感覚障害について

感覚障害について|症状の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

患者さんから「足がジンジンする」「触られている感覚が鈍い」と言われたことはありませんか?
「感覚障害」と一口に言っても、脳卒中による中枢性のものから、糖尿病や化学療法による末梢性のものまで、その原因や病態は様々です。これを「痺れがあるんですね」と軽く流してしまうと、脳梗塞の超急性期サインを見逃したり、知らぬ間に深部組織損傷(DTI)などの重篤な皮膚トラブルを引き起こす原因になります。
今回は、曖昧で分かりにくい「感覚障害」の分類と、ドクターコールや日々のケアに直結する観察ポイントを紹介していきます。


目次

サクッと復習!感覚障害の概要

感覚障害は、受容器から大脳皮質に至るまでの伝導路のどこかに障害が起きることで生じます。大きく「どこがやられているか(部位)」と「どんな症状か(性質)」で分類します。

  • 部位による分類
    • 中枢神経系: 脳卒中(脳梗塞・脳出血)、脳腫瘍、脊髄損傷など。脳血管障害では「右半身全体」のように広範な片側性障害(半側感覚障害)が出やすく、脊髄疾患では特定のデルマトーム(皮膚分節)に沿った帯状の障害や、あるレベル以下の感覚脱失(ブラウン・セカール症候群など)が特徴です。
    • 末梢神経系: 糖尿病性ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、抗がん剤(オキサリプラチンやパクリタキセルなど)による末梢神経障害。手袋・靴下型(四肢末端優位)に対称性の障害が出やすいのが特徴です。
  • 症状(性質)による分類
    • 感覚鈍麻・脱失: 触覚や痛覚が鈍い、または全く感じない(マイナス症状)。
    • 過敏・異常感覚・疼痛: 軽く触れただけで激痛が走る(アロディニア)、何もしていないのにジンジン・ビリビリ痺れる、灼熱感がある(プラス症状)。
    • 感覚の要素として、表在感覚(触覚・痛覚・温度覚)と深部感覚(位置覚・振動覚)に分けて評価します。

観察ポイント&根拠

感覚は患者さんの主観によるため、客観的なツールや比較を用いて評価することがアセスメントの精度を上げる鍵になります。

観察項目観察ポイント根拠・予測
痛覚と触覚の左右差・上下差爪楊枝の尖った方(痛覚)と丸い方(触覚)を用い、閉眼させた患者の顔面・上肢・下肢を左右交互にランダムに触れ、「どちらがより強く感じますか?」と左右差を比較する。【中枢神経障害の局在診断】
「なんとなく鈍い」ではなく、明らかな左右差(半側感覚障害)が新規に出現した場合、視床や内包などの脳血管障害のサインです。顔面を含むか含まないかで、脳幹病変か大脳半球病変かの推論につながります。
深部感覚(位置覚)の評価閉眼させた状態で、患者の母指や母趾の側面を把持し、上下に動かして「今、指は上を向いていますか?下ですか?」と問いかけ、正答できるか確認する。【後索(脊髄)〜頭頂葉の伝導路評価】
位置覚が障害されていると、視覚による代償が効かない夜間に転倒リスクが跳ね上がります。「足元がフワフワする」という訴えの裏には、筋力低下ではなくこの深部感覚障害が潜んでいることがあり、夜間のポータブルトイレ誘導時の見守り強化の根拠となります。
デルマトーム(皮膚分節)に沿った評価脊椎疾患や硬膜外麻酔術後の患者に対し、アルコール綿で皮膚を擦り、冷覚(温度覚)がどの高さ(Th4なら乳頭レベル、Th10なら臍レベルなど)まで保たれているかマーキングして推移を追う。【脊髄レベルの障害範囲の特定と麻酔効力の判定】
温度覚と痛覚の伝導路(脊髄視床路)は並走しているため、アルコール綿の冷たさが分かるか(冷覚脱失域の確認)で、脊髄のどのレベルに障害があるか、または麻酔がどこまで効いているかを簡便かつ正確に評価できます。

もし患者さんからこのように症状が聞かれたら?

