【病棟看護師向け】OTC類似薬の保険適用除外はいつから?現場で起こりうる変化と今からできる対策を徹底解説
あずかん「湿布やうがい薬が保険で出せなくなるかもしれない」というニュース、皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか?これは、市販薬と同じような効能を持つ「OTC類似薬」を公的医療保険の給付対象から外すという、政府の医療費適正化計画の一環として議論されているテーマです。
この変更は、私たち病棟看護師の業務にも大きな影響を与える可能性があります。患者さんへの説明、多職種との連携、そして日々のケア。具体的に何が変わり、私たちはどう備えればよいのでしょうか。
この記事では、OTC類似薬の保険適用除外に関する最新動向を整理し、病棟で起こりうる具体的な変化と、今から準備できる対策について分かりやすく解説します。
そもそも「OTC類似薬の保険適用除外」とは
まず、 OTC薬とOTC類似薬の違いについて確認していきましょう。
OTC薬
Over The Counterの略で、医師の処方箋なしに薬局やドラッグストアで購入できる「市販薬」のことです。
OTC類似薬
市販薬として販売されているものと、成分や規格、効能が同じ、あるいは非常に近い医療用医薬品のことです。代表的なものに、一部の湿布薬、ビタミン剤、うがい薬、保湿剤、漢方薬などが含まれます。
現在、政府の「骨太の方針」に基づき、医療費の効率化を目指す中で、「軽微な症状に対しては、まずは自己負担で市販薬を使ってもらう(セルフメディケーション)」という考え方が推進されています。その一環として、これらのOTC類似薬を保険適用の対象から外す、つまり「選定療養」の仕組みを活用することが検討されています。
「選定療養」になるとどうなる
「選定療養」とは、保険診療と保険外の診療(自費)の併用を認める制度です。もしOTC類似薬が選定療養になると、患者さんは以下のどちらかを選択することになります。
1•全額自己負担で購入する: 病院で処方してもらう場合でも、その薬剤費は10割負担となる。
2•保険が適用される別の薬剤に変更する: 医師が治療上必要と判断し、代替薬があればそちらが処方される。
重要なのは「一律で処方禁止になるわけではない」という点です。 あくまで、患者さんの薬剤費負担が変わる可能性がある、ということです。
病棟看護師の業務に起こりうる3つの変化と対策
この制度変更が実施された場合、病棟ではどのような変化が起こるでしょうか?具体的なケースと対策を考えてみましょう。
1. 患者・家族への説明と同意取得の機会が増える
【予測される状況】
- 入院時に持参薬としてOTC類似薬(例: ロキソニンテープ、ヒルドイドソフト軟膏など)を持ってきた患者さんに対し、継続使用時の費用負担について説明が必要になる。
- 医師がOTC類似薬を処方しようとした際、「このお薬は自費になりますが、よろしいですか?」といった説明と同意確認の場面に立ち会う、あるいは看護師から補足説明を求められる。
- 退院時処方で渡す薬の中にOTC類似薬が含まれる場合、退院後の費用負担や代替薬について説明する必要が出てくる。
【今からできる対策】
- 正確な知識の習得
どの薬剤が対象になる可能性があるのか、選定療養の仕組みはどういうものか、院内の運用はどうなりそうか、といった情報を積極的に収集し、勉強会などで共有する。 - 説明用ツールの準備
薬剤師と協力し、患者さんに分かりやすく説明するためのパンフレットや説明資料を準備しておく。「なぜこの薬は自費なの?」という疑問に、根拠を持って答えられるようにしておくことが重要です。 - コミュニケーションスキルの向上
費用というデリケートな問題を扱うため、患者さんの経済状況や心情に配慮した丁寧なコミュニケーションが求められます。共感的な態度で、選択肢を分かりやすく提示するスキルを磨きましょう。
2. 薬剤の代替や中止に伴うアセスメントがより重要に
【予測される状況】
- 患者さんが費用負担を理由に湿布の使用を中止・拒否し、疼痛コントロールが不良になる。
- 保湿剤の使用を自己中断し、皮膚トラブル(乾燥、掻痒、皮膚剥離など)が悪化する。
- 代替薬に変更した結果、予期せぬ副作用が出現したり、効果が不十分になったりする。
【今からできる対策】
- アセスメント能力の強化
なぜその患者さんにそのOTC類似薬が必要なのか(疼痛緩和、皮膚保護、QOL維持など)、その薬学的根拠を再確認しましょう。そして、薬剤が変更・中止になった場合のリスクを予測し、観察項目を明確にする必要があります。 - 疼痛・皮膚管理の標準化
NRSなどの客観的指標を用いた疼痛評価や、皮膚トラブルの評価スケールを日々の記録に組み込み、変化を早期に捉えられる体制を整えることが有効です。 - 非薬物療法の知識習得
疼痛に対しては、体位の工夫、温罨法・冷罨法、リラクゼーションなど、看護師が主体的に提供できるケアの引き出しを増やしておくことが、これまで以上に重要になります。
3. 医師・薬剤師との連携の重要性が増す
【予測される状況】
- 「この患者さんの場合、費用がかかっても原薬を継続すべきか?」「代替薬で効果は期待できるか?」といった議論が医師・薬剤師との間で頻繁に発生する。
- 看護師からの「患者さんが費用を気にして薬を渋っています」「代替薬に変えてから痛みが増強しています」といったフィードバックが、処方決定の重要な判断材料となる。
【今からできる対策】
- 情報共有の仕組み作り
電子カルテのコメント機能や日々のカンファレンスで、患者さんの状態変化や費用に関する意向を具体的に共有する習慣をつけましょう。「痛そうにしている」ではなく、「NRSが5→7に上昇。夜間2回起きて鎮痛薬を希望」のように、客観的な事実を伝えることが連携の質を高めます。 - 薬剤師との積極的な連携
病棟担当の薬剤師と日頃からコミュニケーションを取り、OTC類似薬のリストや代替薬の候補、それぞれの特徴(薬価、副作用など)について情報を共有してもらうと良いでしょう。
変化を乗りこなし、より質の高い看護を目指して
OTC類似薬の保険適用除外は、医療費適正化という大きな流れの中で避けられない変化かもしれません。しかし、これは私たち看護師にとって、自らの専門性を再確認し、より質の高いケアを提供するチャンスでもあります。
患者さんの状態を最も身近で観察し、その声に耳を傾けることができるのは、私たち看護師です。薬剤の変更が患者さんに与える影響を的確にアセスメントし、多職種と連携しながら個別性の高いケアを実践する。その役割は、今後ますます重要になるはずです。
まずは正確な情報をキャッチアップし、病棟内で「もし制度が変わったら?」というシミュレーションをしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。