ドライアイについて

ドライアイの病態から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

ドライアイは、現代社会において非常に多くの人が悩まされている疾患です。特に、電子カルテの普及や長時間のデスクワークなど、看護師の業務環境はドライアイのリスクを高める要因に満ちています。患者さんへのケアだけでなく、自身の健康管理のためにも、ドライアイに関する正確な知識を深めておくことは非常に重要です。
この記事では、ドライアイの基本的な知識から、看護師として知っておくべき実践的なポイントまで、詳しく解説します。


目次

ドライアイとは

ドライアイは、「涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う多因子性の疾患」と定義されています。簡単に言うと、涙の量や質のバランスが崩れることで、目の表面が乾燥し、傷つきやすくなる状態です。

涙は単なる水分ではなく、以下の3つの層で構成されています。

油層(一番外側)
まぶたの縁にある「マイボーム腺」から分泌される油分です。
涙の蒸発を防ぎ、涙液を安定させる役割を担います。

水層(中間層)
涙の大部分を占め、主に「涙腺」から分泌されます。
目に栄養を届け、感染を防ぐ役割があります。

ムチン層(一番内側)
結膜の「ゴブレット細胞」から分泌される粘液です。
涙が目の表面(角膜・結膜)に均一に広がるのを助ける「のり」のような役割を果たします。

ドライアイは、主に以下の2つのタイプに大別されます。

涙液減少型
水層の分泌量が低下するタイプ。自己免疫疾患(シェーグレン症候群など)が原因となることもあります。
蒸発亢進型
油層の異常(マイボーム腺機能不全:MGD)などにより、涙の蒸発が早まるタイプ。現代人のドライアイの多くがこのタイプに該当すると言われています。

これらのタイプが複合的に関与しているケースも少なくありません。涙のバランスが崩れると、角膜や結膜が乾燥して傷つき、炎症が引き起こされます。


ドライアイの原因

ドライアイの原因は多岐にわたります。看護師の業務や生活習慣に潜むリスクも多いため、自身の状況と照らし合わせて確認してみましょう。

  • 環境要因
    • 長時間のVDT作業: PCやスマートフォン、電子カルテなどの画面を長時間見つめることで、まばたきの回数が減少し、涙が蒸発しやすくなります。
    • 乾燥した環境: エアコンや暖房による空気の乾燥は、涙の蒸発を促進します。
    • コンタクトレンズの装用: 特にソフトコンタクトレンズは、レンズ自体が涙を吸収し、目の乾燥感を引き起こすことがあります。
  • 加齢
    • 年齢とともに涙の分泌量や質が低下します。特に女性はホルモンバランスの変化により、ドライアイになりやすい傾向があります。
  • マイボーム腺機能不全(MGD)
    • 加齢や不衛生な状態により、油層を分泌するマイボーム腺が詰まり、涙の蒸発を防ぐ機能が低下します。アイメイクが原因となることもあります。
  • 疾患
    • シェーグレン症候群: 自己免疫疾患の一つで、涙腺や唾液腺が破壊され、重度のドライアイや口腔乾燥を引き起こします。
    • スティーブンス・ジョンソン症候群: 皮膚や粘膜に重篤な症状が現れる疾患で、後遺症として重度のドライアイが残ることがあります。
    • その他、関節リウマチ、甲状腺疾患なども関連が指摘されています。
  • 薬剤の副作用
    • 抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、向精神薬、降圧薬(利尿薬)など、一部の薬剤は涙の分泌を減少させる副作用を持つことがあります。

ドライアイの症状

ドライアイの症状は「目が乾く」だけではありません。多様な症状が現れるため、見逃さないように注意が必要です。

  • 眼不快感
    • 目が乾く(乾燥感)
    • 目がゴロゴロする(異物感)
    • 目が痛い、ヒリヒリする(疼痛)
    • 目が疲れる(眼精疲労)
    • 目が重い感じがする
  • 視機能の異常
    • 目がかすむ、ぼやける(特にVDT作業後)
    • 光がまぶしく感じる(羞明)
    • 一時的に視力が低下する
  • その他の症状
    • 目が充血する
    • 涙が出る(乾燥しているのに涙が出るのは、刺激に反応して反射的に涙が過剰に出るため)
    • 目やにが増える

これらの症状は、夕方になると悪化する傾向があります。


治療・対症療法

ドライアイの治療は、症状の緩和と涙の状態を改善することを目的とします。

  1. 点眼薬
    • 人工涙液: 不足している涙液を補充します。防腐剤の入っていない(PF:Preservative-Free)タイプが推奨されることもあります。
    • ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬: 涙を目の表面に留める(保水)効果があり、角膜の傷の治癒を促進します。
    • ムチン/水分分泌促進点眼薬(ジクアホソルナトリウム、レバミピド): 涙の成分であるムチンや水分の分泌を促し、涙の「質」を改善します。
    • ステロイド点眼薬: 目の表面の炎症が強い場合に使用されます。
    • 血清点眼: 患者自身の血液から作成する点眼薬。重症例で検討されます。
  2. 涙点プラグ
    • 涙の排出口である「涙点」に栓をすることで、涙を目の表面に溜める治療法です。涙液減少型のドライアイに有効です。
  3. マイボーム腺機能不全(MGD)へのアプローチ
    • リッドハイジーン(眼瞼清拭): まぶたの縁を清潔に保つセルフケアです。
    • 温罨法: 蒸しタオルなどでまぶたを温め、詰まった脂を溶かして排出を促します。
    • IPL(Intense Pulsed Light)治療: 特殊な光を照射してマイボーム腺の詰まりを改善する新しい治療法です(保険適用外)。
  4. 生活習慣の改善
    • VDT作業時のこまめな休憩
    • 加湿器の使用
    • コンタクトレンズの装用時間や種類の見直し

看護のポイント

患者へのアセスメントとケア

入院患者の観察
意識レベルの低下、麻痺、鎮静下にある患者は、まばたきが不完全(兎眼)になりやすく、重度のドライアイ(曝角性角膜症)のリスクが非常に高いです。定期的に閉眼状態を確認し、必要に応じて眼軟膏の塗布やドレッシング材での保護を行います。

薬剤の確認
ドライアイの原因となりうる薬剤(抗コリン薬、向精神薬など)を内服していないか確認し、症状との関連をアセスメントします。

点眼指導
正確な点眼手技(点眼容器が目に触れない、点眼後は目頭を軽く押さえるなど)を指導し、アドヒアランスを高めます。複数の点眼薬を使用する場合は、5分以上の間隔をあけるよう説明します。

環境調整
空調の風が直接当たらないようにベッドの位置を調整したり、病室の湿度を保つ工夫をしたりします。

看護師自身のセルフケア

意識的なまばたき
電子カルテ入力中など、集中するとまばたきが減りがちです。意識して深く、しっかりまばたきをすることを心がけましょう。

休憩とストレッチ
1時間に1回は10〜15分程度の休憩を取り、遠くの景色を見たり、目の周りの筋肉をほぐしたりしましょう。

温罨法の実践
1日の終わりに蒸しタオルで目を温めることは、マイボーム腺の働きを助け、眼精疲労の回復にも繋がります。

適切なコンタクトレンズの使用
装用時間を守り、乾燥感が強い場合は眼鏡と併用する、あるいは眼科医に相談してドライアイに適したレンズを検討しましょう。

早期受診
症状が続く場合は「たかがドライアイ」と軽視せず、眼科を受診することが大切です。

参考資料
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次