間欠的導尿について

間欠的導尿について

あずかん

術後の尿閉や、神経因性膀胱の患者さんに行う「間欠的導尿(ネラトン導尿)」。
「尿道口が見つからなくて焦った…」「男性の導尿で抵抗があって進まない…」と、冷や汗をかいた経験は誰にでもあるはずです。
間欠的導尿は、尿閉による腎後性腎不全を防ぎ、膀胱を過伸展から守る重要なケアです。しかし、手技を誤れば「尿路感染(CAUTI)」や、最悪の場合は「尿道損傷(仮性尿道形成)」という重大な医療事故を引き起こすリスクが潜んでいます。
今回は、教科書の手順にプラスして、現場で絶対に失敗しないための「解剖に沿ったコツ」と「安全管理のポイント」を男女別に徹底解説します。

【重要事項】
※本記事は一般的な手順・根拠を解説したものです。実施の際は、必ず所属施設の院内マニュアルや医師の指示、感染管理ガイドラインを優先してください。


目次

【完全ガイド】間欠的導尿の手順と根拠(女性編)

女性の導尿における最大の壁は「尿道口が見えないこと」と「膣への誤挿入」です。

手順根拠ここがポイント!
1. 体位調整と明視下の確保
仰臥位で両膝を立てて開き(カエル股)、腰の下に防水シーツを敷く。処置灯やペンライトで陰部を「絶対に明るく照らす」。
【解剖学的根拠】
女性の尿道は短く(約4〜5cm)、陰核と膣口の間にあります。高齢や肥満、萎縮性膣炎がある方は尿道口が膣側に引き込まれて同化していることが多く、暗いまま勘で刺すのは膣への誤挿入(不潔)を招きます。
ペンライトをベッド柵に固定するか、介助者に照らしてもらいましょう。「見えない状態」で進めるのは絶対にNGです。
2. 消毒と尿道口の展開
利き手ではない方の手(非無菌手)の母指と示指で小陰唇を斜め上(頭側かつ外側)にしっかり開いて伸展させる。綿球で「大陰唇→小陰唇→尿道口」の順に、必ず「上(腹側)から下(肛門側)へ一方向」に拭き取る。
【微生物学的根拠・感染予防】
肛門側から腹側へ拭くと、腸内細菌(大腸菌など)を尿道に持ち込むことになります。小陰唇をしっかり押し広げることで、隠れていた尿道口が「プクッ」と顔を出します。
【失敗しやすいポイント】
広げた指は、カテーテル挿入が終わるまで絶対に離さないこと!途中で離すと、せっかく消毒した尿道口に周囲の皮膚が触れて不潔になります。
3. カテーテル挿入と排尿確認
カテーテル先端に潤滑剤をつけ、尿道口に対してやや上向き(天井方向へ約30度)の角度で4〜6cm挿入する。尿の流出を確認したら、そこからさらに1〜2cm進める。
【解剖学的根拠】
女性の尿道は恥骨の下をくぐるようにやや前屈しています。真っ直ぐ水平に押し込むと、尿道後壁を傷つけたり、膣に向かって滑り落ちたりします。
【禁忌・NG行動】
もし「膣」に誤挿入してしまった場合、そのカテーテルを抜いてそのまま尿道に入れ直すのは絶対禁忌(感染リスク大)です。カテーテルは破棄し、新しいものを使用してください。
4. 抜去
尿の流出が止まったら、下腹部(恥骨上部)を手のひらで軽く圧迫し、残尿を出し切る。カテーテルを静かに引き抜く。
【生理学的根拠】
膀胱内に尿が残っていると、細菌繁殖の温床(残尿による尿路感染)になります。
抜く直前にカテーテルを少し回転させると、膀胱壁に張り付いていた尿がスッと抜けることがあります。

【完全ガイド】間欠的導尿の手順と根拠(男性編)

