言語障害の観察項目とその根拠を徹底解説!

言語障害は、脳卒中や頭部外傷、神経疾患など様々な原因で起こりうる症状です。患者さんの状態を正確にアセスメントし、適切なケアを提供するためには、言語障害の種類を理解し、観察項目とその根拠を把握しておくことが重要です。この記事では、言語障害の観察項目とその根拠について、代表的な失語症を中心に解説します。
目次
言語障害の主な種類
言語障害にはいくつかの種類がありますが、ここでは代表的な「運動性失語(ブローカ失語)」と「感覚性失語(ウェルニッケ失語)」について解説します。
- 運動性失語(ブローカ失語): 言葉を理解することは比較的得意ですが、話そうとするとスムーズに言葉が出てこない状態です。発話は非流暢で、努力を要します。
- 感覚性失語(ウェルニッケ失語): 流暢に話すことはできますが、言葉の理解が難しく、言い間違い(錯語)が多かったり、意味の通じないことを話したり(ジャーゴン)する状態です。
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言語障害について | ポンコツ看護師の勉強ログ
【看護師・看護学生向け】言語障害の患者さんへの対応、困っていませんか?この記事では、失語症の病態生理から原因、症状のタイプ別解説、具体的な治療法、そして最も大切…
観察項目とアセスメントの根拠
観察項目(WHAT) | 根拠(WHY) |
---|---|
1. 自発話(こちらから話しかけず、患者から自然に出てくる言葉) | |
- 流暢さ(スラスラ話せるか) | 非流暢: 言葉が途切れ途切れ、努力して話している様子が見られる場合、運動性失語(ブローカ失語)が疑われます。 流暢: スムーズに話せているように聞こえるが、内容がおかしい場合、感覚性失語(ウェルニッケ失語)が疑われます。 |
- 発話量(多いか少ないか) | 少ない/無言: 発話を開始すること自体が困難な運動性失語や、重度の失語症の可能性があります。 多い(多弁): 感覚性失語では、言葉のコントロールが効かず多弁になることがあります。 |
- 錯語(言い間違い)の有無 | 音の言い間違い(音韻性錯語): 例:「みかん」→「みかんぬ」など。運動性失語でも見られます。 言葉の言い間違い(語性錯語): 例:「いぬ」→「ねこ」など。感覚性失語でよく見られます。 新奇な言葉(新造語): 意味不明な言葉を作り出す。重度の感覚性失語で見られます。 |
2. 言語理解 | |
- 簡単な指示に従えるか(例:「目を開けてください」「手を握ってください」) | 指示に従える: 言語理解は比較的保たれていると考えられ、運動性失語の可能性を示唆します。 指示に従えない: 指示された言葉の意味を理解できていない可能性があり、感覚性失語を疑います。 |
- 「はい/いいえ」で答えられる質問に正しく答えられるか(例:「朝ごはんは食べましたか?」) | 正しく答えられる: 簡単な質問の理解は保たれています。 的外れな答え/答えられない: 質問の意味を理解できていない可能性があります。 |
- 物品の名前を言えるか(呼称) | 言えない/時間がかかる: 物の名前が思い出せない「喚語困難」という症状です。これは多くの失語症で見られます。 |
3. 復唱 | |
- 単語や短い文を繰り返せるか(例:「さくら」「テレビを見る」) | 復唱が困難: 運動性失語では、発話の困難さから復唱が難しいことがあります。 復唱は比較的良好: 感覚性失語でも、聞いた言葉をそのまま繰り返すことはできる場合がありますが、意味は理解していないことが多いです。 |
4. 読み書き | |
- 文字や単語、文を音読できるか | 失語症のタイプや重症度によって障害の程度は様々です。音読の流暢さや読み間違いを観察します。 |
- 文字や単語、文の意味を理解できるか | 見た文字や文章の意味を理解できるかを評価します。「犬」と書かれた文字カードを見せて、犬の絵を指せるかなどで確認します。 |
- 自分の名前や簡単な単語が書けるか | 失語症には書字の障害(失書)を伴うことが多く、漢字よりも仮名、仮名よりも模写がしやすいなど、障害のパターンは様々です。 |
5. コミュニケーション | |
- ジェスチャーや表情で意思を伝えようとするか | 言語での表現が難しい分、非言語的な手段で伝えようとする意欲があるかを確認します。運動性失語の患者によく見られます。 |
- コミュニケーションをとろうとする意欲 | 意欲の有無は、リハビリテーションへの動機付けにも関わる重要な要素です。 |