変形性膝関節症ってなに?
膝関節において、関節軟骨の摩耗と変性で生じる疾患のこと。
中高年女性に多く、痛みのために歩行が困難となり、末期には手術の適応となってくる。
症状はなに?
・関節軟骨が摩耗・変性する疾患で膝関節内側に多く、進行すると高度な内反膝(O脚)になる。
・加齢により生じやすく、中高年女性に多い。(一次性)
・膝外傷や関節リウマチなどが原因で生じることもある。(二次性)
・膝関節痛:初期は動作開始時の痛みを訴えることが多い。
・膝可動域制限:正座やしゃがみ込み、階段歩行が困難になる。
・保存治療で痛みが改善せず、ADLが低下すれば手術を検討する。
一次性と二次性ってなに?
変形性膝関節症は、関節軟骨の退行性変化(細胞内の代謝障害による変化であり、細胞や組織に生じる変性・壊死・萎縮などのこと)を基盤として、徐々に関節の破壊・変形をきたす疾患のこと。
中高年(50歳以上)の肥満女性に好発し、明らかな原疾患がない一次性が大半を占める。
二次性には、外傷(半月板損傷、骨折、膝靱帯損傷など)、関節炎(関節リウマチ、化膿性関節炎など)、その他(反復性膝蓋骨脱臼、膝関節特発性骨壊死など)の原因があげられる。
治療方法は?
進行度にかかわらず、第一選択は保存療法となる。
関節症が進行し、日常生活に支障をきたす場合には手術療法を検討していく。
保存療法
・生活指導(膝関節への負荷を軽減する)
減量、負担のかかる動作(正座、階段の昇降など)の回避、杖の使用
・運動療法(膝関節周囲の膝伸展筋を鍛え、関節の安定性を高める)
筋力増強訓練(大腿四頭筋など)、有酸素運動、ストレッチング
・装具療法(関節の安定性を改善し、内側への負担を軽減する)
膝装具、足底板(外側楔状足底板)
・薬物療法(疼痛改善)
鎮痛薬(NSAIDs、アセトアミノフェン、弱オピオイド、デュロキセチンなど)の内服、関節内注射(ヒアルロン酸、ステロイド)
手術療法
関節温存術
①関節鏡視下デブリドマン
関節鏡視下にて、変性・断裂した半月板・関節内遊離体(関節ねずみ)などを除去する。
病初期や、機械的な症状(関節内遊離体が膝関節に挟まる、半月板が引っかかるなど)がある場合に適応される。
手術侵襲は比較的少ないが、病態を根本的に改善させることはできないため、進行例には適応外である。
②高位脛骨骨切り術(HTO)
内側型変形性膝関節症に対して、脛骨近位部の骨を切ることにより、変性が及んでいない外側関節面への荷重を分散させる。
膝の内反変性を矯正し、荷重軸を外側へ移動させることが出来る。
比較的若年(50~60歳代)で活動性が高い患者へ適応される。
変性が関節の一部(内側)にとどまっており、前・後十字靭帯が正常である必要がある。
人工膝関節置換術
①人工膝関節単顆置換術(UKA)
膝関節の内側または外側(どちらか一方のみ)を人工関節へ置換する。
高齢者(75歳以上)に適応される。
変形が関節の一部(内側または外側)にとどまり、関節可動性も良好で、前十字靭帯が温存されている必要がある。
②人工膝関節全置換術(TKA)
膝関節の内外側とも全て人工関節へ置換する。
高齢者(65歳以上)に適応される。
変性が関節全体にわたる(末期変性膝関節症)場合適応される。
予後は?
・下肢アライメント異常と歩容異常
変形性膝関節症が進行すると内反膝や外反膝となり、膝痛や膝可動域制限のため、立位でも膝を屈曲するようになる。
さらに進行すると上半身が前傾となり、バランスが崩れ転倒しやすくなる。
・関節軟骨は自己修復能力がない
加齢や外傷などで損傷した関節軟骨は、自己修正能力がほとんどないため、再生したり治癒したりすることはない。
サプリメントなどが流行しているが、軟骨が再生するという事実はない。
病気の進行とともに、軟骨の消失、軟骨下骨の骨硬化、さらに内・外側半月板や前十字靭帯、後十字靭帯も変性・断裂する。
・ADLの低下→QOLの低下
膝関節痛や変形が高度になると、長時間の歩行や外出、階段昇降が不可能となるため、家事などが困難となり、ADLが低下する。
高齢者ではQOLを考えながら保存治療を行い、手術時期の判定が必要。
保存治療は症状の緩和が目的であり、漫然とした保存治療は、外用剤による皮膚のかぶれ、抗炎症薬内服による消化器障害、関節内注射の繰り返しによる感染性関節炎のリスクが高まる。
参考文献
患者がみえる新しい「病気の教科書」 整形外科
病気がみえる11 運動器・整形外科