糖尿病足病変について

糖尿病足病変について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

糖尿病患者さんの入浴介助やケア時、つい上半身や創部のある部分だけに注目してしまい、足の裏や足趾の間まで丁寧に観察する時間を取れていますか?
糖尿病足病変は、患者さん自身が痛みを感じにくいために気づかないまま進行し、外来受診時にはすでに壊疽を起こしていた——という経過をたどることが少なくありません。病棟でも、他の疾患で入院している糖尿病患者さんの足に、思いがけず胼胝や潰瘍を発見することがあります。この病態を理解しているかどうかで、日々のケアの中での「気づき」の質が大きく変わってきます。


目次

サクッと復習!疾患の概要

糖尿病足病変は、糖尿病神経障害と糖尿病性末梢動脈疾患(PAD)を背景として、足部に潰瘍・壊疽・感染などが生じる病態の総称です。

病態の中心となるのは大きく2つの要素です。
一つは感覚神経障害による疼痛・温度感覚の低下で、これにより小さな外傷や靴による圧迫、熱傷に気づかず、傷が進行してしまいます。
もう一つは末梢動脈疾患による血流障害で、組織の栄養供給が低下し、創傷治癒が遅延するとともに、虚血性壊疽のリスクが高まります。さらに自律神経障害による発汗異常は皮膚の乾燥・亀裂を招き、感染の入り口になりやすいという特徴もあります。

初期には胼胝鶏眼乾燥・亀裂として現れ、進行すると神経障害性潰瘍虚血性潰瘍、さらに感染を伴うと蜂窩織炎骨髄炎壊疽へと進展します。特にシャルコー関節症(Charcot関節症)は、神経障害による疼痛感覚の欠如から関節の破壊が進行し、足部変形をきたす重要な病態です。

治療は血糖コントロールを基盤としながら、フットケア(胼胝処置、爪切り、免荷)、創部処置(デブリードマン、陰圧閉鎖療法)、血行再建術(PAD合併例における血管内治療やバイパス術)、重症例では下肢切断が検討されます。足関節上腕血圧比(ABI)や皮膚灌流圧(SPP)による血流評価が、治療方針決定の重要な指標となります。


観察ポイント&根拠

観察項目具体的な観察内容根拠・予測される事態
足底・足趾間の視診靴下や包帯を外した際に、足底、足趾間、踵部を含めて必ず視診する。胼胝、発赤、水疱、亀裂の有無を確認する神経障害により患者さん自身が疼痛を訴えないため、視診による発見が唯一の早期発見の手段になることが多い。足趾間は湿潤環境になりやすく、白癬や浸軟からの感染入口になりやすい
皮膚温・皮膚色調両足を触診し、左右差や部位による温度差(冷感の範囲)を確認する。チアノーゼや蒼白の有無も確認する皮膚温の低下や蒼白は末梢動脈疾患による血流障害を示唆し、冷感の範囲拡大は虚血の進行を疑うサインとなる
足背動脈・後脛骨動脈の触知足背動脈と後脛骨動脈の拍動を触診し、左右差や拍動の強弱を確認する。触知困難な場合はドプラ聴診器での確認を検討する拍動の減弱・消失はPADの進行を示唆し、ABI検査や血管外科への相談タイミングを判断する材料になる
感覚神経障害の評価モノフィラメント(10g)を用いた触覚検査や、音叉を用いた振動覚検査を定期的に実施する感覚低下の程度を客観的に評価することで、外傷リスクの高さを予測し、免荷や靴選びの指導の必要性を判断できる
創部の性状(滲出液、臭気)創部がある場合、滲出液の色調(漿液性、膿性、血性)や量、臭気の有無を経時的に比較する膿性への変化や臭気の出現は感染の進行を示唆し、骨髄炎への波及を疑う視点につながる。ポケット形成の有無も併せて確認する
足部の変形(シャルコー関節症の有無)足部のアーチの消失、腫脹、発赤の有無を確認し、急性期のシャルコー関節症では熱感を伴うことに注意する急性期のシャルコー関節症は感染と誤認されやすいが、免荷を怠ると急速に関節破壊が進行するため、鑑別の視点を持つことが重要になる
血糖値・HbA1cの推移入院中であれば血糖値の日内変動、外来であればHbA1cの推移を確認する高血糖状態の持続は創傷治癒を遅延させ、白血球の機能低下を通じて感染リスクを高める。血糖コントロールの状況は創部の予後予測に直結する

