【警報】麻疹の流行

【警報】麻疹の流行

あずかん

最近、ニュースで「麻疹(はしか)の感染者が確認された」という報道をよく耳にするようになりましたね。外来や小児科の待合室でも、「うちの子は大丈夫でしょうか?」「大人の私もワクチンを打ったほうがいいですか?」と、不安な声が多く聞かれます。
「はしかって、昔からある子どもの病気でしょ?」と思う方もいるかもしれません。しかし、医療現場の人間にとって、麻疹は決して軽く見てはいけない、非常に恐ろしい感染症です。今回は、なぜ今麻疹が流行の兆しを見せているのか、そして世代別にどのような危険があるのかを、看護師の視点から詳しく解説します。

目次

なぜ今、麻疹(はしか)が流行しているの?

現在、日本国内で確認されている麻疹は、ほとんどが海外からの「輸入感染」が発端です。
これには2つの背景があります。

1. 新型コロナウイルスの世界的流行により、各国で麻疹ワクチンの接種率が低下してしまったこと。
2. パンデミックが落ち着き、海外との人流が急速に活発になったこと。海外で感染した人が帰国し、そこから国内で広がってしまうケースが増えている。

また、日本特有の事情として「ワクチンギャップ」があります。現在の制度ではMRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)を2回接種しますが、過去の制度の変遷により、「1回しか接種していない世代」や「1度も接種していない世代」の大人たちがいます。十分な免疫(抗体)を持たない成人が多いことが、流行のリスクを高めているのです。

なぜ麻疹はそんなに危険なのか?

麻疹が危険とされる理由は、主に以下の2点です。

桁違いの感染力(空気感染)

インフルエンザや新型コロナは主に飛沫感染ですが、麻疹ウイルスはさらに小さな粒子となって空気中を漂う「空気感染」を起こします。マスクや手洗いだけでは防げず、同じ空間(待合室や電車など)にいるだけで、免疫がない人は「ほぼ100%」感染します。1人の感染者から何人にうつるかを示す「基本再生産数」は12〜18とされており、インフルエンザ(1〜2程度)とは比べ物にならない感染力です。

「免疫の初期化(Immune Amnesia)」を起こす

麻疹ウイルスの最も恐ろしい特徴は、全身の免疫細胞に感染し、それを破壊してしまうことです。これにより、過去にかかった病気やワクチンで獲得した「他の病気に対する免疫の記憶」がリセットされてしまいます。麻疹が治った後も数年間にわたり免疫不全に近い状態となり、肺炎などの重い感染症にかかりやすくなってしまいます。

年代別・ワクチン未接種で感染した場合のリスク

もしワクチンを打たずに麻疹に感染してしまった場合、体にはどのような影響があるのでしょうか。年代別に見ていきましょう。

新生児・乳児(0〜1歳未満)
生後数ヶ月は母親からの移行抗体で守られますが、次第に免疫は消えていきます。ワクチン(1歳〜)を打つ前に感染してしまうと、数年から十数年後にSSPE(亜急性硬化性全脳炎)という、知能障害や運動障害が進行する致死的な中枢神経疾患を発症するリスクが高くなります。

幼児・学童
保育園や学校などでの集団感染のリスクが高まります。前述した「免疫の初期化」により、麻疹から回復した後も、中耳炎や肺炎、クループ症候群などの合併症を引き起こしやすくなります。

成人
実は、大人の麻疹は子どもよりも重症化しやすい傾向があります。約3割が麻疹肺炎や麻疹脳炎などの重篤な合併症を引き起こし、最悪の場合は命に関わります。また、妊婦さんが感染すると、流産や早産のリスクが約30%に跳ね上がるといわれています。

高齢者
高齢者の方の多くは、過去の大流行時に自然感染しており、生涯続く強い免疫を持っていることがほとんどです。しかし、何らかの理由で免疫を持っていなかったり、基礎疾患などで免疫力が極度に低下している状態で感染すると、重症の細菌性肺炎などを併発しやすく、非常に危険な状態に陥ります

私たちにできる最大の対策は?

麻疹に対する特効薬はありません。唯一にして最強の対策は「ワクチン(MRワクチン)の接種」です。

母子手帳の確認と抗体検査

まずはご自身の母子手帳を確認し、麻疹ワクチンを「2回」接種しているか確認してください。記録がない、あるいは1回しか打っていない世代(特に2000年4月1日以前生まれの方)は、十分な免疫がない可能性があります。心配な方は、医療機関で「麻疹抗体検査」を受けることをお勧めします。

疑わしい症状が出たら「いきなり受診しない」

もし「39度以上の高熱」「咳や鼻水」「全身の赤い発疹」など、麻疹が疑われる症状が出た場合、絶対に公共交通機関を使って、いきなり病院の待合室に行かないでください。 空気感染で他の患者さん(特に赤ちゃんや妊婦さん)にうつしてしまう危険があります。必ず事前に医療機関や保健所に電話をし、「麻疹かもしれない」と伝え、指示された方法で受診してください。

あずかん

麻疹は防げる病気です。ご自身と、周りの大切な命を守るためにも、正しい知識を持って冷静に行動していきましょう。


参考資料
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次