【危険】ダイエットに近道はない
あずかんSNSやネットのニュースで「痩せる注射(マンジャロなど)でダイエット!」という話題をよく見かけますよね。「打つだけでスルスル痩せるなら、ちょっと試してみたいな…」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
「本当に安全なの?」「副作用はないのかな?」と不安になって検索してくださったのだと思います。その直感、大正解です。
実は今、外来でも「あの注射、私でも買えますか?」と聞かれることがすごく増えているんですよ。でも、健康な方がダイエット目的で使うのは、とても危険な裏側があるんです。
今日は、難しい言葉は使わずに、この「痩せる注射」の本当の働きと、健康な体に使うとどんな怖いことが起こるのか、優しくお話ししていきます。読み終わる頃には、ご自身の体をどう守ればいいかがハッキリ分かるはずです。
そもそも「マンジャロでダイエット」ってどういうこと?
ニュースでよく「インスリン注射で痩せる」と言われていますが、実は少し違います。マンジャロなどはインスリンそのものではなく、体の中のすい臓という工場に「インスリン(血糖値を下げるホルモン)をもっと出して!」と命令するお薬なんです。
1.本当は誰のためのお薬?
本来は、すい臓の働きが弱ってしまった「糖尿病の患者さん」の命を守るための大切なお薬です。
2.なぜ痩せるの?
胃の動きをゆっくりにして「ずっと満腹な状態」を無理やり作り出したり、脳に「もう食べたくない」と感じさせたりするからです。
3.健康な人が使うとどうなる?
正常に動いているすい臓(工場)にムチを打って過労死させてしまうようなもので、体全体のバランスが大きく崩れてしまいます。
現場でよく聞かれる!患者さんの「3つのギモン」
Q1. 健康な人が使うと、すぐにどんな危険があるの?
A. 一番怖いのは「低血糖」という、ガソリン切れの状態になって倒れてしまうことです。
健康な人は、もともとインスリンの量がバッチリ調節されています。そこにこの注射を打つと、インスリンが出すぎてしまい、血液の中の糖分(体のガソリン)が空っぽになってしまいます。これを「低血糖」と呼びます。
急に冷や汗が出たり、手がガタガタ震えたり、ひどい時は意識を失って倒れてしまうこともあります。また、胃を無理やり止めるので、ひどい吐き気や便秘で「毎日気持ち悪くて生活がしんどい…」と後悔する方も少なくないんですよ。
Q2. 何ヶ月も長く使い続けると、どうなっちゃうの?
A. すい臓がボロボロに疲れて、筋肉もゲッソリ落ちてしまいます。
本来なら元気なすい臓に、お薬で「もっと働け!」とムチを打ち続けると、すい臓が疲れ果ててしまいます。その結果、将来薬をやめた時に、自力でインスリンを出せなくなり、「ダイエット目的だったのに、本当に糖尿病になってしまった」という取り返しのつかない事態になる危険性があります。
さらに、体重が減る時に「脂肪」だけでなく「大切な筋肉」まで一緒に落ちてしまうので、薬をやめた途端に、以前よりも太りやすい体(リバウンド)になってしまうんです。
Q3. 美容クリニックで「安全です」って言われたんだけど…?
A. 万が一、重い副作用が出た時に、誰も助けてくれない(補償されない)リスクがあります。
通常、病院でもらったお薬で重い副作用が出た場合は、国が治療費を助けてくれる「救済制度」というお守りがあります。でも、美容目的(自費診療)でこのお薬を使って倒れてしまった場合は、このお守りが一切使えません。高いお金を払って体を壊し、さらに治療費も全額自己負担になってしまう…という家計簿のピンチにも直結してしまうんです。
ナースが教える!今日からできる「おうちでの対策」や「受診のサイン」
「もう使っちゃったよ…」「周りの友達が使っていて心配」という方へ、具体的な対応をお伝えしますね。
もし今使っていて、こんな症状が出たらすぐ病院へ!
もし注射を使っていて、「異常な冷や汗が出る」「手が震える」「強い吐き気が止まらない」「みぞおちのあたりが激しく痛む(急性膵炎のサインかもしれません)」といった症状が出たら、我慢しないでください。「ダイエット薬の副作用かも」と恥ずかしがらずに、すぐに内科や救急外来を受診してください。その際、必ず「何という薬を使っているか」を医師や看護師に伝えてくださいね。
本当に必要なお薬の分まで無くなっています
現在、ダイエット目的で使う人が増えすぎたせいで、本当にこの薬がないと命に関わる糖尿病の患者さんたちの手元に薬が届かない、という深刻な事態が起きています。ご自身の体を守るため、そして本当に薬を必要としている方を守るためにも、「安易な使用はストップする」という選択をしてくださいね。



「少しでも綺麗になりたい」「痩せたい」というお気持ちは、痛いほどよく分かります。でも、皆さんの健康な体は、何百万円出しても買えない一生の宝物です。その宝物を、使い方を間違えると毒になってしまうお薬で傷つけないでほしいと、私たち看護師は心から願っています。
健康的なダイエットのことで悩んだら、一人で抱え込まずに、かかりつけの内科の先生や医療スタッフにいつでも相談してくださいね。遠回りだと思っても、食事と運動のバランスを見直すことが、結局は一番の近道なんですよ。