ガードルストーン手術について

ガードルストーン手術について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

整形外科病棟にいると、人工股関節全置換術(THA)や人工骨頭置換術(BHA)の術後患者さんを毎日のように受け持ちますよね。でも時々、術後に予期せぬ深部感染を起こしてしまい、「今日、緊急でインプラント抜去してガードルストーン(Girdlestone)にするから!」と申し送りを受けて、慌てて直達牽引の準備に走った経験はありませんか?

ガードルストーン手術は、通常のTHAとは術後の安静度も観察ポイントも全く異なります。股関節の支点がなくなるという特殊な状態を理解していないと、重大な合併症を見逃したり、患者さんに激痛を負わせてしまうリスクがあります。今回は、頻度は少ないけれど絶対に知っておきたい「ガードルストーン手術」の術後管理について紹介していきます。


目次

ガードルストーン手術とは

ガードルストーン手術(Girdlestone arthroplasty:大腿骨頭切除術・偽関節形成術)は、主にTHAやBHA後の深部感染(インプラント周囲感染)や、重度の粉砕骨折などで再建が困難な場合に行われる「サルベージ(救済)手術」です。

病態と治療
感染源となっている人工物(インプラント)や壊死した骨頭を全て抜去・切除し、そのまま意図的に偽関節(関節がない宙ぶらりんの状態)にします。感染が鎮静化した数ヶ月後に再度インプラントを入れる(二期的再置換術)ための待機期間として行われるか、全身状態から再置換が難しく、最終手段として偽関節のまま車椅子・歩行を目指す場合があります。

特徴的な症状
骨性の支持組織がなくなるため、患肢は「外旋位」をとりやすく、数センチ単位の著明な脚長差(患肢の短縮)が生じます。


観察ポイント&根拠

ガードルストーン術後は、軟部組織の拘縮を防ぐため、または脚長差の進行を抑えるために、脛骨直達牽引や介達牽引が行われることが多くあります。

観察項目観察ポイント根拠・予測
牽引の機能と腓骨神経領域の感覚・運動牽引の重りが床やベッド枠に接触していないか確認し、患者の足背に触れて「親指を上に反らせますか?(足関節背屈)」と指示し、母趾の動きと第1・2趾間の知覚低下がないか左右差を比較する。【牽引不良による腓骨神経麻痺の予防】
股関節の支持がないため、下肢が外旋しやすくなります。外旋位のまま牽引が続くと、腓骨頭の裏を通る総腓骨神経が圧迫され、下垂足を引き起こします。重りが浮いているか(牽引力がかかっているか)の確認と、神経麻痺の早期発見はセットで評価します。
感染兆候(局所・全身)の推移ドレーン排液の性状が「血性〜漿液血性〜漿液性」へ移行しているか、混濁や悪臭(膿性)がないかをガーゼに吸わせて確認する。また、採血データのWBC、CRPの推移を前日と比較してグラフで追う。【インプラント周囲感染の鎮静化評価】
この手術の最大の目的は「感染のコントロール」です。抗菌薬の全身投与(点滴)に加え、局所の洗浄ドレーンが留置されることもあります。排液の白濁や、術後数日経っても炎症反応が右肩上がりになる場合は、デブリドマン(壊死組織の切除)の追加が必要になるサインかもしれません。
深部静脈血栓症(DVT)のサイン患側の腓腹部を両手で軽く把握し、熱感や腫脹(左右のふくらはぎの周径差が1cm以上ないか)を確認し、ホーマンズ徴候(足関節を背屈させた時の腓腹部の痛み)の有無をアセスメントする。【長期臥床による血流うっ滞】
通常のTHAと違い、早期離床が難しく、牽引により患肢の自動運動が制限されます。Virchowの3条件(血流停滞・血管内皮障害・血液凝固能亢進)が揃いやすいため、致死的な肺血栓塞栓症(PTE)を予防するために弾性ストッキングの着用状況と足関節の底背屈運動の励行が必須です。

もし患者さんからこう言われたら?

もし患者さんから「足がブラブラして抜けそうな気がするし、右と左で長さが全然違うのが怖い…」と言われたら、あなたはどう対応しますか?
これは術後数日経ち、ベッド上で少し動けるようになった患者さんからよく聞かれる切実な訴えの一部です。

言葉の裏にあるニードと病態
インプラントが抜去され、骨同士のつなぎ目(関節)がなくなったことによる「極度の不安定感」と、物理的な「脚長差(短縮)」に対する恐怖です。「このまま一生歩けなくなるのではないか」という強いボディイメージの喪失と不安を抱えています。

対応アクションと会話例

  • 「足が宙に浮いているような感覚、すごく怖くて不安になりますよね。今は感染をしっかり治すために、あえて人工物を抜いてお休みさせている状態なんです。筋肉や組織が固まってくると、少しずつブラブラした感じは落ち着いてきますよ。足の長さが違うのも、リハビリで歩く練習をする時は、靴の中敷き(補高インソール)を使って長さを調整するので安心してくださいね。まずは傷を綺麗に治すことを一緒に頑張りましょう」
    • 今の「宙ぶらりんの状態」が治療プロセスの一部であることを伝え、将来のリハビリ(補高など)への具体的な見通しを示すことで、不安を和らげます。

現場で差がつく看護のコツ

工夫・コツ・アイデア具体的な手技・環境調整期待される効果・メリット
体位変換時の「患肢のホールド」側臥位を向く際、看護師が両手で患肢の膝下と大腿部を下からしっかり面で支え、「骨盤の動きと足の動きを完全に連動させる」ように、体幹と同時にゆっくり動かす関節の支点がないため、体幹だけを捻ると患肢が置いてけぼりになり、軟部組織が過度に引っ張られて激痛が走ります。丸太転がし(ログロール)の要領で患肢を保持することで、疼痛を最小限に抑えられます
ベッド上排泄(差し込み便器)の工夫ギャジアップして便器を入れる際、患肢を無理に挙上するのではなく、健側の膝を立てて臀部を浮かせてもらい、便器は健側から滑り込ませるように挿入する。患肢は牽引されているか、または少し動かすだけで痛みが出やすいため、健側の残存機能を最大限に活用してもらうことで、患者さんの苦痛と看護師の腰痛を同時に防げます。

新人さんが陥りやすいミスへの対策

「牽引の重りが床に着いているのに気づかず、ただの足乗せ台みたいになっていた」
これ、新人さんが牽引患者さんを受け持った時によくあるヒヤリハットなんです。

「牽引の紐がまっすぐ伸びているか」
「重りが宙に浮いているか」
「足先が外側(外旋)に倒れすぎていないか」

という3点は、部屋に入るたびに「指差し確認」する癖をつけるといいです。

股関節の支えがないガードルストーンの患者さんは、私たちが環境を整えてあげないと、正しい肢位を保つことができません。「なぜインプラントを抜かなければならなかったのか」という感染の背景に思いを馳せつつ、局所の観察と全身状態のアセスメントを点と線で繋げてみてください。


参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次