狭心症と心筋梗塞の観察項目とアセスメントの根拠を徹底解説!

循環器疾患の中でも特に緊急性の高い狭心症と心筋梗塞。今回は、これらの疾患を持つ患者さんを受け持った際に「どこを観察し、どうアセスメントするか」を、根拠と共に詳しく解説します。
目次
狭心症と心筋梗塞の基礎知識
狭心症
心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈が、動脈硬化などによって狭くなり、心筋への血流が一時的に不足する状態です。胸の痛みや圧迫感(狭心症発作)が起こりますが、数分で治まることが多いのが特徴です。
心筋梗塞
冠動脈が完全に詰まってしまい、心筋への血流が途絶え、心筋が壊死してしまう状態です。激しい胸の痛みが30分以上続き、生命の危険を伴います。
どちらも「虚血性心疾患」というカテゴリに含まれ、原因は動脈硬化がほとんどです。心筋梗塞は狭心症が進行した結果として起こることが多く、観察項目や看護のポイントにも共通点が多くあります。
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観察項目とアセスメントの根拠
観察項目 | アセスメントの根拠 |
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胸痛の有無と性状 | 心筋虚血の程度を評価するため ・痛みの場所、放散痛(左肩、顎、歯など)の有無、持続時間、程度(NRSスケール等で評価)を確認します。 ・狭心症は一時的な虚血による痛み(数分~15分以内)、心筋梗塞は心筋壊死を伴う持続的な激痛(30分以上)です。痛みの変化は、症状の悪化や改善を判断する重要な指標です。 |
バイタルサイン | 循環動態の変動を把握するため ・血圧 心機能が低下すると血圧は低下します。逆に、痛みによる交感神経の緊張で上昇することもあります。 ・脈拍 頻脈や徐脈、不整脈は、心機能の低下や致死性不整脈の出現を示唆する危険なサインです。 ・呼吸数・SpO2 心不全を合併すると、肺に水がたまり(肺うっ血)、呼吸困難や酸素飽和度の低下がみられます。 |
意識レベル | 脳への血流状態を評価するため ・心拍出量が著しく低下すると、脳への血流も減少し、意識レベルの低下や失神をきたすことがあります。これは緊急性の高いサインです。 |
皮膚の状態(冷汗、顔色) | 末梢循環不全の有無を評価するため ・心機能が低下し、体の中心に血液を集めようとする代償機能が働くと、末梢の血管が収縮します。その結果、顔面蒼白や四肢の冷感、冷や汗(脂汗)が出現し、これらはショックの兆候です。 |
尿量 | 腎臓への血流と心拍出量を評価するため ・心拍出量が低下すると、腎臓への血流も減少するため尿量が減ります。1時間あたりの尿量が30mL以下になる場合は、循環不全が疑われ、医師への報告が必要です。 |
心電図モニター | 心筋の電気的活動を直接評価するため ・ST変化 ST部分の上昇は心筋梗塞、ST部分の低下は狭心症や心内膜下の虚血を示します。波形の変化は、虚血の範囲や重症度を判断する最も重要な情報の一つです。 ・不整脈 心筋虚血により、心室細動(VF)などの致死性不整脈がいつ出現してもおかしくありません。モニターから目を離さず、アラーム設定を適切に行うことが重要です。 |
呼吸音、呼吸状態 | 心不全(特に左心不全)の合併を早期に発見するため ・聴診で湿性ラ音(ブツブツ、ゴロゴロといった音)が聴こえる場合、肺うっ血(肺に水がたまっている状態)を示唆します。これは左心機能の低下によるもので、急性心不全の徴候です。起坐呼吸(座らないと呼吸が苦しい状態)の有無も確認します。 |
精神的状態(不安、恐怖) | 精神的ストレスによる心臓への負担を軽減するため ・激しい胸痛や死への恐怖は、交感神経を刺激し、さらに心臓に負担をかける悪循環に陥ります。患者さんの不安を傾聴し、安心できる環境を整えることも看護師の重要な役割です。 |