パーキンソン症候群について

パーキンソン症候群とは|パーキンソン病との違いと看護のポイントを徹底解説

あずかん

「手の震え」「動作が遅くなる」といったパーキンソニズムが見られる患者さんを担当することは少なくありません。しかし、そのすべてが「パーキンソン病」であるとは限らないことをご存知でしょうか?
この記事では、パーキンソン症候群パーキンソン病の違いを明確にし、病態生理から看護実践のポイントまでを詳しく解説します。

目次

パーキンソン症候群とパーキンソン病

まず大前提として言葉の整理が必要です。
パーキンソン症候群(Parkinsonism)とは、以下の4大徴候のいずれか(あるいは複数)を呈する状態の「総称」です。

振戦(手足の震え)
無動・寡動(動きが遅い・少ない)
筋強剛(筋肉のこわばり)
姿勢反射障害(転びやすい)

この「パーキンソン症候群」という大きな枠組みの中に、原因が明確な疾患や、原因不明の変性疾患が含まれます。

パーキンソン病: パーキンソン症候群の約80%を占める。原因不明で黒質の変性が起こるもの。
パーキンソン症候群(広義): パーキンソン病「以外」の原因でパーキンソニズムを呈するもの。

臨床では、一般的に「パーキンソン病以外の原因によるもの」を指して「パーキンソン症候群」と呼ぶことが多いです。

パーキンソン症候群とは

パーキンソン症候群の病態は、原因疾患によって異なりますが、共通しているのは「大脳基底核の障害」です。

  1. 大脳基底核の機能不全
    • 運動の調節を行う大脳基底核(線条体、淡蒼球、視床下核、黒質)の神経回路に障害が生じます。
  2. ドパミンの枯渇または受容体障害
    • パーキンソン病: 黒質からのドパミン分泌が減少する。
    • その他のパーキンソン症候群: ドパミンそのものは出ていても、受け取る側の「受容体」が壊れていたり、ドパミン以外の神経伝達物質系(アセチルコリン系やノルアドレナリン系など)も広範囲に障害されていたりします。

【ここが違いのポイント】
パーキンソン病はドパミン不足が主病態であるため、L-ドパ(レボドパ)製剤が著効します。一方、その他のパーキンソン症候群は、受容体自体が変性していることが多く、L-ドパが効きにくい(反応性が低い)という特徴があります。


パーキンソン症候群の原因

脳血管性パーキンソン症候群

脳梗塞や脳出血、特に多発性ラクナ梗塞などが大脳基底核周辺で起こることで発症します。

  • 特徴: 下半身に症状が強く出る(lower body parkinsonism)。歩行障害は目立つが、上肢の震えは少ないことが多いです。

薬剤性パーキンソン症候群

ドパミン受容体を遮断する作用を持つ薬剤の副作用として発症します。

  • 原因薬剤: 抗精神病薬(ハロペリドール等)、制吐剤(メトクロプラミド等)、抗うつ薬など。
  • 特徴: 服用開始から数週間〜数ヶ月で発症。左右差がなく、両側に症状が出ることが多いです。

神経変性疾患(非定型パーキンソニズム)

脳の神経細胞が変性・脱落する難病です。進行が早く、予後不良なものが多いです。

  • 進行性核上性麻痺(PSP): 易転倒性、眼球運動障害(特に下方視ができなくなる)が特徴。
  • 大脳皮質基底核変性症(CBD): 著しい左右差、失行(手を使えない)、他人の手徴候などが特徴。
  • 多系統萎縮症(MSA): 自律神経障害(起立性低血圧、排尿障害)や小脳失調を合併する。

パーキンソン症候群の症状

基本となる4大徴候に加え、パーキンソン病と見分けるための「プラスアルファの症状」に注目します。

症状パーキンソン病その他のパーキンソン症候群
振戦安静時振戦(丸薬丸め運動)が特徴的姿勢時振戦や動作時振戦が多い。安静時振戦は少ない
左右差発症時は片側から始まることが多い(N字型進行)左右差が少ない(対称性)ことが多い(CBDを除く)
進行速度比較的緩やか(年単位)比較的早い(月〜年単位)
自律神経症状便秘などはあるが、早期の排尿障害は少ない早期から重篤な排尿障害、起立性低血圧が出現しやすい(特にMSA)
認知機能晩期に出現することがある早期から認知機能低下が見られることがある
L-ドパ反応良好(ハネムーン期がある)不良(効きにくい、すぐ効かなくなる)

治療・対症療法

パーキンソン症候群の治療は、原因疾患へのアプローチと症状緩和が中心となります。

  1. 薬物療法(対症療法)
    • L-ドパ療法: まずは試みますが、効果は限定的です。
    • 原因薬剤の中止: 薬剤性の場合は、原因薬を中止・変更することで改善が見込めます。
    • 脳血管障害の予防: 脳血管性の場合は、抗血小板薬や血圧管理を行い、再発を防ぎます。
  2. リハビリテーション
    • 薬物療法の効果が薄いため、リハビリの重要性が非常に高いです。
    • 拘縮予防、歩行訓練、嚥下訓練などを継続します。
  3. 外科的治療(DBSなど)
    • パーキンソン病には有効な脳深部刺激療法(DBS)ですが、その他のパーキンソン症候群(特に多系統萎縮症など)には適応とならない、あるいは効果が乏しいことが一般的です。

看護のポイント

転倒・転落の予防(すくみ足・突進現象)

進行性核上性麻痺などでは、「すくみ足」や「易転倒性」が早期から出現します。

  • 環境整備: 動線の障害物を除く、手すりの設置。
  • 動作指導: 「い・ち・に」と声をかけてリズムをとる視覚・聴覚キューイングの活用。方向転換時は大回りをするよう指導します。

嚥下障害と誤嚥性肺炎の予防

パーキンソン症候群では、首の筋肉の固縮や反射の低下により、早期から嚥下機能が低下します。

  • 食事形態の工夫: きざみ食やとろみの調整。
  • 姿勢保持: 頸部が後屈しやすい(特にPSP)ため、顎を引く姿勢(Chin down)が取れるようポジショニングを調整します。

自律神経症状へのケア(排尿障害・起立性低血圧)

多系統萎縮症などでは、失神レベルの起立性低血圧や、尿閉・頻尿が問題になります。

  • 起立性低血圧: 起床時は時間をかけて起き上がる(ギャッジアップで段階的に)。弾性ストッキングの着用。
  • 排尿管理: 残尿測定を定期的に行い、尿路感染を予防します。自己導尿の指導が必要になる場合もあります。

精神的サポートと家族ケア

病状の進行が早く、治療法が確立されていない疾患も多いため、患者・家族の不安は計り知れません。

  • 受容の過程に寄り添い、在宅療養への移行や社会資源(難病申請など)の活用について、MSWやケアマネジャーと連携することが不可欠です。
参考資料
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