腸重積症について

腸重積症について|病態生理から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

小児救急で比較的多く遭遇する腹部緊急疾患の一つである「腸重積症」。早期発見・早期治療が遅れると腸壊死に至る可能性があり、的確なトリアージと観察が極めて重要となります。
この記事では、腸重積の病態生理から原因、特徴的な症状、治療、そして看護のポイントまでを解説します。

目次

なぜ「腸が重なる」のか

腸重積症とは、口側の腸管が肛門側の腸管の中に入り込んでしまう状態を指します。

最も一般的な形態は、回腸末端が盲腸~上行結腸に入り込む「回盲部型」で、全体の約80〜90%を占めます。腸管が重なり合うことで以下の悪循環が生じます。

1.静脈還流の障害: 腸重積が起きると、まず腸間膜の静脈が圧迫され、うっ血が生じます。
2.浮腫と通過障害: うっ血により腸管壁が浮腫を起こし、腸閉塞(イレウス)状態となります。
3.動脈血流の途絶: 浮腫が進行し内圧が高まると、やがて動脈血流も遮断されます。
4.虚血・壊死: 最終的に腸管の虚血から壊死に至り、穿孔や腹膜炎を引き起こすリスクがあります。

発症から24〜48時間以上経過すると、腸管壊死のリスクが急激に高まるため、時間との勝負になります。

原因は特発性と器質的疾患

特発性(原因不明):乳幼児に多い

3ヶ月〜2歳くらいの乳幼児に発症するケースの約90%は「特発性」と呼ばれ、明らかな器質的病変が見つかりません。

  • ウイルスの関与
    アデノウイルスやロタウイルスなどの感染に伴い、回盲部のリンパ組織(パイエル板)が腫大し、それが先進部となって腸重積を引き起こすと考えられています。
  • 季節性
    風邪が流行する冬や、胃腸炎が多い時期にやや増加する傾向があります。

続発性(器質的疾患あり):年長児・成人に多い

3歳以上の年長児や成人で発症する場合は、何らかの病変が原因となっている可能性が高くなります(約2〜10%)。

  • メッケル憩室
  • 腸管重複症
  • ポリープ、リンパ腫
  • 紫斑病(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)による腸管壁血腫

見逃してはいけない「3徴候」

典型的な症状として知られるのが「3徴候」ですが、すべてが揃うのは全体の半数程度と言われています。初期には症状が断続的であるため、保護者からの聴取と観察が重要です。

間欠的な腹痛・不機嫌(約80〜90%)

  • 突然火がついたように激しく泣き(啼泣)、足をバタバタさせたりお腹を抱えたりします。
  • 15〜20分程度泣いた後、ケロッとして元気に遊んだり眠ったりする「無症状の時間(寛解期)」があります。これが繰り返されるのが最大の特徴です。
  • 乳児では「顔色が青白くなる」「ぐったりする」といったショック症状に近い表現をすることもあります。

嘔吐(約70〜80%)

  • 初期は迷走神経反射による嘔吐ですが、時間が経過して腸閉塞状態になると、胆汁性(緑色)の嘔吐が見られるようになります。

血便(粘血便)(約50〜60%)

  • イチゴゼリー状と表現される特徴的な便が出ます。
  • これは腸管のうっ血と粘膜の損傷による出血と粘液が混ざったものです。
  • 血便は発症から時間が経過(通常12時間以降)してから見られることが多いため、血便がないからといって腸重積を否定できません。

その他の所見

  • ダンス徴候(Dance sign): 右下腹部の空虚感(盲腸が移動しているため)。
  • ソーセージ様腫瘤: 右季肋部や上腹部に、ソーセージのような形のしこりを触れることがあります。

治療・対症療法

診断には超音波検査(ターゲットサインや偽腎臓サインの確認)が第一選択です。治療法は発症からの時間と全身状態によって決定されます。

非観血的整復術(高圧注腸)

発症から24時間以内で、腹膜刺激症状がなく、全身状態が安定している場合に行われます。

  • 透視下空気整復(または造影剤・生食)
    • 肛門からカテーテルを挿入し、空気や造影剤を注入して圧力をかけ、入り込んだ腸を押し戻します。
    • 成功率は90%以上と高いですが、穿孔のリスク(約1%)があるため、外科医が待機できる状況で行うのが一般的です。

観血的整復術(外科手術)

以下のケースでは手術適応となります。

  • 高圧注腸で整復できなかった場合
  • 発症から時間が経過しており(通常24〜48時間以上)、腸壊死や腹膜炎が疑われる場合
  • 全身状態が悪くショック状態にある場合
  • 器質的疾患(メッケル憩室など)が原因の場合

手術は、用手的に整復する「ハッチンソン手技」や、壊死がある場合は腸切除・吻合術が行われます。現在は腹腔鏡下手術も普及しています。

看護のポイント

初診時・トリアージの観察力

  • 間欠的な痛みの確認
    • 「泣いたり泣き止んだりを繰り返していませんか?」と具体的に問診します。
  • 便の確認
    • オムツを持参していれば必ず確認し、なければ直腸診の介助や浣腸で便性状を確認することがあります。
  • 脱水の評価
    • 嘔吐による脱水が進んでいないか、皮膚のツルゴール、口腔内の乾燥、大泉門の陥没(乳児)を確認し、早期の輸液ルート確保を準備します。

整復術(高圧注腸)時の看護

  • 患児の固定と安楽
    • 処置中は泣き叫ぶため、体動による腸管損傷を防ぐための確実な固定が必要です。同時に、声かけを行い恐怖心を和らげます。
  • 急変への備え
    • まれに腸穿孔を起こす可能性があるため、バイタルサインの変動や腹部の急激な膨隆に注意します。

整復後の観察(再発への警戒)

  • 再発のモニタリング
    • 整復後24〜48時間は再発のリスク(約10%)があります。「再び激しく泣き出した」「嘔吐した」場合は直ちに医師へ報告します。
  • 排便の確認
    • 正常便やガスが出るかを確認します。整復直後は一時的に血便が残ることがありますが、鮮血が続く場合は注意が必要です。
  • 食事開始
    • 医師の指示に従い、水分摂取から段階的に食事を開始します。

家族(保護者)へのケア

  • 罪悪感の軽減
    • 「目を離した隙に」「私のせいで」と自分を責める保護者がいます。特発性が多く、誰のせいでもないことを伝え、早期受診できたことを肯定的に評価します。
  • 退院指導
    • 再発のサイン(間欠的な腹痛、不機嫌、嘔吐)を具体的に伝え、自宅で同様の症状が出た場合はすぐに受診するよう指導します。
参考資料
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