2025年 春闘
今年の春闘では、多くの産業で賃上げが進む中、医労連の調査によると、病院や介護施設のうち、およそ4分の3が賃上げをしないと回答しています。
そんな状況を打破しようと、医労連は今月9日に、各省へ要請書を提出しました。今回は産業と医療現場の格差や、今後起こりうる医療崩壊について説明していきます。
ケア労働者の賃金と現状
近年、日本の医療現場における看護師や介護職の賃金問題が深刻化しています。最早ケア労働者の賃上げには国による支援が急務だとして、医療三単産共闘会議に所属する日本医療労働組合連合会(医労連)、日本自治体労働組合総連合(自治労連)、全国大学高専教員組合(全大教)の3団体は、2025年4月9日に内閣総理大臣、財務大臣、厚生労働大臣宛に「すべてのケア労働者の持続的な賃上げや人員配置増を求める要望書」を提出しました。この要望書は、医療機関や介護事業所で働くケア労働者の賃金改善と人員配置の増加を求めるものであり、非常に重要な意味を持っています。
全産業的には、2025年春闘において約6%前後の賃上げ回答が示される中、ケア労働者に対する賃上げはわずか2%にも満たない定期昇給のみという現実があります。さらに、地域手当や寒冷地手当などの見直しが実施されれば、実質賃下げになる者が出てくる可能性があります。このような状況では、看護師や介護職の労働者は気力ややりがいを失い、医療・介護現場を離れる人が増加してしまいます。特に、長時間労働や過重な業務負担が続く中で、賃金の低さが労働者の離職を加速させているのです。
ケア労働者の重要性と社会の理解
ケア労働者は、医療や介護の現場で患者や利用者に直接関わる重要な役割を担っています。彼らの仕事は、単に身体的なケアを提供するだけでなく、精神的なサポートやコミュニケーションを通じて、患者や利用者の生活の質を向上させることにも寄与しています。したがって、ケア労働者の賃金が低いことは、彼らのモチベーションや職務満足度に直結し、最終的には医療や介護の質にも影響を及ぼします。
SNS上では、ケア労働者が賃上げを求める声に対して、「医者ではないのだから賃上げを求めるな」や「自分が選んだ職業なんだから給料について文句を言うな」といった否定的な意見が散見されます。このような反応は、ケア労働者の重要性やその職務の厳しさを理解していないことを示しています。医療や介護は、単なる職業ではなく、社会全体を支える重要な役割を果たしていることを理解してもらうことも大切な課題だと思われます。
物価高騰とケア労働者の賃金
昨今の物価高騰は、特に生活必需品やサービスの価格上昇を引き起こし、多くの家庭に影響を及ぼしています。これにより、ケア労働者の賃金が現状のままであれば、生活が困難になる可能性が高まります。物価が上昇する中で賃金が上がらない場合、労働者は生活水準を維持するために、より長時間労働を行わなくてはならなくなります。これがさらに過重労働を招き、医療・介護現場からの離職を加速させる悪循環を生むことになります。
持続的な賃上げと人員配置増の必要性
今後、持続的な賃上げや人員配置の増加が見込めない場合、日本の医療は深刻な影響を受けることが懸念されます。医療・介護現場の人手不足は、患者や利用者へのサービスの質を低下させるだけでなく、残された労働者の負担をさらに増加させることになります。これにより、医療の質が低下し、最終的には国民全体の健康や福祉に悪影響を及ぼすことが予想されます。
ケア労働者の声を無視することは、医療や介護の質を損なうだけでなく、社会全体の健康や福祉に対する責任を放棄することにもつながります。国民ひとりひとりが、ケア労働者の重要性を理解し、彼らの声に耳を傾けることが求められています。賃上げや人員配置の増加は、単なる労働条件の改善にとどまらず、医療や介護の質を向上させるための不可欠な要素です。
医療の未来を考える
私たちができることは、まずこの問題についての理解を深めることです。ケア労働者の現状やその重要性について知識を持ち、周囲に広めることが大切です。また、医療や介護の現場で働く人々の声を聞き、彼らの立場に立った意見を尊重することも重要です。
看護師や介護職の賃金問題は、国民全員に関わる重要な課題です。医療や介護の質を守るためには、ケア労働者の声に耳を傾け、彼らの労働条件を改善するための取り組みが必要です。