
認知症とは不可逆性の疾患と知られていますが、一部の認知症では、
適切な治療を行うことで改善の可能性があります。
ここでは、治療可能な認知症について、どのような疾患なのかを
説明していきます。
正常圧水頭症とは?
正常圧水頭症とは、歩行障害、精神活動の低下(認知症など)、尿失禁を三徴とする成人の慢性水頭症で、髄液圧が正常範囲にあるものをいう。
脳室拡大が慢性的に持続し、脳(特に前頭葉)の機能が次第に障害されるため、三徴に代表される様々な神経症状が現れ、ゆっくりと進行していく。ただし、三徴はNPHに特有なものではなく、慢性期の成人水頭症(LOVAなど)でもみられるものである。
LOVAとは?
LOVAとは、長期存続型著明脳室拡大のことである。非交通性水頭症の一種で、小児期に発症し、著明な脳室拡大を呈するが、巨頭症以外の症候を認めずに、成人期になって高圧性水頭症として発症するものをいう。
通常、中脳水道閉塞によって生じ、神経内視鏡手術の適応となる。
症状の進行は?
NPHの症状はゆっくりと進行する。三徴の中では、歩行障害が最初に現れることが多く、出現頻度も多い。またシャント術による症状改善も最もみられやすい。
歩行障害のみを呈する場合、パーキンソン症候群との鑑別が重要となってくる。


検査・治療
頭部CTやMRIで、左右対称に脳室、Sylvius裂、脳底槽の拡大及び、高位円蓋部(前頭葉)の脳溝の狭小化などを認めることがある。また、側脳室周囲の白質において、CTでは低吸収域、MRI T2強調像や高信号域がみられる。
アルツハイマー型認知症や加齢性脳萎縮などでは、NPHとは異なり高位円蓋部の脳溝が拡大するが、ときに鑑別が困難になることがある。
交通性水頭症の治療に準じており、VPシャント・VAシャント・LPシャントが挙げられる。



認知症の中には、原疾患の治療により認知機能の回復の可能性があります。このような認知症を、治療可能な認知症(treatable dementia)と呼びます。
今回説明したNPH以外にも、HIV脳症(AIDS脳症)、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、神経梅毒などが挙げられます。
患者さんのQOL向上や介護負担の軽減のためにも、認知機能低下の症状がみられる場合は、早期に医療機関に受診し医師の診断・治療が望まれます。