腎硬化症について

腎硬化症について徹底解説

あずかん

腎硬化症は、高齢化社会の進展とともに増加傾向にある疾患の一つです。特に生活習慣病との関連が深く、看護師として正しい知識を持つことが重要になります。この記事では、腎硬化症の基本から実践的な看護のポイントまで、分かりやすく解説します。


目次

腎硬化症とは

腎硬化症は、腎臓の細い動脈が動脈硬化を起こすことによって、腎臓の組織が硬くなり、機能が低下していく疾患です。具体的には、以下のようなプロセスで進行します。

1.腎臓の細動脈の動脈硬化
長年の高血圧や加齢、糖尿病などにより、腎臓内の細い動脈(輸入細動脈など)の血管壁が厚く、硬くなります。
2.血流の低下
動脈硬化によって血管の内腔が狭くなるため、腎臓の糸球体への血流が減少します。
3.糸球体の虚血・硬化
血流が不足した糸球体は、酸素や栄養が十分に行き届かなくなり、虚血状態に陥ります。これが長く続くと、糸球体は次第に硬化(線維化)し、ろ過機能を失っていきます。
4.腎機能の低下
機能する糸球体が減少していくことで、腎臓全体のろ過能力が低下し、老廃物の排泄や水分・電解質のバランス調整がうまくできなくなります。これが進行すると、末期腎不全に至ることもあります。

腎硬化症は、その原因によって「良性腎硬化症」と「悪性腎硬化症」に大別されます。

良性腎硬化症
比較的ゆっくりと進行するタイプで、多くは本態性高血圧症に伴うものです。自覚症状が乏しいまま、徐々に腎機能が低下していきます。
悪性腎硬化症
急激に血圧が上昇(悪性高血圧)し、急速に腎機能が悪化するタイプです。血圧が著しく高いため、腎臓だけでなく、脳や心臓、網膜などにも重篤な合併症を引き起こす可能性があります。


腎硬化症の原因

腎硬化症の最も大きな原因は高血圧です。特に、長期間にわたってコントロールされていない高血圧は、腎臓の血管に持続的な負担をかけ、動脈硬化を促進します。

主なリスクファクターは以下の通りです。

高血圧: 最大の原因であり、特に本態性高血圧症が背景にあることが多いです。
加齢: 年齢とともに血管の弾力性は失われ、動脈硬化が進行しやすくなります。
糖尿病: 高血糖は血管壁を傷つけ、動脈硬化を促進します。
脂質異常症(高コレステロール血症): 血中の過剰な脂質が血管壁に沈着し、アテローム性動脈硬化を引き起こします。
喫煙: ニコチンが血管を収縮させ、血圧を上昇させるほか、血管内皮細胞を障害します。
肥満: 肥満は高血圧、糖尿病、脂質異常症のリスクを高めます。


腎硬化症の症状

良性腎硬化症は、初期段階では自覚症状がほとんどありません。健康診断などで蛋白尿や腎機能低下(eGFRの低下)を指摘されて初めて気づくケースが多いです。

進行すると、慢性腎臓病(CKD)に共通する以下のような症状が現れます

夜間頻尿: 腎臓の尿濃縮力が低下するため、夜間に何度もトイレに起きるようになります。
浮腫: 水分や塩分の排泄が滞り、特に足や顔にむくみが生じます。
倦怠感・疲労感: 貧血(腎性貧血)や尿毒症物質の蓄積により、体がだるく感じられます。
食欲不振
息切れ
高血圧に伴う症状: 頭痛、めまい、肩こりなど。

一方、悪性腎硬化症の場合は、急激な血圧上昇に伴い、以下のような重篤な症状が出現します

視力障害・霧視: 眼底網膜の出血や浮腫による症状。
頭痛、吐き気、嘔吐: 急激な血圧上昇による脳圧亢進症状。
意識障害、けいれん: 高血圧性脳症の症状。
急激な腎機能低下: 乏尿、無尿など。


治療・対症療法

腎硬化症の治療の基本は、血圧管理腎保護です。一度硬化してしまった腎組織を元に戻すことはできないため、これ以上の進行を食い止めることが目標となります。

  • 降圧療法
    • 目標血圧: 診察室血圧で130/80mmHg未満、家庭血圧で125/75mmHg未満が目標とされます(高齢者や合併症により個別設定)。
    • 降圧薬: レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬(ACE阻害薬やARB)が、降圧作用に加えて腎保護作用も期待できるため、第一選択薬となることが多いです。その他、カルシウム拮抗薬や利尿薬などを組み合わせて使用します。
  • 生活習慣の改善
    • 減塩: 塩分の過剰摂取は血圧を上昇させ、腎臓に負担をかけるため、1日6g未満の減塩食が基本です。
    • たんぱく質制限: 腎機能が低下している場合は、老廃物の生成を抑えるためにたんぱく質制限が必要になることがあります。医師や管理栄養士の指導のもとで行います。
    • 禁煙: 喫煙は腎機能低下の独立したリスク因子であり、禁煙は必須です。
    • 適度な運動: ウォーキングなどの有酸素運動は、血圧低下や体重管理に有効です。
  • 合併症に対する治療
    • 貧血: エリスロポエチン製剤の注射で改善を図ります。
    • 電解質異常: カリウムやリンの制限、吸着薬の使用などで補正します。

腎機能がさらに低下し、末期腎不全(eGFR 15mL/min/1.73m²未満)に至った場合は、腎代替療法(透析療法や腎移植)が必要となります。


看護のポイント

  1. 正確なバイタルサイン測定とアセスメント
    • 血圧測定: 定期的な血圧測定は最も重要です。家庭血圧の測定を促し、記録をレビューして治療効果や日内変動を評価します。測定時の環境や条件を整え、正確な値を把握することが大切です。
    • 体重・水分出納の管理: 浮腫の有無や体重の増減をモニタリングし、体液量の変化を早期に捉えます。IN/OUTバランスを確認し、異常があれば医師に報告します。
  2. セルフケア支援と患者教育
    • 食事療法: なぜ減塩やたんぱく質制限が必要なのかを患者が理解し、実践できるよう支援します。管理栄養士と連携し、具体的な調理法や外食時の注意点などを指導します。
    • 服薬管理: 降圧薬は自己判断で中断すると、リバウンド現象で急激に血圧が上昇する危険性があります。処方通りに服薬する重要性を伝え、副作用の有無も確認します。
    • 生活習慣の指導: 禁煙の重要性を繰り返し説明し、必要であれば禁煙外来への受診を勧めます。患者一人ひとりの生活スタイルに合わせた運動習慣を一緒に考えます。
  3. 精神的支援
    • 慢性的な経過をたどる疾患であり、食事制限や将来への不安から、患者はストレスを抱えがちです。患者や家族の思いに耳を傾け、不安を傾聴し、精神的にサポートする姿勢が求められます。
    • 腎代替療法が必要になった場合は、患者が自己決定できるよう、透析や移植に関する正確な情報提供と意思決定支援を行います。
  4. 多職種連携
    • 医師、管理栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど、多職種と連携し、チームとして患者を支えることが不可欠です。定期的なカンファレンスで情報を共有し、一貫した方針でケアを提供します。
参考資料
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次