
ここでは、看護過程について説明していきます。
看護過程とは、問題解決までの一連の看護実践の流れのことで、①情報収集、②情報のアセスメント、③看護診断、④計画立案、⑤実施、⑥評価、という6つのプロセスに分かれています。
そのプロセスを一つ一つ説明していきます。
①情報収集
情報収集における「情報」とは
看護師が収集する情報とは、看護に繋がる情報のことをいいます。
それは患者さんの疾病や治療内容だけではなく、内服薬の種類、副作用の有無、血液データ、趣味、嗜好、家族構成など、非常に多岐にわたります。あらゆる情報をリンクさせ、一人の患者さんを幅広い視点から捉え、個々にあった看護を提供していきます。
看護理論に基づいた情報収集
やみくもに情報収集をしても、情報を整理するのが大変になります。そのために看護理論を用いて情報収集をしていきます。看護理論には複数あり、ゴードンの「11の機能的健康パターン」、ヘンダーソンの「看護ケアの14の構成要素」、ロイの「4つの適応様式」が主として挙げられます。これらを使って、領域ごとに情報を分類することで患者さんがどこに問題を抱えているのかが客観的にわかり、看護診断や看護計画へ進めていくことが出来ます。
記録からの情報収集
記録からの情報収集とは、カルテに記載してある内容から情報を得ることです。疾患に関する身体的情報や治療内容、その時々の副作用の有無や精神的な訴えなど多くのことが記載されているため、漏れなく情報収集をしましょう。
患者さんからの情報収集
患者さんからの情報収集とは、患者さんと直接お話をして情報を得ることです。患者さんとお話をしたり、身体を見たり触ったりすることで、現在の身体の状態を把握することが出来ます。また、それだけではなく、話し方や声のトーンなどでその人の性格がわかり、ベッドサイドの環境を見れば清潔度合いやセルフケア能力、認知判断力、趣味、家族関係なども把握できます。
実習などでは、期間が限られているため、限られた時間内に必要な情報を収集できるような工夫が必要です。「何のための入院か」を考え、退院時に期待される状態をイメージします。その達成のために、現在何が問題になっているのか、またこれから何が問題になりうるのかを考え、必要な情報を優先的に収集しましょう。
情報をS情報とO情報に分ける
S情報とは主観的情報(Subjective)、O情報とは客観的情報(Objective)のことです。患者さんが話す内容をS情報、カルテから得られた情報をO情報と分けられます。
例えば、患者さんが苦痛表情で「足首が痛みます。」と話したら、S)「足首が痛みます。」 O)「疼痛あり、苦痛表情がみられる」と書きます。
S情報は簡潔に書き直してもよい
S情報は患者さんが話す内容だと説明しましたが、おしゃべりな患者さんだと内容が多くなってしまい、どこが重要な情報か分かりにくくなってしまいます。そんな時は、話してくれた内容をすべて書くのではなく、大事なところだけをかいつまんで記載しても大丈夫です。
②情報のアセスメント
「情報収集」と「アセスメント」の違い
「情報収集」とは事実の収集であり、「アセスメント」とは記入者が考えたことになります。
アセスメントの視点
①解釈・分析をする時点で、正常な状態(通常の状態)か、異常な状態(逸脱した状態)か
②①の原因・要因は何か
③この状態が続いた場合、今後どのようなことが予測されるか
収集した情報をもとにアセスメントをする
アセスメントするうえで注意しなければならないことは、収集した情報の記載がないのにアセスメントで突然出てくることです。本来は、情報収集をしたうえで、収集した情報の解釈・判断をする流れになっているはずですが、情報の記載がないと、突然アセスメントの記録が出てくるため、混乱する一因となってしまいます。
看護記録は一貫性と論理的な思考が大事です。記録が書き終わったら、読み返しをして、情報の記載忘れに注意してください。
「○○○○が必要」はダメ
情報のアセスメントの際、よく「○○○○が必要」とよく書かれていることがあります。これは情報のアセスメントをしていることにならないため注意をしてください。もし、「○○○○が必要」と書きたくなったら、次のように考えてみてください。
「どうして必要なのだろう?」と問いかけてみる
「食生活を改善するには妻の協力が必要」→「食事は普段妻が作っているため」
「食事指導や普段気を付けることの説明が必要」→「疾患の成り立ちや成り行き、治療の必要性について十分に理解できていないため」
「なぜこうしたことが起きているのだろう?」と問いかけてみる
「なぜ食事は普段妻が作っているのだろう」→「昼間は仕事で、夜も帰ってくるのが遅いため妻が作っている」
「なぜ疾患の成り立ちや成り行き、治療の必要性について十分に理解できていないのだろう」→「血圧は内服コントロールできており、病気の心配をせず食事や嗜好品にも気を付けていなかったため」
「この状態が続くとどうなるのだろう?」と問いかけてみる
「昼間は仕事で、夜は帰ってくるのが遅いため妻が食事を作っている」「血圧は内服コントロールできており、病気の心配をせず食事や嗜好品にも気を付けていなかったため」
