黄疸について

黄疸について|症状の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

患者さんの全身清拭をしている時や、検温で顔色を見た時に「あれ?なんだか皮膚が黄色っぽいな」「目の白いところが黄色い気がする…」と気づいた経験はありませんか?
その「黄色」は、黄疸という危険なサインかもしれません。
黄疸は、肝臓や胆道系の疾患が隠れていることを示す重要な指標です。単なる「見た目の変化」と捉えず、その背後にある病態をアセスメントできるようになることで、急変の兆候をいち早く察知し、患者さんの苦痛を予測した看護ができるようになります。
今回は、アセスメントに悩みがちな黄疸について、観察のポイントから具体的なケアまでを紹介していきます。


目次

サクッと復習!黄疸の概要

黄疸とは、血中のビリルビン値が上昇し、皮膚や粘膜が黄染する状態です。ビリルビンは赤血球が分解されてできる黄色い色素で、通常は肝臓で処理(抱合)され、胆汁として十二指腸に排泄されます。この経路のどこかに異常が起こると黄疸が出現します。

【黄疸の3大分類とビリルビンの流れ】

     ┌── 腎前性(溶血性)黄疸:赤血球の過剰な破壊(溶血)によるビリルビン産生過剰
     │
 黄疸  ├── 肝性(肝細胞性)黄疸:肝細胞の機能低下によるビリルビン処理能力の低下
     │
     └── 腎後性(閉塞性)黄疸:胆道の閉塞による胆汁の排泄障害

腎前性(溶血性)黄疸

原因
自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血など。肝機能は正常でも、それを上回る大量のビリルビンが作られる状態

特徴
間接ビリルビン(非抱合型)が優位に上昇。尿は正常色

肝性(肝細胞性)黄疸

原因
急性・慢性肝炎、肝硬変、肝がん、薬剤性肝障害など。肝細胞そのものがダメージを受け、ビリルビンを処理できなくなる状態

特徴
間接・直接ビリルビンの両方が上昇。AST/ALTなどの肝酵素も上昇。

腎後性(閉塞性)黄疸

原因
総胆管結石、膵頭部がん、胆管がんなど。胆汁の通り道が物理的に塞がれ、処理済みのビリルビンが逆流する状態

特徴
直接ビリルビン(抱合型)が優位に上昇。白色便(灰白色便)、褐色尿、皮膚掻痒感が特徴的な随伴症状


観察ポイント&根拠

観察項目観察ポイント根拠・予測
皮膚・眼球結膜の黄染の観察自然光の下で、患者さんの下眼瞼を軽く引き下げ、眼球結膜(白目の部分)の色を確認する。皮膚の色だけでなく、黄染の濃さの経時的変化を評価する。【黄疸の早期発見と重症度評価】
ビリルビンは弾性線維と親和性が高いため、最初に弾性線維が豊富な眼球結膜に沈着します。皮膚の色は個人差が大きく、照明によっても変わるため、客観的な評価には結膜の色が最も信頼できます。血清T-Bil値が2〜3mg/dLを超えると黄染が明らかになります
便と尿の色調の確認排便があった際は、流す前に必ず便の色を直接観察する(白っぽくないか、粘土のようでないか)。尿は尿器や蓄尿バッグの色を確認し、「ウーロン茶やコーラのような濃い褐色」になっていないか観察する。【閉塞性黄疸(腎後性)の鑑別】
胆道が閉塞すると、便の色素であるビリルビンが腸に排泄されず、便は白色便(灰白色便)になります。行き場を失った水溶性の直接ビリルビンは血中に溢れて腎臓から排泄されるため、褐色尿(ビリルビン尿)となります。この2つは閉塞性黄疸を強く示唆する決定的なサインです。
皮膚掻痒感と出血傾向皮膚を掻きむしった痕(掻爬痕)がないか、皮膚の乾燥度を観察。同時に、歯磨き時の歯肉出血や、採血・ルート確保後の止血困難、皮下出血斑(紫斑)の有無を確認する。【高ビリルビン血症の随伴症状と肝機能低下のサイン】
血中に溢れた胆汁酸が皮膚の末梢神経を刺激し、耐え難い掻痒感を引き起こします。また、肝臓の機能が低下すると、血液凝固因子が産生できなくなり、ビタミンKの吸収も障害されるため、著しい出血傾向(PT-INRの延長)が出現します。

もし患者さんがこう言ったら、あなたはどうする?

