変形性膝関節症について

変形性膝関節症について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

「膝が痛いお年寄り」とひとくくりにするのは簡単ですが、この疾患は患者さんのADLをじわじわと奪い、最終的には「歩けない=寝たきり」へと直結するリスクを秘めています。また、TKA(人工膝関節全置換術)やUKA(人工膝関節単顆置換術)などの周術期管理においては、私たち看護師の観察力が機能予後を大きく左右します。
今回は、教科書的な知識だけでなく、「現場のリアリティ」に即した視点を紹介します。明日の患者さんへの関わりが、少しでも深まるヒントになれば嬉しいです。

目次

サクッと復習!疾患の概要

まずはクリニカルな視点で基本を整理しましょう。

  • 病態: 加齢や過重負荷により関節軟骨が摩耗し、軟骨下骨の露出、骨棘形成、関節裂隙の狭小化が生じる慢性進行性の変性疾患です。
  • 原因: 一次性は加齢や肥満、遺伝的素因。二次性は外傷や半月板損傷後などが挙げられます。日本人はO脚(内反変形)が多いため、内側型OAが圧倒的に多いのが特徴です。
  • 症状:
    • 動作開始時痛(Start-up pain): 動き始めの痛みが特徴的。
    • 可動域制限(ROM制限): 特に伸展制限(屈曲拘縮)が進みやすい。
    • 関節水腫(Hydrarthrosis): 滑膜炎による滲出液貯留。
  • 治療:
    • 保存療法:生活指導(減量)、運動療法(大腿四頭筋訓練)、薬物療法(NSAIDs、ヒアルロン酸関節内注射)。
    • 手術療法:高位脛骨骨切り術(HTO)、人工膝関節置換術(TKA/UKA)。重症度分類であるKellgren-Lawrence分類グレードⅢ・Ⅳが手術適応の目安となります。

プロの観察ポイント&根拠

私が現場で膝OAの患者さん、特に周術期の患者さんを看る時、ルーチンのバイタル測定に加えて必ず以下のポイントを深掘りしています。

観察項目観察ポイント根拠・予測
疼痛の「質」とタイミングNRS(Numerical Rating Scale)の点数だけでなく、「いつ痛むか」を聞き分ける。
動作開始時のみ
安静時痛(Rest pain)や夜間痛があるか
動作時痛だけであれば保存的治療の範疇ですが、安静時痛や夜間痛の出現は炎症の急性増悪や骨髄病変の進行を示唆します。これは手術適応を判断する重要な指標であり、また術後の疼痛管理プランの変更(鎮痛薬のベースアップなど)が必要なサインです。
局所炎症所見と膝蓋跳動膝蓋骨を大腿骨に向けて圧迫し、コツコツという感触や浮遊感(膝蓋跳動:Ballottement)を確認する。
同時に熱感(Calor)の左右差を手背で触知する。
「なんとなく腫れている」では報告になりません。膝蓋跳動が陽性なら関節液の貯留(水腫)があり、滑膜炎が活動期にある証拠です。これが持続する場合、穿刺排液の要否を医師と検討する材料になります。術後であれば感染兆候(SSI)の早期発見にも直結します。
腓骨神経麻痺の兆候
(特に術後や重度O脚患者)
足関節の背屈運動(足首を上に反らす)ができるか、足背から第1・2趾間の知覚鈍麻がないかを確認する。外反位矯正を行うTKA術後や、重度のO脚矯正後は、腓骨頭周辺で腓骨神経が伸張・圧迫されやすい状態です。下垂足を見逃すと不可逆的な麻痺になりかねないため、早期発見がQOLを守る鍵となります。
ラテラルスラスト
(Lateral thrust)
歩行時、立脚初期に膝が外側へカクッと横揺れしていないか観察する。膝の不安定性と内反変形の進行度を表す重要なサインです。スラストが強い場合、装具(足底板や膝装具)の適合性を疑う、あるいは転倒リスクが極めて高いと判断し、歩行介助レベルを見直す必要があります。

もし患者さんが「痛いから動きたくない」と言ったら?

