統合失調症について

統合失調症について徹底解説

あずかん

統合失調症は、精神科領域で出会うことの多い疾患の一つです。しかし、その症状の多様性から、関わり方に悩む看護師さんも少なくありません。この記事では、統合失調症の基本的な知識から、看護のポイントまでを分かりやすく解説します。


目次

統合失調症の病態生理

現在のところ、統合失調症の病態生理は完全には解明されていません。しかし、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが関係しているという説が有力です。

特に、ドーパミンという神経伝達物質が、脳内で過剰に活動することが、幻覚や妄想といった陽性症状(後述)の主な原因と考えられています(ドーパミン仮説。現在使用されている抗精神病薬の多くは、このドーパミンの働きを調整する作用を持っています。

また、ドーパミンだけでなく、セロトニングルタミン酸といった他の神経伝達物質の関与も指摘されています。グルタミン酸系の機能低下が、陰性症状や認知機能障害に関わっているという研究も進んでおり、複雑な要因が絡み合って発症すると考えられています。


統合失調症の原因

統合失調症の単一の原因は特定されていません。遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。これを脆弱性ーストレスモデルと呼び、以下の要因が重なったときに、発症の引き金が引かれると考えられています。

遺伝的要因
家族に統合失調症の方がいる場合、いない場合に比べて発症リスクが高まることが知られています。しかし、遺伝だけで発症するわけではありません。

環境的要因
心理的ストレス: 進学、就職、人間関係のトラブルなど、人生の大きな変化や強いストレスが発症のきっかけとなることがあります。
周産期のトラブル: 出生時の低酸素状態などが挙げられます。

その他:
都市部での生活、薬物乱用などもリスク因子として挙げられています。


統合失調症の主な症状

統合失調症の症状は、大きく3つに分けられます。

陽性症状

本来あるはずのないものが現れる症状です。健康な時にはなかった状態が出現するため、周囲が気づきやすいのが特徴です。

  • 幻覚
    最も多いのは、自分の悪口や噂、命令などが聞こえてくる幻聴です。誰もいないのに人の声が聞こえる、といった症状です。
  • 妄想
    「自分は常に誰かに監視されている(注察妄想)」「周りの人が自分の悪口を言っている(関係妄想)」「悪意のある組織に命を狙われている(被害妄想)」など、明らかに事実とは異なることを強く確信してしまう症状です。
  • 思考の混乱(連合弛緩)
    考えがまとまらず、会話に一貫性がなくなります。話が飛んだり、つじつまが合わなくなったりするため、コミュニケーションが難しくなることがあります。

陰性症状

本来あるはずのものが失われる症状です。感情の起伏が乏しくなったり、意欲が低下したりします。

  • 感情の平板化
    喜んだり怒ったりといった感情表現が乏しくなり、表情が硬く、声のトーンも単調になります。
  • 意欲の低下(無為)
    何かをする気力が湧かず、入浴や着替えといった身の回りのことにも関心がなくなってしまいます。一日中ぼーっと過ごすこともあります。
  • 思考の貧困
    会話の数が減り、内容も乏しくなります。質問に対する返答も、単語のみになることがあります。

認知機能障害

記憶力、注意力、判断力などが低下する症状です。日常生活や社会生活に大きな影響を与えます。

  • 注意・集中力の低下:
    集中力が続かず、本を読んだり、テレビを見たりすることが難しくなります。
  • 遂行機能障害:
    計画を立てて物事を実行することが苦手になります。例えば、料理の手順を考えたり、買い物の計画を立てたりすることが困難になります。

治療・対症療法

薬物療法

治療の中心となるのが抗精神病薬です。主に陽性症状を改善する効果が期待できます。ドーパミンの過剰な働きを抑えることで、幻覚や妄想を和らげます。

近年では、副作用が比較的少ない非定型抗精神病薬が第一選択薬として使われることが多くなっています。副作用には、眠気、体重増加、血糖値の上昇、錐体外路症状(手の震え、体のこわばりなど)があります。副作用のモニタリングとケアも看護師の重要な役割です。

心理社会的療法

薬物療法と並行して、患者の社会生活機能の回復をサポートします。

  • 心理教育
    患者やその家族が、病気について正しく理解し、付き合い方を学ぶためのプログラムです。再発予防に繋がります。
  • 社会生活技能訓練(SST)
    対人関係やストレス対処など、社会生活で必要となるスキルを、ロールプレイングなどを通じて練習します。
  • 作業療法
    手芸やスポーツなどの作業活動を通して、心身機能の回復や対人関係の改善を目指します。

看護のポイント

信頼関係の構築

患者は、幻覚や妄想の世界の中で、強い不安や恐怖を感じています。まずはその苦痛に寄り添い、安心できる環境を提供することが第一歩です。「つらいですね」「不安ですよね」と、患者の感情を受け止め、受容的な態度で関わることが大切です。

症状への対応:肯定も否定もしない

患者が幻聴や妄想について話された時、それを「そんなことはない」と否定したり、「私も聞こえます」と肯定したりするのは避けましょう。否定は患者との関係を損ない、肯定は症状を強めてしまう可能性があります。

「あなたにはそう聞こえる(思える)のですね」と、患者の体験そのものは受け止めつつ、現実との違いを曖昧にしない対応(現実検討を促す関わり)が基本です。

分かりやすく、具体的なコミュニケーションを心がける

認知機能障害の影響で、一度に多くの情報を処理したり、抽象的な表現を理解したりするのが難しい場合があります。

  • 短い文章で、ゆっくりと話す
  • 具体的な言葉を選ぶ(「あれ取って」ではなく「テーブルの上のコップを取ってください」)
  • 一度に伝える指示は一つにする

このような工夫で、患者の混乱を軽減できます。

意欲低下(無為)への関わり

無理強いは禁物です。患者のペースを尊重し、休息も治療の一部であると理解することが重要です。まずは「一緒に少しだけ散歩しませんか?」など、ごく小さなことから誘ってみましょう。患者ができたことを評価し、自己効力感を高める支援を心がけます。

薬物療法の支援と副作用の観察

処方された薬を患者が確実に服用できるようサポートします(服薬コンプライアンスの維持)。なぜ薬が必要なのかを根気強く説明したり、飲み忘れを防ぐ工夫を一緒に考えたりします。

また、錐体外路症状、悪性症候群、体重増加、血糖値上昇などの副作用が出ていないか、バイタルサインや採血データ、日々の様子の変化を注意深く観察することも、看護師の重要な役割です。


参考資料
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