尿失禁について

尿失禁について|観察項目から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

臨床において、尿失禁は単なる「加齢現象」や「排泄の失敗」ではありません。
もしそれが、前立腺肥大症による尿閉からの「溢流性尿失禁」だった場合、オムツ交換だけで見過ごしてしまうと、膀胱は過伸展を起こし、水腎症から腎後性腎不全へと一直線に悪化します。また、尿路感染によるせん妄が引き金になっていることもあります。
「なぜこの人は漏らしてしまったのか?」という病態の切り分けができなければ、患者さんの尊厳を奪うだけでなく、命に関わる急変を見落とすことになります。今回は、現場で絶対に外してはいけない「尿失禁の4つのタイプ」を見極めるためのアセスメントを解説します。


目次

【保存版】プロの観察項目&根拠(尿失禁のアセスメント)

尿失禁は主に「腹圧性」「切迫性」「溢流性」「機能性」に分けられます。特に、緊急性の高い溢流性尿失禁と、環境調整で改善できる機能性尿失禁を見極める視点を持ちましょう。

観察項目観察ポイント根拠・予測
下腹部の膨隆と打診音
(溢流性尿失禁)
オムツを開けた際、必ず恥骨上部(下腹部)を目視し、手で触れて緊満感がないか確認する。軽く打診して濁音がするか、ブラダースキャン(超音波)で残尿量を測定する。【膀胱容量の限界と溢れ出し】
前立腺肥大症や神経因性膀胱などで尿が排出できず(尿閉)、限界まで溜まった膀胱からチョロチョロと漏れ出ている状態です。オムツには少量の尿しか出ないのに下腹部がパンパンな場合、直ちに導尿しないと腎機能が破綻します。ドクターコール必須のサインです。
尿意の有無と漏れるタイミング
(切迫性・腹圧性)
「トイレに行きたいと感じてから間に合わなかったのか(切迫性)」、「咳やくしゃみ、立ち上がった瞬間に漏れたのか(腹圧性)」を、具体的なシチュエーションで問診する。【膀胱の過活動 vs 骨盤底筋の弛緩】
急な強い尿意(尿意切迫感)で漏れるなら過活動膀胱(OAB)が疑われ、抗コリン薬の適応等を検討します。腹圧性は骨盤底筋群の緩みが原因であり、咳などの物理的圧排で括約筋が耐えきれず漏れます。
尿の性状(混濁・臭気)とバイタル
(一過性・感染性)
尿器やオムツの尿を見て、強いアンモニア臭や浮遊物(白濁)、血尿(肉眼的血尿)がないか確認する。同時に発熱や悪寒戦慄の有無をバイタルサインで追う。【尿路感染症による膀胱刺激】
急に失禁が始まった場合、尿路感染症(UTI)による膀胱粘膜の刺激症状(頻尿・切迫感)の可能性が高いです。特に高齢者では、発熱より先に「急な尿失禁」と「不穏(せん妄)」がUTIの初発症状になることが多々あります。
移動能力・認知機能と環境のズレ
(機能性尿失禁)
ナースコールを押してからトイレに辿り着くまでの所要時間をストップウォッチ感覚で測る。ズボンを下ろす動作(巧緻性)ができているか、トイレの場所を認識できているかを観察する。【身体・認知機能と排泄環境のミスマッチ】
排尿機能自体は正常なのに、「歩くのが遅くて間に合わない」「ズボンのチャックが下ろせない」「認知症でトイレの場所がわからない」ために漏れる状態です。これは薬ではなく、ポータブルトイレの設置や着脱しやすい衣類への変更といった「看護の力」で解決できる失禁です。

現場で役立つ+αの看護ポイント

「とりあえずオムツ」は看護の敗北

夜勤帯で頻回にトイレコールがあると、つい「夜間だけオムツにしませんか?」と提案したくなります。しかし、安易なオムツ使用は、患者さんの自尊心を傷つけるだけでなく、感覚の低下を招き、廃用症候群を加速させます。
機能性尿失禁であれば、ベッドサイドへのポータブルトイレの設置や、利尿剤の内服時間を朝に変更するよう医師に提案するなど、「どうすればトイレで排泄できるか」を考えるのが私たちの専門性です。

残尿測定(ブラダースキャン)の積極的活用

「オムツが濡れているからおしっこは出ている」という思い込みは危険です。溢流性尿失禁を疑う場面では、医師へ報告する前にブラダースキャンで残尿量(例:「残尿が400mlあります」)を数値化してSBARで伝えることで、即座に導尿の指示を引き出すことができます。


参考資料
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