人工血管内シャントについて

人工血管内シャント(AVG)について|知っておくべき管理と観察ポイント

あずかん

透析看護において、バスキュラーアクセス(VA)の管理は患者さんの生命線とも言える重要な業務です。自己血管内シャント(AVF)が第一選択とされますが、血管の状態によっては人工血管内シャント(AVG:Arteriovenous Graft)が選択されるケースも少なくありません。
この記事では、AVGの病態生理からトラブルの兆候、そして看護のポイントまでを詳しく解説します。

目次

人工血管内シャント(AVG)とは何か

人工血管内シャント(AVG)は、ポリウレタンやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの合成素材で作られた人工血管を皮下に埋め込み、動脈と静脈をバイパス(吻合)させて作製するバスキュラーアクセスです。

AVFとの違い

  • AVF(自己血管内シャント): 自分の動脈と静脈を直接つなぐ。
  • AVG(人工血管内シャント): 自分の動脈と静脈の間に「人工血管」を橋渡しする。

血流動態の特徴

AVGは人工物であるため、作製直後から内径が確保されており、血流量が安定しています。しかし、自身の血管ではないため、以下の生理的反応が起こりやすくなります。

1.静脈側吻合部の狭窄
人工血管と自身の静脈とのつなぎ目において、乱流が発生しやすく、血管内膜肥厚が進行して狭窄しやすい。
2.感染リスク
異物(人工物)であるため、細菌が付着しバイオフィルムを形成しやすく、感染に弱い。

なぜAVGが選択されるのか

日本透析医学会のガイドラインではAVFが第一選択ですが、以下の理由によりAVFの作製が困難な場合にAVGが選択されます。

  1. 自己静脈の枯渇・発育不全
    採血や点滴の繰り返しにより表在静脈がつぶれている、あるいは細すぎて十分な血流が得られない場合。
  2. 高齢や糖尿病による動脈硬化
    血管の石灰化が強く、自己血管での吻合が難しい場合。
  3. 心機能への配慮が必要な場合
    AVFは過剰血流になり心不荷をかけることがありますが、AVGは人工血管の抵抗によりある程度血流量のコントロールがしやすい側面があります(※ただし、長期予後はAVFの方が優れています)。
  4. 早期穿刺が必要な場合
    一部の特殊なAVG(即時穿刺型など)は、術後早期から使用可能なため、緊急導入時に選択されることがあります。

AVGにおけるトラブルのサイン

AVGはAVFに比べてトラブル(閉塞・感染)の頻度が高いのが特徴で、以下の症状(異常サイン)を見逃さないことが重要です。

狭窄・閉塞のサイン

  • スリル(触診)の消失・減弱: シャント音(聴診)が聞こえなくなる、または「ザーザー」から甲高い「ヒューヒュー」という音への変化。
  • 拍動の増強: 吻合部付近で拍動が強く触れる場合、その先が詰まっている可能性があります。
  • 静脈圧の上昇: 透析中の静脈圧が高くなる、止血に時間がかかる。

感染のサイン

  • 発赤・腫脹・熱感・疼痛: いわゆる炎症の4徴候。人工血管に沿って赤みが出ることが多いです。
  • 排膿: 穿刺部や皮膚の菲薄化した部分からの排膿。
  • 全身症状: 原因不明の発熱やCRPの上昇。

スティール症候群のサイン

  • 末梢の冷感・チアノーゼ・疼痛: 動脈血がシャントへ流れすぎてしまい、指先への血流が不足する状態。

治療・対症療法

狭窄・閉塞への治療

  • 経皮的血管形成術: バルーンカテーテルを用いて狭窄部を拡張します。AVGはAVFよりも頻回な経皮的血管形成術が必要になる傾向があります。
  • 外科的血栓除去術: 詰まった血栓を外科的に取り除きます。
  • 再作製: 修復不可能な場合は、別の場所に新たにシャントを作り直します。

感染への治療

  • 抗生剤投与: 軽度の場合は抗生剤で対応しますが、AVGは異物であるため完治しにくいです。
  • 人工血管抜去: 感染が人工血管全体に及んでいる場合、原則として感染した人工血管をすべて取り除く手術が必要です。

看護のポイント

AVGを持つ患者への看護は、「閉塞予防」「感染予防」「早期発見」がカギとなります。

観察(視診・触診・聴診)の徹底

  • 毎日実施: 患者自身にも触ってもらい、スリルの有無を確認するよう指導します。
  • シャント音の性質: 音調の変化(高音化は狭窄の疑い)に注意します。
  • 皮膚の状態: 人工血管上の皮膚は菲薄化しやすいため、テカりや傷がないか確認します。

穿刺と止血の技術

  • ローテーション穿刺: 同じ場所に針を刺し続けると、人工血管の劣化や皮膚の損傷を招きます。必ず穿刺部位を変える「ローテーション穿刺」を行います。
  • 止血の圧迫: AVGはAVFよりも止血に時間がかかることがあります。しかし、強く圧迫しすぎると閉塞の原因になるため、「止血できるギリギリの圧」で押さえる技術が必要です。

患者指導(セルフケア支援)

  • 圧迫禁止: シャント側の腕で重い荷物を持たない、腕枕をしない、腕時計やきつい服を避けるよう指導します。
  • 清潔保持: 感染に弱いため、穿刺部を清潔に保つこと、入浴時の注意などを伝えます。
  • 血圧管理: 低血圧は血栓形成・閉塞の大きな要因です。脱水や過度な除水に注意し、適切な血圧管理を指導します。
参考資料
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