保存療法中、あるいは術後リハビリ初期の患者さんが、顔をしかめてこう言いました。
「動くと痛いし、また水が溜まるのが怖いから、今日はベッドで休んでいたいわ」

この言葉を鵜呑みにして「じゃあ今日は安静にしましょう」と返すのは、プロとしては少し物足りません。

言葉の裏にあるニード
この訴えには、単なる痛みへの恐怖だけでなく、「動かすことで悪化するのではないかという誤解」や「いつまでこの痛みが続くのかという先のみえない不安」が隠れています。

対応アクションと会話例

  1. 痛みの共感とアセスメント(受容)
    • 「動かすとズキッとして怖いですよね。今の痛みは、じっとしていても痛いですか?(安静時痛の有無を確認)」
  2. 正しい病態生理の共有(教育的関わり)
    • 「実は、膝の軟骨には血管がないので、動かして関節液を循環させないと栄養が届かないんです。ずっと動かさないと、かえって関節が固まって(拘縮)、余計に痛くなりやすいんですよ。」
  3. スモールステップの提案(交渉)
    • 「いきなり歩くのが辛ければ、まずは痛み止めを使って痛みを少し抑えてから、ベッドの端に座って足をぶらぶらさせる運動だけ一緒にやってみませんか?それだけでも膝には良い薬になりますよ。」

現場で差がつく看護のコツ

教科書には載っていないけれど、現場でやると患者さんが楽になる、そんなちょっとした工夫やコツを紹介します。

工夫・コツ・アイデア実践内容ケアによる効果・メリット
アイシングのタイミング調整漫然と冷やすのではなく、「リハビリ直後」や「入浴後(炎症期の場合)」に限定して15〜20分間、氷嚢でピンポイントに冷却する。運動による炎症の火種をすぐに消火することで、夜間の疼痛や翌日の腫脹(リバウンド)を防げます。「リハビリ=痛い・腫れる」というバッドサイクルを断ち切るのに有効です。
ベッド高の「膝窩合わせ」ベッドの高さを、患者さんの下腿長(膝窩から床までの高さ)よりもやや高めに設定しておく。立ち上がり動作時の膝への負担(大腿四頭筋への負荷と膝蓋大腿関節圧)を劇的に減らせます。「立ち上がるのが億劫」という心理的ハードルを下げ、離床を促す環境調整です。
「良肢位」保持のためのタオル活用術後や疼痛時、膝の下に枕を入れたくなるが、長時間は屈曲拘縮を招くためNG。代わりに、踵の下に薄いタオルを入れ、膝裏をベッドに押し付ける感覚を掴んでもらう(パテラセッティングの予備練習)。膝伸展位を保ちつつ、大腿四頭筋の等尺性収縮を促せます。拘縮予防と筋力維持を同時に行える、寝たままできるケアです。
靴下の選定アドバイス自身で靴下を履く動作が膝屈曲の限界で困難な場合、口ゴムが緩く、滑り止めがついたソックスや、ソックスエイドの使用を提案する。膝OA患者さんにとって「深屈曲」は痛みを伴う動作です。ADL自立度を下げないために、自助具や物品の工夫を提案するのも看護師の大事な役割です。

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人の頃よくやってしまう失敗があります。それは「膝しか見ていなかった」ことです。

患者さんが「膝が痛い」と言うので、膝の腫れや熱感ばかり気にして、湿布を貼ったりアイシングをしたりしていました。でも、ある時先輩に「その人の靴の裏、見てみた?」と言われたんです。
確認してみると、靴の外側が極端にすり減っていて、ご自宅ではせんべい布団(床からの立ち上がりが必要)で生活されていることがわかりました。


膝OAは、単なる局所の病気ではなく、「生活習慣とアライメント(姿勢)の病気」です。
入院中は、膝の痛みだけでなく、「股関節や足関節は硬くなっていないか?」「脊柱(背骨)が曲がってバランスが悪くなっていないか?」といった全身の連動性にも目を向けてみてください。

また、退院後の生活を見据えて「和式トイレは洋式に変えられそうですか?」「ベッドを導入するスペースはありますか?」と、生活環境にまで想いを馳せることができると、看護の質がグッと上がります。
「木(膝)を見て森(全身・生活)を見ず」にならないよう、広い視野を持ってみてくださいね。

参考資料
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