シャルドンカテーテル(透析用カテーテル)の基礎知識から看護のポイントまで徹底解説
あずかん緊急透析が必要な場面で頻繁に使用される「シャルドンカテーテル」。一般病棟や救急外来でも目にする機会が多いデバイスですが、その特性や管理方法について不安を感じる看護師も少なくありません。
この記事では、シャルドンカテーテルの基礎知識から、適応となる病態、挿入中の観察ポイント、トラブル対応までを詳しく解説します。
目次
シャルドンカテーテルの役割と仕組み
「シャルドンカテーテル」とは、正確には短期留置型バスキュラーアクセスカテーテル(透析用中心静脈カテーテル)のことを指します。「シャルドン」という名称は、過去に広く使用されていた製品名が現場で定着したものですが、現在では短期用透析カテーテル全般を指してこう呼ぶことが一般的です。
仕組みと役割
- 構造
通常の中心静脈カテーテル(CV)よりも太く(12Fr前後)、内腔が2つ(ダブルルーメン)または3つ(トリプルルーメン)に分かれています。 - 脱血と返血
一方の内腔から血液を体外へ引き出し(脱血)、ダイアライザーで浄化した後、もう一方の内腔から体内へ戻す(返血)仕組みです。 - 留置部位
内頸静脈、大腿静脈、鎖骨下静脈などに留置されますが、感染リスクや血栓リスクの観点から、右内頸静脈が第一選択となることが多いです。
このカテーテルは、大量の血液(200mL/min程度)を出し入れする必要があるため、通常の点滴用ルートよりも非常に太く作られているのが特徴です。
シャルドンカテーテルの適応・挿入の理由
なぜシャルドンカテーテルが必要になるのでしょうか。主な理由は「緊急で血液浄化療法が必要だが、使用できるシャント(バスキュラーアクセス)がない」場合です。
- 急性腎障害(AKI)
- 敗血症、ショック、薬剤性腎障害などで急激に腎機能が悪化し、緊急透析や持続的血液濾過透析(CHDF)が必要な場合。
- 慢性腎不全(CKD)の導入期
- 尿毒症症状が出ているが、まだシャントを作製していない、あるいはシャントを作ったばかりで使えない(未成熟)場合。
- シャントトラブル
- 維持透析患者のシャントが閉塞・狭窄・感染などを起こし、一時的に使用できない場合。
- 血漿交換療法(PE)などの特殊治療
- 肝不全や神経疾患などで、大量の血漿処理が必要な場合。
シャルドンカテーテルの挿入に伴うリスク・合併症
カテーテル挿入中および使用中には、以下の「症状(合併症)」に注意が必要です。
- カテーテル関連血流感染症(CRBSI)
- 症状: 発熱、戦慄、刺入部の発赤・排膿。
- 特徴: 異物であるカテーテルが血管内に留置されているため、細菌が付着・増殖しやすい。最も警戒すべき合併症です。
- 脱血不良
- 症状: 透析装置のアラームが鳴る、設定した血流量が取れない。
- 原因: カテーテル先端が血管壁に当たっている、カテーテル内で血栓ができているなど。
- 出血・血腫
- 症状: 刺入部からの持続的な出血、皮下血腫の拡大。
- 背景: 尿毒症による血小板機能低下や、透析時の抗凝固薬使用により止血しにくいことがあります。
- 自己抜去・事故抜去
- 症状: 大量出血、空気塞栓(呼吸困難、意識レベル低下)。
- リスク: 頸部や大腿部は患者の手が届きやすく、不穏状態の患者では特にリスクが高いです。
治療・対症療法
- 感染(CRBSI)疑いの場合
- ただちに医師へ報告します。血液培養(カテーテル血と末梢血)を採取した後、カテーテルの抜去が検討されます。抜去したカテーテル先端も培養に提出します。
- 脱血不良の場合
- 体位変換: 患者の向きを変える、あるいはカテーテルの向きを微調整することで改善することがあります(無理な押し込みは禁忌)。
- フラッシュ: 閉塞が疑われる場合、ヘパリンやウロキナーゼによる血栓溶解療法を行うことがありますが、医師の指示が必要です。
- 自己抜去時の緊急対応
- 圧迫止血: 直ちに刺入部を強く圧迫します。動脈誤穿刺でなければ5〜10分程度で止血されることが多いですが、太い血管のため確実な圧迫が必要です。
- 空気塞栓予防: 刺入部を心臓より低くし(トレンデレンブルグ位など)、密閉します。
看護のポイント
感染管理(最重要)
- ドレッシング材の観察
刺入部の発赤、腫脹、浸出液の有無を毎日確認します。フィルムが浮いていないか、汚染されていないかもチェックします。 - 無菌操作の徹底
消毒や接続操作は、必ずマスク・手袋着用のうえ、厳重な無菌操作で行います。不要な開放(採血など)は原則避けます。 - ヘパリンロックの管理
透析終了後は、カテーテル内腔をヘパリン(またはクエン酸など)で満たして閉塞を防ぎます。それぞれのルーメンに記載された「プライミングボリューム(充填量)」を正確に守ることが重要です。誤って全量押し込むと、全身にヘパリンが回り出血傾向を助長します。
固定の確認と事故抜去予防
- 縫合の確認
- カテーテルが皮膚に縫合固定されているか、固定糸が外れていないかを確認します。
- ルートの整理
- 患者が動いた際に引っ張られないよう、ループを作って固定するなど工夫します。不穏がある場合は、抑制の必要性をチームで検討します。
一般的な点滴ルートとしては使わない
- 原則
- 透析専用のカテーテルであるため、通常の点滴や採血には使用しません(感染・閉塞リスク低減のため)。
- 例外
- 緊急時や昇圧剤投与などで医師の指示がある場合のみ使用しますが、その際は他のルートが確保でき次第、速やかに移行することが望ましいです。
全身状態の観察
- カテーテル挿入部位により観察点が異なります。
- 内頸静脈: 首の動きによる違和感や、気胸(呼吸苦)の有無。
- 大腿静脈: 鼠径部の不潔になりやすさ、歩行時の屈曲による閉塞リスク(DVTのリスクにも注意)。