患者さんが「足の裏に一枚紙が貼り付いているみたいで気持ち悪い」と言ったら、あなたならどうしますか?
これは、糖尿病の既往歴が長い患者さんや、化学療法中の患者さんからよく聞かれる訴えです。

言葉の裏にあるニードと病態
これは典型的な「異常感覚(錯感覚)」の訴えです。末梢神経障害が進行し、足底の感覚が鈍麻していると同時に、不快な痺れが混在しています。患者さんは不快感だけでなく、「このまま歩けなくなるのでは」という不安を抱えており、また、感覚が鈍いことで靴擦れや熱傷(湯たんぽなど)に気づかず、重症な足病変(壊疽など)に進行するリスクを孕んでいます。

対応アクションと会話例

  • NG: 「糖尿病だから仕方ないですね。気をつけて歩いてください」
  • OK: 「足の裏に違和感があると、歩く時にフワフワして怖いですよね。末梢神経の働きが少し落ちているサインかもしれません。感覚が鈍くなっていると、気づかないうちに傷ができたり火傷したりしやすいので、毎日足を洗う時に鏡を使って足の裏に傷や赤み(発赤)がないか一緒に確認しましょうね。保湿剤もこまめに塗りましょう」
    • 不安に共感しつつ、足病変予防(フットケア)という具体的なセルフケア指導へ繋げます。

現場で差がつく看護のコツ・ポイント

工夫・コツ・アイデア具体的な手技・環境調整期待される効果・メリット
温罨法や保冷剤使用時の温度管理の徹底湯たんぽやアイスノンを使用する際、必ず看護師自身の手首の内側で温度を確かめ、タオルで二重に包んで直接肌に触れないようにし、1時間ごとに皮膚の発赤や白斑がないか視診する。温痛覚が脱失している患者は、熱さや冷たさによる痛みを自覚できません。知らぬ間に深達度の高い低温熱傷や凍傷を引き起こすという、医原性のインシデントを未然に防ぎます。
患側からのアプローチと視覚的代償の促進半側空間無視を伴うような感覚障害の患者に対し、食事の配膳や声かけをあえて健側から行いつつ、患側の下肢が車椅子のフットレストから落ちていないか「目で見て確認する」よう声かけを反復する。自分の身体の半分が「ない」ように感じている場合、患側が柵に挟まったり車椅子の車輪に巻き込まれたりするリスクがあります。視覚で代償する習慣づけが、最大の安全対策になります。
アロディニア(異痛症)患者への接触の工夫寝衣交換や清拭時、布が擦れるような軽い接触(さするような触り方)は避け、手のひら全体で面として「しっかり圧をかけて」ホールドするように触れる。アロディニアの患者は、微小な触覚刺激を「激痛」として脳が誤認します。指先で軽く触れるのではなく、面でしっかり触れることで痛みの誘発を軽減でき、ケア時の苦痛と拒否を減らすことができます。

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人の頃は、バイタルサインの測定やドレーン管理に必死で、「感覚が鈍い」という主観的な訴えは、ついアセスメントの優先順位を下げてしまいがちですよね。
「手足が痺れるって言ってるけど、バイタルは問題ないし、まあいっか」と申し送りをスルーしてしまい、数時間後に先輩から「それ、脳梗塞の初期症状だったかもしれないじゃない!なんでその時に麻痺の有無や左右差を確認しなかったの!?」と指導を受けた経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。

感覚障害は、目に見えないからこそ「患者さんの言葉」と「客観的な評価(左右差やデルマトームの確認)」をセットにして初めて、医師を動かす強力なSBAR報告になります。

あずかん

目に見えないサインを拾い上げる、「この痺れの裏に、どんな病態が隠れているだろう?」と予測しながら触れることで、あなたのアセスメントは劇的に深まります。


参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次