尿路感染症について

尿路感染症(UTI)について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

日々の業務で、特に高齢者の患者さんにおいて「熱発の原因がわからない…」と悩んだ経験はありませんか? 肺炎でもない、創部感染でもない。そんな時に疑うべき「隠れた主役」が「尿路感染症(UTI)」です。
特に、膀胱留置カテーテル挿入中の患者さんに発生する「カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)」は、私たちの管理次第でリスクを減らせる領域でもあります。また、UTIから敗血症性ショックへ移行するスピードは想像以上に早いため、早期発見のスキルは必須です。
今回は、教科書的な知識だけでなく、「尿路感染症を見抜く・防ぐ」ための実践的な視点を紹介します。

目次

サクッと復習!疾患の概要

  • 病態: 腎臓から尿道口までの尿路に細菌が侵入し、炎症を引き起こす感染症の総称。感染部位により、上部尿路感染症(腎盂腎炎)と下部尿路感染症(膀胱炎、尿道炎)に大別されます。
  • 原因: 大腸菌(E. coli)が起因菌の約80%を占めます。侵入経路は、腸内細菌による上行性感染が最も一般的。リスク因子として、尿路結石、前立腺肥大症、神経因性膀胱による尿流停滞や、膀胱留置カテーテル留置が挙げられます。
  • 症状
    • 下部(膀胱炎): 排尿時痛、頻尿、残尿感、尿混濁。発熱は軽度か認めないことが多い。
    • 上部(腎盂腎炎): 38℃以上の高熱、悪寒戦栗(shaking chill)、CVA叩打痛(肋骨脊柱角叩打痛)、全身倦怠感。
  • 治療: 起因菌に対する抗菌薬投与が基本。重症例や尿路閉塞がある場合は、尿管ステント留置や腎瘻造設などのドレナージ処置が必要になることもあります。

観察ポイント&根拠

観察項目観察のポイント根拠・予測
尿性状の変化と「臭気」採尿バッグや尿器内の尿を観察し、混濁(cloudy)浮遊物(sediment)の有無、そして腐敗臭やアンモニア臭の増強を確認する。尿路感染の初期サインとして、細菌増殖や白血球浸潤による尿混濁が最も早く現れます。特に緑膿菌などは特有の甘酸っぱい腐敗臭を放つことがあり、「いつもと匂いが違う」という嗅覚での違和感は、発熱前の重要なアラートになります
CVA叩打痛(Costovertebral Angle Tenderness)患者さんに座位または側臥位をとってもらい、第12肋骨と脊柱の交差部(背部)を、看護師の手掌で軽く叩打し、響くような痛みがないか確認する。単なる腰痛と区別するため必須です。腎盂腎炎では腎被膜が伸展し、この部位に叩打痛が出現します。もし陽性であれば、下部尿路感染から上行性に腎臓へ炎症が波及している(=重症化している)可能性が高く、医師への報告の優先度が跳ね上がります。
意識レベルと精神状態の変調(高齢者)JCSやGCSの低下だけでなく、「なんとなくぼんやりしている」「辻褄が合わないことを言う(せん妄)」といった変化を、前日の様子と比較する。高齢者は免疫応答が低下しており、発熱や白血球上昇といった典型的な炎症反応が出にくい傾向があります。その代わりに、尿路からの細菌毒素による脳症や脱水などが影響し、急激な認知機能の低下や活動性低下(アパシー)だけが唯一の症状として現れることが多々あるからです。
バイタルサインの乖離体温上昇時に、悪寒戦栗(シバリング)があるか、そして血圧低下(収縮期血圧90mmHg以下への移行)がないかを経時的にモニタリングする。UTIからの菌血症・敗血症への移行を警戒します。特にSpO2が保たれていても血圧が低下傾向で頻脈の場合、敗血症性ショック(warm shock)の初期段階である可能性があります。この段階でlactate値(乳酸値)測定などを提案できるとベストです。

もし患者さんが「トイレが近くて眠れない」と言ったら?