→「食事や嗜好品の管理方法を身につけないと、退院後も管理方法が上手くできず、病状の進行のリスクがある」
「○○○○が必要」は、こう書き換える
継続した観察が必要である
・継続した観察により、〇〇が予防できる
・頻回の観察が、〇〇の早期発見と重症化を防ぐことに繋がる
注意する必要がある
・注意して〇〇することで、□□のリスクが軽減できると考えられる
・(注意しなければならないのは)〇〇の影響が大きい
注意して〇〇する必要がある
・〇〇しなければ、□□する可能性がある
説明する必要がある
・〇〇について説明し、理解を促すことで□□に繋がると考える
・〇〇に関して丁寧な声かけを心掛けることで、□□できると考えられる
指導が必要である
・〇〇に関する知識が不足している(認知機能が低下している)と考えられるため、□□のリスクが高い
③看護診断
看護診断とは
看護診断とは、アセスメントの結果として明らかになった問題に名前を付けることです。看護診断名は「急性疼痛」や「睡眠パターンの混乱」といったものです。名称が決まったら、その問題に対して治療やケアを行っていきます。
診断のポイント
原因・誘因をアセスメントで明らかにすることで、その問題解決のためにどのようにアプローチすればよいかが明確になります。問題解決の基本は、「原因・誘因を除去・軽減する」ように看護を実施することになります。また、現在起こっている問題だけではなく「これから起こりうるリスク」も看護問題として挙げることが大切です。
通常、看護問題は1つではなく複数ありますが、その中での優先順位を決めることが重要です。
優先順位1位:生命の危険がある問題
優先順位2位:対象者自身が優先していること、本人の苦痛に関する問題
優先順位3位:1つの問題解決が、連鎖的に多くの問題解決につながる問題
※実在していないリスク型の問題でも、生命の危険が及ぶものは優先順位が高くなります
④計画立案
看護計画の立て方
看護計画は主に①看護診断名、②患者目標、③計画の3つで構成されます。
看護診断名
看護診断名「感染リスク状態」を要因(関連要因)を使って「白血球減少に続発する抵抗力低下に関連した感染リスク状態」とすれば、より具体的な看護診断名になります。
患者目標
患者目標はは、患者さんが主語になるように書きます。
患者目標は長期目標(1つ)と短期目標(複数)をたてる場合があります。短期目標をすべて達成できれば、長期目標が達成できるように書き、いつまでに目標を達成できるようにするか決めるとよいでしょう。
計画
具体的な計画は、OP(観察計画)、TP(ケア計画)、EP(教育計画)に分けて書きます。OPは目で見て確認すべきこと、TPは実際に患者さんに実施するケアのこと、EPは患者さんへの指導や説明を表します。
個別性のある看護計画の立て方
看護計画に個別性を入れるには、より具体的に考えてみましょう。
いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、どのように(How)を入れると具体的になります。
例えば「清拭を介助する」に対して、4W1Hをいれて考えると「リハビリが終わった後、病室で患者さんを蒸しタオルで清拭する」と具体的になります。
⑤実施
看護過程における実施とは、計画立案した看護活動を実施することです。実施にあたっては以下のポイントに気を付けていきます。
①常に対象の状態をアセスメントし、対象の状態に応じて修正、変更をすること。特に状態の変化がある場合は、対象の最新の状態を常にアセスメントし、適宜計画の追加、修正が必要になる。
②常に対象(家族も含めて)への説明と同意を得て、相談しながら実施すること。実勢の主体は患者(家族)であることを忘れない。
③安全・安楽・自立に留意し、科学的根拠に基づいて実施する。
④実施後は対象の反応、その結果を把握し、記録、報告を行うこと。
⑥評価
評価とは、看護計画に基づく援助結果から、短期目標がどの程度達成されたかを判定することです。目標が「達成」された場合は、「看護診断(看護上の問題)は解決された」ということで終了となりますが、「未達成」の場合は、再度情報収集して再アセスメントを行い、「なぜ達成できないのか」の原因を検討し。必要であれば看護計画の修正、追加を行います。
評価の視点
①目標の達成度を判定する
→「完全に達成」「一部達成」「全く達成できていない」のいずれかで判定する。
②目標到達度に影響を及ぼした要因を明らかにする
→「一部達成」の場合は達成の促進要因と阻害要因を、
「全く達成できていない」の場合は阻害要因を分析する。
③計画を継続するか、解決とするか、修正するかを決める
→②の要因をもとに、計画の継続・修正につなげていく。



看護過程は、問題解決までの一連の看護実践の流れのことで、①情報収集、②情報のアセスメント、③看護診断、④計画立案、⑤実施、⑥評価、という6つのプロセスに分かれています。
そして、アセスメント~評価までの過程を循環して行うことで、看護上の問題を解決していきます。
常に行った看護を「評価」し、質の高い看護を提供していきましょう。