
すべての骨折は骨粗鬆症に通ず!?



確かに、様々な骨折の背景には骨粗鬆症があるね。
今回は骨粗鬆症について学んでいこう!
骨粗鬆症ってなに?
骨粗鬆症とは、骨強度の低下により骨が脆くなり骨折しやすくなる骨疾患のこと。
閉経後の女性に好発し、骨折による自立機能が障害され寝たきりを含めた、高齢者のQOLの低下の大きな要因となっている。
閉経や高齢とともに発症する原発性(原因なし)と副甲状腺機能亢進やステロイドなどが原因で発症する続発性(原因あり)がある。
骨が弱いため、簡単に骨が折れてしまう易骨折性であり、転倒などの軽い衝撃で骨が折れてしまう。(脆弱性骨折)
<脆弱性骨折が起こる部位>
手首(橈骨遠位端)、上腕骨近位端、背骨(脊椎)、肋骨、骨盤、太ももの付け根(大腿骨頸部/転子部)、脛骨 など
なぜ骨粗鬆症になってしまうの?
骨は高齢者でも常に吸収と形成を繰り返し、新しく作り直されている。(骨リモデリング)
骨形成のスピードを骨吸収のスピードが上回ると骨粗鬆症に至る。
骨形成は骨芽細胞によって行われ、骨吸収は破骨細胞が行っている。
骨粗鬆症になると何が問題なの?
骨粗鬆症では、骨強度の低下により起こる脆弱性骨折と、それに続くQOL・ADLの低下が主な問題となる。
椎体圧迫骨折は、骨粗鬆症で最も多い骨折であり、胸腰椎(特にT12、L1)に好発し、脊柱後弯変形や低身長により気づかれることが多い。脊柱の後弯や椎体圧潰が進行すると、胸郭の圧迫による心肺機能の低下や消化器疾患、脊髄や神経根の圧迫による遅発性の神経障害を引き起こすことがある。
大腿骨近位部骨折の多くは転倒により生じ、疼痛・骨折部の治療のため臥床が続き廃用性症候群を引き起こすことがある。
骨折に続くADLの低下を防ぐために、早期から離床しリハビリテーションを行うことが重要である。


治療方法は?
食事・運動が基本
原発性骨粗鬆症治療の主な目的は、骨格の健康を保ちQOLを維持することにある。そのためには骨強度を維持し、転倒を防止することで骨折を予防する。運動、食事、生活習慣は骨粗鬆症の治療だけでなく、発症の予防にも効果的である。成長期から予防的介入を開始し、青壮年期も継続することで、より高い最大骨量を獲得し、閉経後も骨量を保つことが出来る。閉経後に予防的介入を開始した場合でも、骨量の減少スピードを緩やかにすることが出来る。
運動療法
骨量は運動刺激により増加するが、負荷がないと骨量は減少し骨は脆弱化する。そのため、成長期・青壮年期・老年期とそれぞれの骨の状態にあった適切な運動が必要である。老年期の運動は、個人の体力に適した軽い運動(ウォーキングなど)から始めることが望ましく、転倒予防のために下肢の筋力やバランスを鍛える運動も必要である。
食事療法
骨粗鬆症の予防と治療では、食事によるCa接種が不可欠である。日本人では慢性的にCa摂取量が慢性的に不足しており、骨量を増やすためには1日800mg以上のカルシウム摂取が必要である。
<摂取すべき栄養素>
カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質、マグネシウム、ビタミンC など
薬物療法
骨粗鬆症治療薬には、作用により①骨代謝調整薬 ②骨吸収抑制薬 ③骨形成促進薬 などに分けられる。標準的治療薬であるビスホスホネートやSARMを中心として、患者の病態や適応に即した治療薬を選択し、骨折の予防に努める。骨折リスクの高い重症の骨粗鬆症では、活性型ビタミンD3とビスホスホネートの併用や、PTH製剤の単独投与が推奨される。
骨代謝調整薬(腸管からのCa吸収↑)
活性型ビタミンD3製剤
小腸からのCa吸収を促進する。骨代謝回転の調整による骨密度上昇作用をもつ。筋力増強効果や転倒防止効果も報告されている。
骨吸収抑制薬(破骨細胞に作用)
ビスホスホネート
骨に選択的に取り込まれ、強い骨吸収抑制作用・骨代謝回転抑制作用を示す。第一選択薬として広く用いられる。
エストロゲン
補高細胞に作用し骨吸収を抑制する。乳がん・子宮体がんなどの発症リスクを増加させる。
選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)
骨に選択的にエストロゲン様作用を示し、乳房や子宮へは作用しない。閉経後早期の女性に用いる。
抗RANKL抗体(デノスマブ)
破骨細胞の分化・活性化促成因子であるRANKLを阻害し、骨吸収を抑制する。
カルシトニン製剤
破骨細胞のカルシトニン受容体に結合し、骨吸収を抑制する。中枢セロトニン神経系を介した疼痛緩和作用を持つ。骨粗鬆症においては、疼痛緩和目的で使用されることが多い。
骨形成促進薬(骨芽細胞に作用)
PTH製剤(テリパラチド)
間欠投与によって骨形成を促進する(1日または1週間に1回投与)。投与期間制限がある(開始から18または24か月)。
その他
ビタミンK2
オステオカルシンを活性化し、骨の石灰化を促進する。ワルファリンとの併用は禁忌である。
予後は?
骨粗鬆症自体には、大きな症状を伴わないことが多いため、治療が軽視されがちな疾患である。
骨密度が低いことで引き起こされる脆弱性骨折は、ADLを著しく低下させ、生命予後も悪化させるだけでなく、周囲の人のQOL低下も引き起こしてしまう。
骨形成促進薬は使用できる期間が限られていたり、骨吸収抑制薬は長年使用すると効果が薄れた非定形骨折・顎骨壊死などの問題点がある。また、薬の効果を自覚しにくいため、治療継続率が低いのも問題である。日本は世界有数の超高齢社会を迎えており、先進国では珍しく脆弱性骨折の件数が増加している。今後必要なことは、いち早く治療を始めること、治療を続けることであると考えられる。