夜勤中、尿路感染症で抗菌薬治療中の患者さんが、ナースコールで訴えました。
「さっき行ったばかりなのに、またトイレ行きたいの。ちっとも出ないんだけど、ムズムズして眠れないのよ…」
「膀胱炎の症状ですから仕方ないですね、お薬効くまで待ちましょう」と正論だけ伝えても、患者さんの苦痛は解決しません。

言葉の裏にあるニード
この訴えは、頻尿や尿意切迫感による身体的苦痛に加え、「排尿してもスッキリしない不快感」と「睡眠不足への焦り」が混在しています。

対応アクションと会話例

  1. 症状のメカニズムを伝え、不安を軽減する(教育)
    • 「何度も行きたくなるのは辛いですよね。これは膀胱が炎症で敏感になっていて、おしっこが少し溜まっただけでも『いっぱいだ!』と勘違いして合図を出している状態なんです。」
  2. 具体的な緩和策の提案(ケア)
    • 「下腹部(膀胱のあたり)を温めると、過敏になっている神経が少し落ち着くことがあります。温かいタオル(ホットパック)を持ってくるので、少しお腹に乗せてみませんか?」
    • ※炎症が強い急性期で熱感が著しい場合は冷やすこともありますが、膀胱刺激症状に対しては温罨法が平滑筋の緊張を和らげ、安楽につながることが多いです。
  3. 環境調整による安心感の提供
    • 「もし間に合わなくても大丈夫なように、防水シーツを敷いておきますね。ポータブルトイレもベッドのすぐ横に引き寄せておきますから、いつでも動いて大丈夫ですよ。」

現場で差がつく看護のコツ・ポイント

工夫・コツ・アイデア具体的な手技・環境調整期待される効果・メリット
陰部洗浄時の「泡パック」陰部洗浄時、石鹸を泡立ててゴシゴシ擦るのではなく、たっぷりの泡を陰部に乗せて30秒ほど待ち、優しく洗い流す方法をとる。粘膜は非常にデリケートです。ゴシゴシ洗いは微細な粘膜損傷を招き、そこが細菌の温床になります。泡の界面活性作用だけで汚れを浮かせ、愛護的に洗浄することで、粘膜のバリア機能を守りながら清潔を保持できます。
バルーンカテーテルの「固定位置」見直し大腿部への固定位置を、常に「たわみ(遊び)」を持たせた状態にし、かつテープ固定位置を毎日数センチずらす。カテーテルが突っ張ると、尿道口や膀胱頸部が常に圧迫され、粘膜損傷や虚血を引き起こします。これが感染ゲートになります。たわみを持たせることで、体動時の牽引刺激を減らし、カテーテル由来の物理的刺激による炎症を防げます。
飲水促しの「可視化」「水を飲んでください」と言うだけでなく、500mlペットボトルに「10時」「14時」「18時」とマジックでラインを引き、目安を示す。尿路感染予防の基本は「尿路の洗浄作用(Wash out)」です。漠然とした指示ではなく、「次の検温までにこの線まで飲みましょう」と具体的な目標を共有することで、患者さんの飲水アドヒアランスが向上し、尿量確保につながります。
バッグ排尿口のアルコール消毒徹底尿破棄時、排尿口をアルコール綿で拭く際、「キャップの内側」と「排出口の外側」だけでなく、終わった後に「もう一度排出口」を拭く。排尿操作は閉鎖式回路を開放する、感染原因の最大のリスク瞬間です。尿が切れた後の排出口には残尿が付着しており、そこから逆行性感染が起こります。「拭いてから閉める」を徹底するだけで、CAUTIのリスクを下げられます

新人さんが陥りやすいミスへの対策

発熱した患者さんの尿培養を提出する際、「採尿バッグに溜まっていた尿」をそのまま試験管に入れて提出しようとしたことはありませんか?
採尿バックに溜まっているのだから、提出してもいいんじゃないかと一瞬でも考えてしまいますよね。


しかし採尿バッグの中の尿は、排出されてから時間が経っており、室温で雑菌が繁殖しています。そんな尿を検査に出しても、「原因菌」なのか「ただ繁殖した雑菌」なのか、医師は判断できません。

尿培養が必要な時は、面倒でも必ず「カテーテルのサンプリングポートを消毒し、そこからシリンジで無菌的に採取した新鮮尿」を使ってください。
もしカテーテルが入っていない患者さんなら、可能な限り「中間尿(出始めと終わりを捨てた尿)」を採取するよう介助しましょう。

正しい検体採取は、正しい診断の第一歩。「とりあえず採ればいい」ではなく、「この検体で患者さんの治療方針が決まるんだ」という責任感を持つと、手技の一つひとつが丁寧になりますよ。

参考資料
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