関節リウマチの病態から看護のポイントまで徹底解説
あずかん関節リウマチは、関節の痛みや腫れを主症状とする自己免疫疾患であり、進行すると関節破壊や機能障害をきたす可能性があります。看護師として、患者さんの身体的・精神的苦痛を理解し、適切なケアを提供するためには、疾患に関する深い知識が不可欠です。
この記事では、関節リウマチの病態生理から原因、症状、治療法、看護のポイントまで、詳しく解説します。
なぜ関節で炎症が起こるのか
関節リウマチは、免疫系の異常により、自分自身の関節組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」です。
本来、免疫は細菌やウイルスなどの外敵から体を守るためのシステムですが、関節リウマチではこのシステムが誤作動を起こします。免疫細胞(T細胞、B細胞など)が活性化し、サイトカイン(TNF-α、IL-6など)と呼ばれる炎症を引き起こす物質を過剰に産生します。
これらのサイトカインが関節を覆う滑膜を標的にし、滑膜に炎症と増殖をもたらします。これを滑膜炎と呼びます。
滑膜炎が続くと、増殖した滑膜組織が関節軟骨や骨を破壊し始めます。この破壊が進行することで、関節の変形や機能障害(動かしにくさ)が生じるのです。この炎症は関節だけでなく、全身に影響を及ぼすこともあります。
何が引き金になるのか
関節リウマチの明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。
遺伝的要因
特定のHLA(ヒト白血球抗原)の型を持つ人は、関節リウマチを発症しやすいことが知られています。ただし、遺伝的要因だけで発症するわけではありません。
環境要因
喫煙
最も関連が強いとされる環境要因です。喫煙は免疫系に影響を与え、発症リスクを高めるだけでなく、症状を悪化させる可能性も指摘されています。
歯周病
歯周病菌が免疫の異常を引き起こす一因となる可能性が研究で示唆されています。
ウイルスや細菌の感染
特定の感染症が、免疫系の誤作動を引き起こすきっかけになるのではないかと考えられています。
これらの要因が複雑に絡み合い、免疫の異常を引き起こすことで発症すると考えられています。
関節と全身にあらわれるサイン
関節リウマチの症状は、主に関節症状と全身症状に分けられます。
関節症状
- 朝のこわばり:起床時に手や指の関節が動かしにくく、こわばる感じがします。この症状が1時間以上続くのが特徴的です。
- 多発性の関節炎:複数の関節(特に手指、手首、足指の関節など)が同時に対称的に腫れて痛みます。
- 関節の変形:進行すると、指が外側に向く「尺側偏位」や、指の関節が特徴的な形になる「ボタン穴変形」「スワンネック変形」などが生じます。
全身症状
- 微熱、倦怠感、食欲不振、体重減少などが現れることがあります。
- リウマトイド結節:肘や後頭部など、圧力がかかりやすい部位の皮下にできる硬いこぶです。
- 間質性肺炎:肺が硬くなる合併症で、空咳や息切れなどの症状が出ます。
- 血管炎:血管に炎症が起こり、皮膚の潰瘍や末梢神経障害などを引き起こすことがあります。
治療・対症療法
関節リウマチ治療の目標は、炎症を完全に抑えて症状をなくし、関節破壊の進行を防ぐ「寛解」です。早期診断・早期治療が非常に重要です。
薬物療法
薬物療法が治療の中心となります。
- 抗リウマチ薬(DMARDs)
- メトトレキサート(MTX):第一選択薬として最も広く使用される中心的な薬剤です。免疫の異常な働きを抑え、関節の炎症と破壊を抑制します。
- その他:サラゾスルファピリジン、ブシラミンなど
- 生物学的製剤
- 特定のサイトカイン(TNF-α、IL-6など)の働きをピンポイントで阻害する薬剤です。MTXで効果不十分な場合に用いられ、非常に高い効果が期待できます。点滴または皮下注射で投与します。
- JAK阻害薬
- 免疫細胞内の炎症シグナルを伝達するJAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素を阻害する内服薬です。生物学的製剤と同等の効果が期待できます。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- 痛みや炎症を和らげる対症療法として使用されます。
- ステロイド
- 強力な抗炎症作用があり、症状が強い場合に短期間使用します。長期使用は副作用のリスクがあるため慎重に用いられます。
リハビリテーション
薬物療法と並行して、関節の機能維持・向上のために行います。
- 理学療法:運動療法により、関節の可動域の維持や筋力の強化を目指します。
- 作業療法:自助具の活用や日常生活動作(ADL)の工夫について指導し、QOLの向上を支援します。
手術療法
薬物療法やリハビリテーションで十分な効果が得られず、関節破壊が進行してしまった場合には、手術が検討されます。
- 滑膜切除術:増殖した滑膜を切除し、痛みや腫れを和らげます。
- 人工関節置換術:破壊された関節を人工の関節に置き換える手術です。
看護のポイント
疼痛管理とセルフケア支援
- 痛みの評価:VASなどを用いて痛みの程度を客観的に評価し、鎮痛薬の効果を確認します。
- 安楽な体位の工夫:クッションなどを用いて関節への負担が少ない体位を保てるよう支援します。
- 保温と休息:関節を温めることで痛みが和らぐことがあります。また、活動と休息のバランスが取れるよう指導します。
薬物療法の継続支援
- 副作用のモニタリング
- 特にメトトレキサートでは口内炎、吐き気、肝機能障害、骨髄抑制などが、生物学的製剤やJAK阻害薬では感染症のリスクがあります。これらの初期症状に注意し、患者からの訴えに耳を傾けることが重要です。
- 服薬指導とアドヒアランスの向上
- 治療効果を最大化するため、決められた用法・用量を守ることの重要性を丁寧に説明します。特に自己注射を行う患者には、手技の確認や不安の傾聴を行います。
ADLの維持・向上
- 関節保護の指導
- 特定の関節に負担が集中しないような動作の工夫(例:重い物を持つときは片手でなく両手で、手のひら全体を使う)を指導します。
- 自助具の紹介
- ボタンエイド、ソックスエイド、長柄ブラシなど、ADLを助ける自助具の活用を提案します。
精神的・心理的サポート
- 不安や抑うつの傾聴
- 痛みや将来への不安から、抑うつ状態になる患者も少なくありません。患者の言葉に耳を傾け、感情を表出できるような関わりを持ちます。
- エンパワーメント
- 患者が自身の疾患や治療について正しく理解し、主体的に治療に参加できるよう(セルフマネジメント)支援します。
感染対策の徹底
生物学的製剤やJAK阻害薬、ステロイドなどを使用している患者は、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなります(易感染状態)。手洗いやうがい、人混みを避けるなどの基本的な感染対策の重要性を繰り返し指導することが不可欠です。