易感染状態の観察項目とアセスメントのポイントについて徹底解説!

今回は、特に注意が必要な「易感染状態」にある患者さんの看護について、観察項目とその根拠を分かりやすく解説します。易感染状態の患者さんは、健常な人なら問題にならないような弱い病原体でも、重篤な感染症を引き起こす可能性があります。早期に異常を発見し、適切なケアにつなげるための知識を身につけましょう。
目次
易感染状態とは
易感染状態とは、免疫力が低下し、さまざまな病原体(細菌、ウイルス、真菌など)に対する体の抵抗力が弱まっている状態を指します。背景には、以下のような要因があります。
- 疾患によるもの: 悪性腫瘍、血液疾患(白血病など)、糖尿病、肝硬変、腎不全、HIV感染症など
- 治療によるもの: 化学療法、放射線療法、ステロイド薬・免疫抑制薬の長期使用、手術など
- その他: 低栄養状態、加齢、ストレスなど
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易感染性について | ポンコツ看護師の勉強ログ
【看護師向け】易感染状態とは?原因、症状、観察項目を解説。がん化学療法や免疫抑制剤などで免疫力が低下した患者への看護のポイント(感染予防、早期発見、精神的ケア)…
観察項目とアセスメントの根拠
観察項目(WHAT) | 根拠(WHY) |
---|---|
1. 全身状態 | |
□ バイタルサイン | |
・体温(37.5℃以上、または平熱との差) | 発熱は最も一般的な感染の兆候です。ただし、免疫抑制状態では高熱が出ないこともあります。微熱や平熱からの逸脱に注意が必要です。 |
・脈拍(頻脈)、呼吸数(頻呼吸) | 感染により体の代謝が亢進し、心臓や肺に負担がかかるため、頻脈や頻呼吸が見られます。 |
・血圧(低下) | 重症な感染症(敗血症)では、血管が拡張し血圧が低下します(敗血症性ショック)。急激な血圧低下は危険なサインです。 |
・SpO2(低下) | 肺炎など呼吸器系の感染症や、重症感染による全身状態の悪化で、酸素化が悪化する可能性があります。 |
□ 意識レベル、活気、倦怠感 | 感染症による全身の炎症反応や発熱により、倦怠感が出現します。「なんとなく元気がない」「ぐったりしている」といった非特異的な症状も重要なサインです。 |
2. 局所の感染兆候 | |
□ 皮膚・粘膜(発赤、腫脹、熱感、疼痛、創部の離開、滲出液、口腔粘膜の白苔・びらん) | 皮膚は体の第一のバリアです。カテーテル刺入部、手術創、褥瘡など、皮膚のバリアが破綻している部位は感染の侵入門戸となりやすいです。発赤・腫脹・熱感・疼痛は炎症の4徴候であり、感染の典型的なサインです。口腔内は真菌(カンジダなど)の温床になりやすく、白苔の付着に注意が必要です。 |
□ 呼吸器症状(咳、痰の性状・量、呼吸困難、胸痛) | 肺炎などの呼吸器感染症を示唆します。特に痰の色(黄色、緑色など)や量の変化は重要な情報です。 |
□ 消化器症状(腹痛、下痢、嘔吐) | 消化管からの感染(腸炎など)を示唆します。特に抗菌薬投与中の患者では、偽膜性腸炎などのリスクも考慮します。 |
□ 泌尿器症状(排尿時痛、頻尿、残尿感、尿の混濁) | 尿路感染症(UTI)を示唆します。尿道カテーテル留置中の患者さんは特にハイリスクです。尿の色や性状の変化を確認します。 |
3. 検査データ | |
□ 血液データ | |
・白血球数(WBC)と白血球分画 | WBC増加は細菌感染を疑う所見です。一方で、化学療法後など骨髄抑制状態の患者では、感染があってもWBCが増加せず、むしろ減少(特に好中球の減少)することがあります。好中球数(Neutro)が500/μL未満になると、感染リスクが極めて高くなります。 |
・CRP(C反応性蛋白) | 体内で炎症が起きると上昇するタンパク質です。感染症の重症度や治療効果の判定に用いられます。 |
・プロカルシトニン(PCT) | 特に細菌感染症で特異的に上昇するため、ウイルス感染との鑑別や、抗菌薬の適正使用の指標として有用です。 |
・β-D-グルカン | 真菌感染症を疑う場合に測定されることがあります。 |
□ 培養検査の結果(血液、喀痰、尿、便、その他) | 原因となっている病原体を特定し、効果的な抗菌薬を選択するために不可欠な検査です。検査結果をタイムリーに確認し、治療方針の変更などを医師と共有します。 |