経鼻胃管チューブの挿入について

経鼻胃管チューブについて

あずかん

経鼻胃管チューブの挿入は、消化管の減圧(イレウスや術後など)や胃洗浄、経管栄養の投与など、さまざまな目的で行われる非常に頻度の高い手技です。
しかし、患者さんにとっては「鼻から喉、そして胃へと管を通される」という強い苦痛を伴い、さらに私たち看護師にとっては「気管への誤入」という致死的なリスクと隣り合わせの、非常に緊張感を伴う処置でもあります。
今回は、患者さんの苦痛を和らげ、気管誤入を絶対に防ぐための実践的な挿入・確認手順を解説します。

【重要事項】
※本記事は一般的な手順・根拠を解説したものです。実施の際は、必ず所属施設の院内マニュアルや医師の指示、最新のガイドラインを優先してください。


目次

そもそも、NGチューブとMGチューブの違いとは?

現場で先輩から「3床さんのマーゲン(MG)入れておいて」と言われたり、カルテに「NGチューブ挿入」と書かれていたりして、「えっ、違う種類のチューブなの?」と戸惑ったことはありませんか?

結論から言うと、「NGチューブ」と「MGチューブ」は全く同じもの(経鼻胃管)を指しています。

NGチューブ: Naso-Gastric tubeの略で、英語由来の呼び方です。
MGチューブ: Magen(マーゲン)はドイツ語で「胃」を意味します。日本の医療現場に昔から根付いているドイツ語由来の呼び方です。

言葉のルーツが違うだけでモノは同じです。ただ、施設によっては「減圧用の太いチューブ=マーゲン」「栄養用の細いチューブ=NG」とローカルな呼び分けをしていることもあるので、迷ったら「何Fr(フレンチ)のチューブですか?」と確認するのが確実です。


【完全ガイド】経鼻胃管チューブ挿入の手順と根拠

手順・具体的アクション根拠・理由ここがポイント!
1. 準備と挿入長の計測

患者さんをファウラー位(45〜60度)にする。チューブの先端を鼻尖〜耳朶〜剣状突起までの長さ(NEX法)で測り、そこに胃内の適切な位置まで到達するよう+10〜15cm(成人で約45〜55cm目安)の箇所にマーキングする。
【解剖学的根拠】
NEX法は、鼻孔から胃の噴門部までの体表からの概測です。減圧(胃液のドレナージ)や確実な栄養注入を行うためには、チューブの先端が胃体部〜大彎側にしっかり到達している必要があるため、プラスの長さを加味します。
計測時はチューブが患者さんの顔や衣服に直接触れないよう、空中で沿わせて測りましょう。
2. 挿入開始(鼻腔〜咽頭)

チューブの先端約10cmに潤滑剤(キシロカインゼリー等)を塗布する。患者さんの顎を軽く引かせ、チューブを顔面に対して垂直(頭頂部ではなく後頭部に向かって水平)に、鼻腔の底を這わせるようにゆっくり進める。
【苦痛軽減・解剖学的根拠】
鼻腔は上に向かっているように見えますが、解剖学的には後方(水平)へ伸びています。上に向かって刺し込むと、鼻甲介にぶつかり激しい痛みや鼻出血を引き起こします。
【ここで失敗しやすい】
抵抗を感じたら絶対に無理押ししないこと。少しチューブを回転させながら進めると、スムーズに通過しやすいです。
3. 咽頭通過〜食道への挿入

チューブが咽頭後壁(約10〜15cm付近)に達すると抵抗を感じる。ここで患者さんに「ごっくんと飲み込んでください」と促し、嚥下運動に合わせて一気に数cm進める。その後も嚥下に合わせて押し進める。
【気道誤入防止の根拠】
嚥下時、喉頭蓋が気管の入り口に蓋をし、食道が開きます。このタイミングで進めることで、気管への誤入を物理的に防ぎます。また、顎を引く(頸部前屈位)ことで、気管側が狭くなり食道側が広がるためより安全です。
むせ込みが強い場合は、少量のトロミ水や氷を含ませたスポンジで嚥下反射を誘発しながら進めるのも一つの手です(禁忌でない場合)。
4. 胃内到達の確認(最重要!)

マーキング位置まで挿入後、①心窩部に聴診器を当て、シリンジで10〜20mLの空気を急速注入し「気泡音」を聴取する。②シリンジで胃内容物を吸引する。
※最終確認は必ずX線撮影で行う。
【安全管理の絶対的根拠】
気管内にチューブが入った状態で栄養剤等を注入すると、致死的な誤嚥性肺炎窒息を引き起こします。「音」だけでは食道や気管支でも似た音が鳴ることがあるため、必ず複数の方法(胃液の吸引やX線)で位置を確定させます。
【絶対NG行動】
挿入中に患者さんが「激しく咳き込む」「声が出ない」「SpO2が急激に低下する」といったサインを見せたら、気管に入っている可能性が極めて高いです。直ちに抜去してください。
5. 固定

位置が確認できたら、チューブが鼻翼を圧迫しないよう少しゆとりを持たせ、固定用テープ(Y字カットなど)で鼻翼と頬部にしっかり固定する。
【医療安全・スキンテア防止の根拠】
チューブが鼻翼の縁に強く押し付けられた状態が続くと、短期間で褥瘡が発生します。また、自己抜去を防ぐため、患者さんの視界に入りにくい頬〜耳の後ろを通すルートで固定します。
皮脂や汗でテープが剥がれやすいため、固定前に皮膚保護剤(皮膜剤)を塗布しておくと、スキンテア予防と固定力アップに繋がります。

よくあるトラブル・疑問(Q&A)

ぴよナース

Q. 嚥下を促して進めているのに、なぜかチューブが進まなくなりました。患者さんも「オエッ」と苦しそうです。

あずかん

A. チューブが口腔内で「トグロ」を巻いている(コイリング)可能性があります。

食道の入り口(輪状咽頭筋)でチューブが引っかかり、そのまま押し進めたことで口の中でループ状に巻いてしまう現象です。無理に押し込まず、ペンライトで口の中を覗いてみてください。もしチューブが巻いていたら、一旦咽頭の手前まで引き戻し、頸部をしっかり前屈(顎を引く)させてから再トライしましょう。

ぴよナース

Q. 胃液が全く引けず、空気の音も聞こえにくいです。このまま使っても大丈夫ですか?

あずかん

A. 絶対に何も注入せず、医師へ報告してX線(レントゲン)確認を依頼してください。

チューブの先端が胃壁にピッタリ張り付いている場合や、胃内容物が空っぽの場合は引けないことがあります。チューブを少しだけ出し入れして位置を微調整するか、体位を左側臥位に変えてもらうと引けることがあります。それでも不確実な場合は、「レントゲンで先端位置を確認するまで、絶対に手を使わない(注入しない)」ことが、取り返しのつかない事故を防ぐ最大の防御策です。


参考資料
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