黄疸のある患者さん、特に膵臓がんや胆管がんでPTCD(経皮経肝胆道ドレナージ)やERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を控えている患者さんが「なんだか最近、体中が痒くて夜も眠れないんだよ…」とよく訴えてきます。

言葉の裏にある病態とニード
これは、閉塞性黄疸による「胆汁うっ滞性の掻痒感」です。単なる乾燥による痒みとは異なり、抗ヒスタミン薬などはほとんど効きません。掻いても治まらない、四六時中続く耐え難い苦痛であり、不眠やイライラ、QOLの著しい低下につながります。

対応アクションと会話例

  • 「黄色いおしっこと同じ成分(胆汁酸)が皮膚を刺激して、痒くてたまらないんですよね。夜も眠れないほどお辛いんですね。まず、掻き壊して傷にならないように、爪を短く整えさせていただいてもいいですか?お部屋も少し涼しくして、冷たいタオルでお背中を拭くと少し楽になるかもしれません。先生に相談して、痒みを和らげるお薬(リファンピシンやナルフラフィンなど)が使えないか確認してきますね。」
    • まずは、その痒みが病態からくる耐え難いものであることを共感的に受け止めます。
      その上で、①掻破による二次感染を防ぐ環境調整(爪切り、保湿、室温調整)、②物理的クーリングによる症状緩和、③医師への専門的な薬物治療の提案(SBAR)という3つの軸で具体的に介入します。

現場で差がつく看護のコツ

工夫・コツ・アイデア具体的な手技・環境調整期待される効果・メリット
掻痒感に対する「保湿+クーリング」石鹸をよく泡立てて、皮脂を落としすぎないように優しく洗浄後、冷蔵庫で冷やした保湿剤(ヘパリン類似物質など)を塗布する。痒みが強い部位には、冷たいおしぼりや、タオルで包んだ保冷剤を当てる。【掻破行動の抑制と安眠確保】
皮膚の清潔・保湿でバリア機能を保ちつつ、冷刺激によって痒みの神経伝達を鈍らせます。温まると痒みが増強するため、入浴はシャワー浴でぬるめのお湯にする、熱い食事は少し冷ましてから提供するなどの工夫も有効です。
脂肪制限食への精神的フォロー胆汁の分泌を促す脂肪を制限するため、食事は低脂肪食になります。患者さんが「揚げ物も肉もダメで、食べるものがない」と訴えた際、「この治療が終われば、また食べられるようになりますからね。今は肝臓を休ませてあげる時期なんですよ」と治療的意義を説明する。【食事療法のコンプライアンス維持】
ただ「ダメ」と言うのではなく、「なぜ今、制限が必要なのか」という治療的な意味づけを共有することで、患者さんは食事制限のストレスを受け入れやすくなります。管理栄養士と連携し、嗜好に合わせた調理法の工夫(蒸す、茹でるなど)を提案することも重要です。

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人の頃って、黄疸の患者さんを見ると、どうしても「黄色い」という見た目と、採血データのT-Bilの数値にばかり目が行きがちですよね。「今日のT-Bilは15.2でした!」と元気に報告しても、先輩から「で、便の色と尿の色は?痒みはどうだった?」と聞かれて、「あ…見てません」と固まってしまう。これは本当に“あるある”です。

黄疸のアセスメントで一番大切なのは、「ビリルビンの排泄ルートがどこで詰まっているのか?」を常に考えることです。

便と尿の色は、その答えを教えてくれる最も雄弁なサインです。採血データという「結果」を確認する前に、便・尿・皮膚という「プロセス」を観察する癖をつけると、あなたの看護師としての“眼”は格段にレベルアップします。

「黄色いな」と思ったら、次に確認するのは「便器の中」。このワンセットを、ぜひ明日からの習慣にしてみてください。


参考資料

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