Ⅱ型糖尿病について

II型糖尿病について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

内科病棟はもちろん、術前検査で偶然HbA1cの高値が発覚した外科患者さん、透析導入間近の腎臓内科の患者さん、あるいは足壊疽で入院してきた患者さん・・・
2型糖尿病は、実質どの科に配属されても必ず関わることになる疾患だと思います。「よくある生活習慣病」という認識が独り歩きしてしまい、インスリン抵抗性という病態の本質や、じわじわと進行する血管障害の怖さが、患者さん本人にも、時には対応する側のスタッフにも十分に伝わっていないケースを多く見てきました。

今日はこの2型糖尿病を、単なる「血糖が高い病気」ではなく、全身の血管を静かに侵していく慢性疾患という視点から紹介していきます。


目次

サクッと復習!疾患の概要

2型糖尿病は、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)とインスリン分泌不全が組み合わさることで、慢性的な高血糖状態が持続する疾患です。1型糖尿病がβ細胞の破壊によるインスリンの絶対的欠乏であるのに対し、2型糖尿病はインスリンが分泌されていても効果が十分に発揮されない「相対的なインスリン作用不足という点が病態の核になります。

原因としては、遺伝的な素因に加え、過食・運動不足による内臓脂肪の蓄積、肥満、加齢などの生活習慣的要因が複合的に関与します。内臓脂肪から分泌されるアディポサイトカインの異常(TNF-αの増加、アディポネクチンの減少など)が、インスリン抵抗性を助長するメカニズムも知られています。

症状は初期には自覚症状に乏しく、健診でのHbA1c高値や偶発的な高血糖の指摘で発見されるケースが多いのが特徴です。進行すると口渇、多飲、多尿、体重減少といった典型的な高血糖症状が出現し、慢性合併症として糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症の三大合併症、さらに動脈硬化による大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症)のリスクが高まります。

治療は、食事療法・運動療法が基本となり、それでも血糖コントロールが不十分な場合に経口血糖降下薬(ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬など)やGLP-1受容体作動薬、必要に応じてインスリン療法が導入されます。


観察ポイント&根拠

観察項目観察ポイント根拠・予測
足部の皮膚状態(フットチェック)足背・足底の皮膚の乾燥・亀裂の有無、胼胝(うおのめ)や鶏眼、爪の肥厚・変色を、靴下を脱いだ状態で直接視診・触診する。下肢の冷感や足背動脈の触知の有無も併せて確認する。糖尿病性神経障害による感覚鈍麻と、動脈硬化による末梢循環不全が組み合わさることで、患者さん自身が気づかないうちに小さな傷が壊疽まで進行するリスクがあります。「痛みの訴えがないから問題ない」ではなく、「痛みを感じられないこと自体がリスクである」という視点を持つことが重要です。
HbA1cと血糖値のトレンド(グリコアルブミンとの違いも含む)HbA1cは過去1〜2ヶ月の平均血糖を反映する指標であることを踏まえ、直近の血糖自己測定値だけでなく、数ヶ月単位のHbA1cの推移をグラフ化して評価する。急性の血糖変動を見たい場合はグリコアルブミンやCGMデータも併用する。HbA1cは赤血球の寿命(約120日)に依存する指標のため、直近数日の食事の乱れだけでは大きく変動しません。「今日の血糖が高いからHbA1cも悪いはず」という短絡的な判断ではなく、長期的なコントロール状況と直近の変動を分けて評価する視点が、患者さんへの説明の精度を上げます。
尿蛋白・eGFRの推移(糖尿病性腎症の進行度評価)尿検査での微量アルブミン尿の有無、血液検査でのeGFR(推算糸球体濾過量)の経時的な低下傾向を確認する。糖尿病性腎症は、微量アルブミン尿の出現が早期腎症の最初のサインとされています。eGFRが急激に低下している場合は、腎症の進行だけでなく、造影剤使用歴やNSAIDs内服など腎機能に影響する他因子との重複がないかも併せて確認する視点が必要です。
視力低下・眼症状の訴え(糖尿病性網膜症)「視界がかすむ」「物が二重に見える」といった訴えの有無を問診で確認し、眼科受診(眼底検査)の受診間隔が空いていないかをカルテで確認する。糖尿病性網膜症は初期には自覚症状がほとんどなく、増殖網膜症まで進行してから急激な視力低下を自覚するケースが多い病態です。自覚症状の有無だけで安心せず、「定期受診が途切れていないか」という管理状況そのものをアセスメントする視点が、重症化予防に繋がります。
低血糖症状の有無(薬剤調整中・シックデイ時)SU剤やインスリンを使用している患者さんでは、冷汗、振戦、動悸といった典型的な低血糖症状だけでなく、高齢者では非典型的な症状(脱力感、ぼんやりした様子)が出現していないかを確認する。2型糖尿病患者さんの多くは高齢者であり、加齢に伴う自律神経反応の低下により、典型的な低血糖症状が出現しにくい(無自覚性低血糖)ことがあります。「症状がないから低血糖ではない」と判断せず、内服薬やインスリンの種類・作用時間から低血糖のリスクタイミングを予測しておく視点が必要です。

もし患者さんからこう言われたら、あなたはどうする?