男性の導尿における最大の壁は「尿道の長さ(約16〜20cm)」と「2つのカーブ・前立腺による抵抗」です。

手順根拠ここがポイント!
1. 消毒と陰茎の保持
仰臥位(下肢は伸展または軽い膝立て)。非無菌手で陰茎を把持し、包皮を剥いて亀頭を露出させる。綿球で尿道口を中心に円を描くように外側へ消毒する。
【微生物学的根拠】
包皮の下(冠状溝)には恥垢が溜まりやすく、細菌の温床です。消毒時は尿道口から離れる方向へ拭き取ります。
挿入が終わるまで、包皮は剥いたまま保持します。戻してしまうと不潔になります。
2. 第1カーブの通過(前部尿道)
陰茎をお腹側(頭側)に向けて90度にピンと引き上げる。カテーテルにたっぷり潤滑剤を塗り、約10〜15cmゆっくり挿入する。
【解剖学的根拠】
男性の尿道には「恥骨前曲」と「恥骨下曲」という2つのS字カーブがあります。陰茎を頭側に持ち上げることで、第1のカーブ(恥骨前曲)が真っ直ぐになり、カテーテルがスムーズに進みます。
陰茎を「引っ張る」というよりは、「天井に向けてピシッと立てる」イメージです。ここでたわんでいると、尿道壁にカテが刺さり痛みを生じます。
3. 第2カーブ・前立腺の通過(後部尿道)
約15cm入れたところで「コツン」という抵抗に当たる(外尿道括約筋・前立腺部)。ここで患者に「大きく深呼吸」または「あーっと声を出して」と促す。
同時に、引き上げていた陰茎を足側(45〜60度)へゆっくり倒しながら、さらに奥へ進める。
【解剖学的根拠・安全管理】
ここが最も重要です。尿道括約筋の緊張や、前立腺の圧迫により抵抗を感じる部位です。深呼吸で括約筋を弛緩させ、陰茎を倒すことで第2のカーブ(恥骨下曲)に沿わせます。
【禁忌・絶対NG行動】
抵抗があるのに力任せに押し込むのは絶対禁忌です!尿道を突き破り「仮性尿道形成」や大出血を起こします。必ず「陰茎を倒して角度を変える」というアクションを挟んでください。
4. 抜去
尿の流出を確認し、止まったら下腹部を軽く圧迫。カテーテルを抜き、剥いていた包皮を必ず元に戻す(嵌頓包茎の予防)
【安全管理の根拠】
包皮を剥いたまま放置すると、静脈還流が阻害されて亀頭が鬱血・壊死する「嵌頓包茎」を引き起こすため、確実に戻します。
尿が抜ける際、膀胱の痙攣で痛みを感じる方がいます。「もうすぐ終わりますよ」と優しく声かけしましょう。

よくあるトラブル・疑問(Q&A)

ぴよナース

Q. 高齢男性で、途中で強い抵抗があり、陰茎を倒しても全くカテーテルが進まない時はどうする?

あずかん

A. 前立腺肥大症(BPH)や尿道狭窄が強く疑われます。絶対に無理押しせず、直ちに医師に報告してください。

通常のネラトンカテーテルでは、肥大した前立腺にぶつかって進みません。医師の判断で、カテーテルのサイズを細くする(14Fr→12Frなど)、あるいは「チーマン(クーデック)カテーテル」という先端が少し曲がった特殊なカテーテルを使用するよう指示が出ます。現場の看護師は「抵抗があった距離(何cmのところか)」と「痛みの有無」を明確に伝えましょう

ぴよナース

Q. 女性の導尿で、小陰唇を開いてもどうしても尿道口が見つからない時は?

あずかん

A. 尿道口は「膣口のすぐ上(腹側)」のヒダに隠れ込んでいます。


萎縮が強い場合、膣口のすぐ上縁の粘膜を、綿棒やカテーテルの先端で「優しく下(肛門側)へ引き下げるようになぞる」と、隠れていた尿道口の穴が開いて見えることがあります。見えないまま勘で刺すのは絶対にやめ、先輩を呼んでライトと展開の介助を手伝ってもらいましょう。


参考資料
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