静岡県菊川市の市立病院が2026年3月をもって分娩業務の停止を検討しているというニュースは、地域住民にとって大きな関心事となっており、特に20歳代から40歳代の男女にとって、将来の家族計画や出産に関する情報は重要である。本記事では、分娩業務停止の背景にある少子化の動向、経営難、診療報酬の適正性について詳しく考察し、地域医療への影響を探っていく。
日本の出生数の動向
日本の出生数は、ここ数十年にわたり減少傾向にある。令和5年度の出生数は72万7277人で、前年の77万759人より4万3482人減少し、また、合計特殊出生率 は1.20で、前年の1.26より低下している。
この少子化の進行は、経済的な不安定さや育児と仕事の両立の難しさ、結婚や出産に対する価値観の変化など、さまざまな要因によって引き起こされている。
特に、20歳代から30歳代の若年層においては、経済的な余裕がないことが結婚や出産をためらわせる要因となっている。多くの若者が安定した職を得ることが難しく、将来に対する不安から出産を先延ばしにする傾向が見られる。また、育児と仕事の両立が難しいという現実も、出産をためらう要因の一つである。
菊川市においても、出生数の減少は顕著であり、2014年度に463人だった出生数は2024年度に285人まで落ち込んでいる。市立病院が分娩業務を停止することは、地域の妊婦や新生児にとって大きな影響を及ぼすことが予想される。分娩を希望する妊婦は、他の医療機関に通う必要が生じ、移動の負担や医療サービスの質に対する不安が増すことになる。
経営難の背景
市立病院が分娩業務の停止を検討する背景には、経営難がある。総務省の調査によると、2023年度には全国854の公立病院のうち601病院が赤字を計上している。赤字の原因としては、医療資材や医薬品の高騰、人件費や光熱費の上昇が挙げられる。特に、医療資材の価格は年々上昇しており、病院の経営を圧迫している。
医療資材や医薬品の高騰は、世界的な供給問題や、原材料費の上昇などが影響している。また、医療従事者の確保も難しくなっている。特に医師や看護師の人手不足は深刻であり、特に分娩業務を行う産婦人科医の確保は困難を極めている。これにより、分娩業務を維持するためのコストが増大し、経営をさらに厳しくしている。
診療報酬の適正性
日本の医療制度において、診療報酬は医療機関の経営に大きな影響を与える。現在の診療報酬制度は、医療サービスの質を維持しつつ、医療機関の経営を支えることを目的としている。しかし、実際には診療報酬が適正かどうかは議論の余地がある。
特に、分娩業務に関しては、診療報酬が十分に反映されていないとの声が多い。分娩にかかるコストは高く、医療機関が受け取る報酬がそれに見合わない場合、経営が厳しくなるのは当然である。分娩業務を行う病院は、医療サービスの質を維持するために多くのリソースを投入しているが、その対価が十分に支払われていない現状がある。
地域医療への影響
市立病院が分娩業務を停止することは、地域医療に深刻な影響を及ぼし、分娩を希望する妊婦には、他の医療機関に通う必要が生じ、移動の負担や医療サービスの質に対する不安が増すことになる。また、地域の医療機関が分娩業務を行わなくなることで、地域全体の医療体制が脆弱化する可能性がある。
さらに、分娩業務の停止は、地域の少子化問題をさらに悪化させる要因となる。妊婦が安心して出産できる環境が整っていない場合、出産をためらう人が増えることが予想される。これにより、地域の出生数がさらに減少し、将来的な地域の活力が失われることが懸念される。