け入れにくくなる」ことを意味します。

「この人はどこへ帰るの?」行き場を失う患者と介護難民の危機

もし、こうした寝たきりや回復が難しい患者さんが回復期リハビリ病棟に入院できなくなったら、一体どうなるのでしょうか。

無理な「在宅退院」がもたらす家族の悲鳴
療養病棟(長期療養向けの病棟)や介護施設に入りたくても、今はどこも満床で何ヶ月も待つのが当たり前です。受け皿がないまま「病院にはいられないから」と無理に自宅へ退院となれば、待っているのは「在宅介護の崩壊」です。
老老介護や、仕事を休んで介護につきっきりになるご家族の姿を想像すると、「この人はどこへ帰ればいいのだろう」とベッドサイドで胸が締め付けられます。

マンパワーの限界と「命の選別」、そして病院倒産への懸念

そして、私たち看護師・リハビリの現場はすでに疲弊しきっています。
ただでさえマンパワーが足りない中で、「制度に合った患者さん(回復が見込める人)だけを選んで入院させる」というような、いわば「命や生活の選別」が始まってしまうのではないかと危惧しています。

逆に、地域のためにと無理に患者さんを受け入れ続ければ、減算による赤字が増大し、最悪の場合は病院そのものが倒産しかねません。地域から病院が消えれば、それこそ本当に患者さんの命綱が切れてしまいます。「これ以上、現場で汗を流す後輩たちに『もっと頑張れ』とは言えない」のが正直なところです。

地域医療の崩壊を防ぐために、私たちに今できること

この問題は、病院の中だけで解決できるものではありません。
ベッド上リハビリが減算されるからといって、患者さんのケアが不要になるわけではないのです。本当に必要なのは、急性期・回復期・療養といった病院の枠を超え、介護施設や在宅医療のスタッフがスムーズに連携できる「地域全体の太いパイプライン」を作り直すことです。

制度のしわ寄せが、弱い立場の患者さんや現場の医療従事者にばかり向かわないよう、私たち現場の人間も声を上げ続け、地域全体で支える仕組みを本気で考えていく時期に来ています。


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