【言い逃げ厳禁!】必ず復唱を!

【看護師あるある】医師からの口頭指示ミスを防ぐ!電話指示の恐怖と対策

「はい、〇〇病棟の看護師、△△です。□□さんのことでご相談です」
『あ、□□さんね。じゃあ、ラシックス20mgを静注でお願い』
「かしこ…(ツー、ツー、ツー)」

…え、今なんて言った?ラシックス「20」だよね…?「40」じゃないよね…?

こんな経験、ありませんか? 私は中堅と呼ばれる立場になりましたが、今でも緊急時の医師からの電話指示には、背中に冷たい汗が流れることがあります。特に夜勤帯や緊急入院が重なった時など、緊迫した状況での口頭指示は、医療過誤につながりかねない重大なリスクをはらんでいます。

今回は、多くの看護師が一度はヒヤッとしたであろう「医師からの口頭指示」、特に聞き間違いや思い込みによる投薬ミスをテーマに、私の反省点も交えながら、明日から実践できる具体的な対策を解説します。


なぜ口頭指示のミスは起こるのか?

そもそも、なぜ口頭指示でミスが起きてしまうのでしょうか。原因は一つではありません。

聞き間違い
電話越しの声は、電波状況や周囲の騒音で不明瞭になりがちです。「シ」と「ヒ」、「10(じゅう)」と「20(にじゅう)」など、似た音の薬剤名や単位の聞き間違いは後を絶ちません。
思い込み
緊急時や多忙な状況下では、「おそらくこうだろう」「いつもこの量だから」という無意識の思い込み(正常性バイアス)が働きやすくなります。医師が投与量を言い忘れた際に、自分で勝手に補完してしまうケースもこれにあたります。
焦りとプレッシャー
「早く対応しないと」という焦りや、「何度も聞き返したら怒られるかも」というプレッシャーから、不明な点を確認できないまま電話を切ってしまうことがあります。
メモが取れない状況
患者さんのケアをしている真っ最中に電話を受け、メモを取る余裕がないまま記憶に頼ってしまうことも、ミスの大きな原因です。

私自身も、新人時代に夜勤で医師から電話指示を受けた際、あまりの忙しさにメモを取らず、「大丈夫、覚えていられる」と過信してしまいました。しかし、処置が終わった後、いざ実施しようとした段階で「あれ、何mgだったっけ…?」と不安に。結局、もう一度電話をかけ直すことになり、医師に少し呆れられたような声で「だから復唱してって言ったでしょ」と言われ、ひどく落ち込んだ経験があります。

あの時の「ヒヤリ」とした感覚と、患者さんを危険に晒しかねなかったという反省は、今でも私の心に深く刻まれています。


致命的なミスを防ぐための鉄則4か条

では、どうすればこのようなミスを防げるのでしょうか。基本中の基本ですが、以下の4つを徹底することが、自分自身と患者さんを守る何よりの盾になります。

① その場で必ず復唱する

これは口頭指示における絶対的なルールです。

「ラシックス20mg、静脈注射ですね?」 「はい、復唱します。〇〇様へ、ラシックスを20mg、静脈注射でよろしいでしょうか?」

このように、薬剤名・投与量・投与方法・対象患者をセットにして、自分の言葉で繰り返します。もし医師がすぐに電話を切ろうとしても、「先生、復唱しますのでお待ちください!」と、一言制止してでも実行する勇気を持ちましょう。

② どんなに忙しくてもメモを取る

「記憶は記録に勝てない」。これは看護の現場における真理です。ペンがなければ、近くの誰かに借りる。紙がなければ、手の甲に書く(推奨はしませんが、緊急避難的にはやむを得ない場合も)。とにかく文字として残す癖をつけましょう。PHSやスマートフォンを持ちながらであれば、スピーカー機能にして両手を使えるようにするのも一つの手です。

③ 聞き取れなかったら、勇気を持って聞き返す

「申し訳ありません、電波が悪く聞き取れませんでした」 「もう一度、薬剤名をお願いいたします」

聞き返すことは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、確認を怠ることの方がプロフェッショナルとして問題です。聞き取れなかった事実を正直に伝え、明確になるまで確認しましょう。曖昧なまま進めることのほうが、はるかに危険です。

④ ダブルチェックで確実性を高める

口頭指示を受けた後は、可能であれば他の看護師にも指示内容を伝え、ダブルチェック(ダブル復唱)を徹底します。

「〇〇先生から、□□さんにラシックス20mg静注の指示が出たんだけど、間違いないか一緒に確認してくれる?」

もし自分が電話を受けていて自信がない場合、ためらわずに近くの同僚や先輩に「すみません、一緒に聞いてもらえませんか?」と助けを求めることも重要です。二人で聞けば、聞き間違いのリスクは大幅に減少します。そして、二人で復唱し、医師に確認してもらうのです。


「でも、先生がすぐに電話を切っちゃう…」

ここが一番の悩みどころですよね。特に経験豊富なベテラン医師や、多忙を極める外科系の医師の中には、指示を伝えたらすぐに電話を切ってしまう方が少なくありません。

復唱する前に電話が切れてしまったら、どうするか。

答えは一つ。「ためらわず、かけ直す」です。

かけ直すのは勇気がいりますし、少し気まずいかもしれません。しかし、その一瞬の気まずさと、投薬ミスによって患者さんに与える不利益を天秤にかけてみてください。答えは明白なはずです。

「先ほどお電話いただいた〇〇病棟の△△です。大変申し訳ありません、指示内容の復唱確認をさせていただきたく、再度お電話いたしました。」

このように丁寧に切り出せば、ほとんどの医師は「ああ、ごめんごめん」と応じてくれます。もし、そこで不機嫌になるような医師がいたとしても、それは患者さんの安全を思っての行動です。あなたは何も間違っていません。胸を張って、確認の電話をかけてください。

私の反省と、伝えたいこと

かつての私は、「忙しい先生の時間を奪ってはいけない」という気持ちが先に立ち、確認をためらうことがありました。しかし、インシデントを経験し、先輩から「あなたのその一瞬の躊躇が、患者さんの一生を左右するかもしれないんだよ」と指導されて、目が覚めました。

私たちの仕事は、医師の機嫌を取ることではありません。患者さんの安全を最優先で守ることです。

口頭指示は、医療現場においてなくすことのできないコミュニケーションの一つです。だからこそ、私たちはその危険性を常に認識し、何度でも基本に立ち返り、確認作業を「当たり前の文化」としてチームに根付かせていく必要があります。

この記事を読んでくださったあなたの「ヒヤリ」が、明日の「ハット」に繋がらないことを心から願っています。

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