外来通院が長期化している2型糖尿病の患者さんから、「もう長年の病気だから、今さら生活を変えても仕方ないですよね」とよく聞かれる言葉です。この言葉をそのまま受け止めて「そうですね」で終わらせてしまうと、患者さんの自己管理への意欲がさらに下がってしまうリスクがあります。

言葉の裏のニード
「長年頑張ってきたけれど、なかなか結果が出なかった」という疲労感や諦めの気持ちと、「今さら何をしても遅いのではないか」という自己効力感の低下が隠れているケースが多いです。ここで正論を突きつけるのではなく、患者さんの努力そのものを認めながら、「今からでも変化が期待できる部分」を具体的に示すことが有効です。

患者さん:「もう長年の病気だから、今さら生活を変えても仕方ないですよね」

看護師:「長い間、本当に大変な思いをされてきたんですね。実は、糖尿病の場合、今日からの食事や運動の工夫が、数ヶ月後の血糖の値にちゃんと反映されてくるんですよ。例えば、今飲んでいるお茶をお水に変えるくらいの小さなことからでも、変化が出てくることがあります」

患者さん:「そんな小さなことでも、意味があるんですか」

このように、「今までの努力を否定せず、これから取り組める具体的で小さな一歩を提示する」ことで、患者さんは「まだ自分にもできることがあるかもしれない」という気持ちを持ちやすくなります。大きな目標を掲げるのではなく、「次の外来までに、これだけやってみましょう」という小さなゴール設定にすると、患者さんの負担感を減らしながら、行動変容のきっかけを作れますよ。


現場で差がつく看護のコツ

工夫・アイデア具体的な方法それによる効果
食事療法指導は「制限」ではなく「置き換え」で伝える「〇〇を食べてはいけません」ではなく、「この食材をこちらに置き換えると、糖質量がこのくらい抑えられますよ」と、具体的な置き換え例を示しながら説明する。「禁止」という表現は、患者さんに強い抑圧感を与え、かえって隠れて食べる、指導そのものを避けるといった行動に繋がりやすい傾向があります。「置き換え」という表現は選択の自由を残しつつ、行動変容を促しやすくなります
インスリン注射導入時の「痛みの誤解」を解く説明注射針の実物を見せながら、「思っているより痛みは少ないことが多いですよ」と、実際に自分の手技で見本を示す。インスリン注射導入への抵抗感の多くは、「痛い」という漠然としたイメージによる心理的バリアが原因です。視覚的・体験的な情報提供により、その誤解を解消することが導入のスムーズさに直結します。
フットケアの「自己チェック習慣化」の工夫患者さんに、「毎晩、靴下を脱いだタイミングで足の裏を鏡でチェックする」という具体的な行動をルーティンとして提案する。フットチェックを「特別な医療的行為」ではなく、「毎日の生活動作の中に組み込む」ことで、継続しやすくなります。傷や潰瘍の早期発見という目的を、患者さん自身が主体的に担えるようになる工夫です。
薬剤の作用時間を「生活のタイムライン」に合わせて説明する「食後血糖を抑える薬です」だけでなく、「この薬は、お食事を始めてから何分後くらいに効果が出てくるので、食事の最初の一口を目安に飲んでくださいね」と、患者さんの生活動作に紐づけて説明する。薬理学的な説明だけでは、患者さんが実際の服薬タイミングを生活の中でイメージしにくいことがあります。生活動作と結びつけた説明は、アドヒアランス向上に直結する具体性を持ちます

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人さんが陥りがちなのが、「血糖値やHbA1cの数値だけを見て、患者さんの生活背景まで踏み込んで考えられない」ことです。

「HbA1cが8%だから、コントロール不良ですね」と、数値だけを見て評価すること自体は間違っていません。ただ、「なぜこの数値になっているのか」という背景(食事内容、勤務形態による食事時間の不規則さ、独居で調理が難しい環境など)まで掘り下げて考える視点がないと、指導内容が的外れになってしまうことがあります。夜勤の多い患者さんに「決まった時間に3食規則正しく」と指導しても、生活実態と合わなければ実行不可能な指導になってしまいますよね。

新人の頃は、検査データという「結果」を見て、そこから直接指導内容を考えてしまいがちですが、「この結果に至った生活背景は何か」を一度患者さんに聞いてみるという一手間を加えるだけで、指導の的確さが大きく変わってきます。

数値の向こう側にある患者さんの日常生活まで想像を広げてみると、糖尿病看護の面白さが見えてくるはずですよ。


参考資料

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