急性膵炎について

急性膵炎について

あずかん

突然の激しい心窩部痛を訴えて救急搬送されてくる「急性膵炎」の患者さん。消化器内科や外科の病棟はもちろん、ERでも頻繁に遭遇する疾患ですよね。
急性膵炎は、軽症であれば数日の絶食と輸液で改善しますが、ひとたび重症化するとSIRS(全身性炎症反応症候群)から多臓器不全(MOF)へと進行し、あっという間に命に関わる状態に陥ります。
今回は、急速な状態悪化を防ぐために、現場のナースが「どこを見て、どう動くべきか」を深掘りして解説していきますね。


目次

サクッと復習!疾患の概要

急性膵炎は、本来なら十二指腸内で活性化されるはずの膵酵素(トリプシンなど)が膵臓内で活性化してしまい、自身の膵組織や周囲の臓器を溶かしてしまう(自己消化)疾患です。

  • 原因
    日本ではアルコール性胆石性で約7割を占めます。その他、特発性やERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)後の発症もあります。
  • 症状
    激しい心窩部痛から背部痛、悪心・嘔吐。重症例では、後腹膜出血によるカレン徴候(臍周囲の暗赤色斑)やグレイ・ターナー徴候(側腹部の暗赤色斑)が出現します。
  • 治療
    膵液の分泌を抑えるための絶飲絶食、循環血漿量減少に対する初期の大量・急速輸液、十分な鎮痛(NSAIDsやオピオイドなど)、蛋白分解酵素阻害薬の投与が基本となります。

観察ポイント&根拠

観察項目観察のポイント根拠・予測
時間尿量と厳密なIN/OUTバランス膀胱留置カテーテルの尿破棄時に、時間尿量が0.5mL/kg/hr以上保てているかを計算し、前日の体重やIN/OUTバランスのプラス幅と比較する。【循環血漿量減少性ショックと腎不全の予測】
血管透過性の亢進により、大量の水分がサードスペース(後腹膜や腹腔内)へ移行します。輸液が大量に入っているのに尿が減っている(乏尿)場合、血管内脱水が進行し急性腎障害(AKI)に陥る前兆です。すぐに医師へ報告し、輸液量のアップを検討するサインとなります。
呼吸回数とSpO2の推移モニターのSpO2だけでなく、胸郭の動きを見て呼吸数が20回/分を超えていないか、浅表性呼吸になっていないかを実測値で評価する。【ARDS・胸水貯留の早期発見】
炎症性サイトカインの全身波及により、肺の血管透過性も亢進し、胸水貯留やARDS(急性呼吸窮迫症候群)を合併しやすいです。「酸素化が下がる前」に「呼吸回数が増える(代償している)」サインを見逃さないことが、気管挿管を未然に防ぐカギになります。
腹部症状の推移(部位・性質)疼痛のNRS(0〜10)を確認するとともに、触診で筋性防御や反跳痛(ブルンベルグ徴候)、腸蠕動音の消失がないか評価する。【汎発性腹膜炎や壊死性膵炎への移行の察知】
単なる膵炎の痛みから、膵仮性嚢胞の破裂や感染性膵壊死による腹膜炎へ移行しているサインかもしれません。鎮痛薬を使っても痛みが引かない、あるいは痛みの性質が変わった時は、直ちにCT再検のSBARを準備しておく必要があります。

もし患者さんが「一口だけ水をもらえませんか?」と言ったら?

患者さんが「喉がカラカラで…一口だけ水をもらえませんか?」
絶飲食の指示が出ている急性膵炎の患者さんから、深夜の巡視時などに非常によく聞かれる訴えです。

言葉の裏にあるニードと病態
患者さんは、激しい痛みへの恐怖に加え、大量輸液による口呼吸や発熱による「強烈な口渇感」という身体的苦痛に耐えています。

対応アクションと会話例

  1. 頭ごなしに否定せず、理由を説明しつつ代替案を提示する
    • NG:「絶飲食の指示が出ているので絶対にダメです」
    • OK:「喉が渇いてお辛いですよね。でも今お水をごくりと飲んでしまうと、休ませている膵臓がビックリして消化液を出してしまい、また激しい痛みが起きてしまうんです。飲むことはできないのですが、冷たいお水でうがいをするか、氷水を含ませたスポンジでお口の中をサッパリさせましょうか?」
  2. 具体的なケアの実施
    • 吸水スポンジブラシに氷水を浸して固く絞り、口腔内(頬粘膜や舌の裏)を丁寧に清拭します。これだけで口腔内の乾燥が和らぎ、患者さんは大きな安心感を抱きやすいですよ。

現場で差がつく看護のコツ・ポイント

工夫・コツ・アイデア具体的な手技・環境調整期待される効果・メリット
「前屈位(エビ姿勢)」のクッションサポート仰臥位で痛がる患者さんに対し、側臥位にして膝を曲げさせ(胸膝位)、背中と両膝の間にポジショニングピローを挟んで姿勢を安定させる。膵臓は後腹膜臓器であるため、仰臥位では腫大した膵臓が脊椎や周囲の神経を圧迫して痛みが強強します。前屈位をとることで後腹膜の緊張が緩み、物理的に疼痛が緩和されます。
太い留置針による確実なルート確保入院時のルート確保の際、可能であれば前腕や肘正中皮静脈などの太い血管に、18G〜20Gの太い留置針でラインを確保しておく。急性期は細胞外液を急速・大量投与(例:150〜600mL/hr)するため、細い針(22Gなど)や手背の血管では漏れや閉塞のリスクが高まります。急変時に備えた確実な静脈路確保に繋がります。
アルコール離脱症状への先回りアセスメントアルコール性膵炎の患者さんの場合、入院後2〜3日目から手指の振戦、発汗、不眠、幻視などの離脱症状(振戦せん妄)が出現しないか、日勤・夜勤の申し送りで共有しておく。膵炎の悪化とせん妄による不穏(ルート抜去など)が重なると、治療が致命的に遅れます。早期にジアゼパムなどの投与を医師に相談できる準備が整います。

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人の頃は、輸液ポンプから大量の点滴が入っているのに、尿器やウロバッグに全然おしっこが溜まっていかないのを見て、「ルートが詰まってるのかな?」「点滴の量が多いのにどうして?」と焦ってしまうことがよくありますよね。

実はこれ、血管の中からサードスペース(お腹の中など)にどんどん水分が逃げ出している証拠なんです。「点滴を入れている量」と「尿が出ている量」の引き算(IN/OUTバランス)をして、体重が急激に増えたり、顔や手足がパンパンに浮腫んだりしているのに尿が出ない時は、「血管の中はカラカラの脱水状態かもしれない!」とイメージできると、医師への報告のタイミングを逃さなくなります。

あずかん

急性膵炎は、昨日まで話せていた患者さんが、数時間後にはICUで挿管されている……なんてことがリアルに起こる疾患です。「痛みが少し引いたから大丈夫」と油断せず、常に「次の悪化サインはどこに出るか」を予測しながら、自信を持ってアセスメントを深めていってくださいね。


参考資料
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