もし患者さんからこう言われたら、あなたはどうする

これは糖尿病神経障害が進行している患者さんが、足の傷や潰瘍を発見された際に「痛くないから、大丈夫だと思ってました」と実際に口にする言葉です。

言葉の裏のニード
「痛みという警告サインが機能していないために、本人には本当に『大丈夫』としか感じられていない」という身体的な背景があり、決して患者さんの認識不足や不注意だけの問題ではないという理解が重要です。

ここで「痛くなくても大丈夫じゃないんですよ」と一方的に指導してしまうと、患者さんは自分の感覚を否定されたように感じてしまうことがあります。対応としては、

「痛みを感じにくくなっているのは、糖尿病の影響で足の神経の働きが少し変化しているからなんです。だからこそ、痛みではなく目で見て確認することが、〇〇さんの足を守る一番の方法になりますよ」

と、痛みを感じないことが病態に基づく変化であるという理解を示した上で、視診の重要性を具体的な行動として伝えると、患者さんは自分を責めることなく、今後のセルフケアに前向きに取り組みやすくなりますよ。その場で一緒に鏡を使って足底を確認する、あるいは家族に足の観察を依頼するといった、具体的な次の行動につなげる視点が重要です。


現場で差がつく看護のコツ

工夫・アイデア期待できる効果
入浴介助・清拭時は、足を洗う前に必ず足底・足趾間を写真で記録する(施設の規定に準拠)微細な皮膚変化を経時的に比較でき、「前回と比べて広がっているか」を客観的に評価できる
爪切りは、患者さん自身に切らせず看護師が実施する場合、深爪を避けてスクエアオフ(角を少し丸める程度の直線的な切り方)を意識する巻き爪や陥入爪による皮膚損傷を防ぎ、そこからの感染リスクを軽減できる
靴を履く患者さんには、脱いだ直後の靴の内側を触れてもらい、縫い目の凹凸や異物がないか確認する習慣をつけてもらう靴による圧迫や摩擦が原因の潰瘍形成を予防でき、患者さん自身のセルフケア意識も高まる
足浴を行う際は、必ず湯温を計測してから患者さんの足に触れる(感覚検査を先に行い、患者さんの「ちょうどいい」という感覚だけに頼らない)感覚障害による熱傷を防ぎ、安全な温罨法の提供につながる
創部処置の記録には、創のサイズを毎回同じ体位・同じ物差しの向きで測定した数値を残す治癒過程の客観的な評価ができ、多職種(医師、皮膚・排泄ケア認定看護師など)との情報共有の精度が上がる

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人さんがよくやってしまうのが、「痛みの訴えがないから、足に問題はない」と判断してしまうことです。糖尿病足病変の怖さは、まさに痛みという警告サインが機能しなくなっている点にあります。患者さんの訴えだけに頼っていると、視診をしていれば気づけたはずの初期の変化を見逃してしまうことがあります。

このことを知らないと、「本人が何も言わないから大丈夫」と思っていたら、実は靴下の下で潰瘍が進行していた……というケースに気づけないことがあります。訴えの有無に関わらず、ケアのたびに必ず足を見るという習慣を持つと、早期発見につながる可能性が大きく変わってきます

もう一つ、新人さんが混同しやすいのが、創部の発赤を見て「感染している」と即断してしまい、シャルコー関節症の可能性を考慮しないことです。急性期のシャルコー関節症も発赤や熱感を伴うため、感染との鑑別が難しい場面がありますが、この可能性を知っているだけで、医師への報告時に「感染だけでなくシャルコー関節症の可能性も考慮していただけますか」という一歩踏み込んだ提案ができるようになります。

胼胝を「ただの硬い部分」として軽視してしまう新人さんも多いです。ですが、胼胝は圧迫が繰り返しかかっている部位を示す重要なサインであり、その下に潰瘍が隠れていることもあるという病態の理解があると、胼胝を見た瞬間に「この部位の圧迫を減らすには何が必要か」という具体的なケアの発想に切り替えやすくなると思いますよ。


参考資料

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