下痢がひどい患者のおむつ交換手順と根拠|皮膚トラブル・感染を防ぐポイント
あずかん下痢が続いている患者さんのおむつ交換は、皮膚トラブルの予防や感染管理の観点から非常に重要かつデリケートなケアです。今回は、「下痢がひどい患者さんのおむつ交換」について、手順とその根拠を詳しく解説します。
この記事は、基本的な看護技術の再確認と、より質の高いケアを提供するためのヒントとして活用してください。
下痢便(水様便・泥状便)は、通常の便に比べて消化酵素やアルカリ成分が多く含まれており、皮膚への刺激が非常に強力です。また、感染性胃腸炎などが原因の場合は、二次感染のリスクも高まります。
そのため、「迅速さ」と「愛護的なケア」、「徹底した感染対策」の3つが鍵となります。
目次
おむつ交換の手順と根拠
ここでは、標準的なおむつ交換の流れに沿って、特に下痢の場合に注意すべきポイントをまとめました。
標準的なおむつ交換にていては下記のページを参考にしてください。
| 手順 | 根拠 | ポイント・注意点 |
|---|---|---|
| 1. 必要物品の準備 ・おむつ、尿取りパッド ・陰部洗浄ボトル(微温湯) ・清拭用タオル、ティッシュ ・撥水性クリーム/保護オイル ・石鹸(泡タイプが望ましい) ・個人防護具(手袋、エプロン、必要時マスク・ゴーグル) ・新聞紙や防水シーツ(汚染防止用) | ・感染防御 下痢便にはノロウイルスやCD(Clostridioides difficile)などの病原体が含まれている可能性があるため、標準予防策に加え、接触感染予防策を徹底する。 ・皮膚保護 頻回な排泄と清拭による摩擦から皮膚を守るため、撥水・保湿剤が必須。 ・保温・快適性 微温湯を使用することで血管収縮を防ぎ、汚れを浮かせやすくする。 | CD腸炎等の疑いがある場合は、アルコール消毒が無効なため、流水と石鹸による手洗いを徹底し、物品の取り扱いにも厳重な注意を払う。 |
| 2. 患者への説明と環境調整 ・カーテンを閉める ・室温の調整 ・安楽な体位の確保 | ・プライバシー保護 羞恥心への配慮。 ・心理的安定 頻回な便失禁により患者は自尊心が傷ついている場合が多い。「きれいにしてさっぱりしましょうね」など、肯定的かつ受容的な声かけを行う。 | 臭気に対する配慮として、換気や消臭剤の使用も検討するが、あからさまな態度は避ける。 |
| 3. 古いおむつの開放と便の確認 ・汚染範囲を確認する ・便の性状(色、量、混入物)を観察する | ・アセスメント 便の性状は病態の変化を知る重要な情報源(出血の有無、感染兆候など)。 ・汚染拡大防止 不用意におむつを開くとシーツや寝衣を汚染させるため、汚染範囲を見極めてから広げる。 | 大量の水様便の場合、おむつを開いた瞬間に溢れ出ることがあるため、吸水シートなどをあらかじめ敷き込んでおくと良い。 |
| 4. 便の拭き取り(粗拭き) ・たっぷりのティッシュや軟らかい布で、押さえるように拭き取る。 ・こすらない。 | ・皮膚損傷の防止 下痢便でふやけた皮膚(浸軟状態)は非常に脆弱。摩擦は表皮剥離(スキン-テア)の直接的な原因となる。 ・効率化 洗浄前に大まかな汚れを取り除くことで、洗浄時間の短縮と必要水量の節約になる。 | 「拭く」ではなく「吸い取る」イメージで。ゴシゴシ拭きは厳禁。 |
| 5. (重要)陰部洗浄 ・微温湯をたっぷり使い、洗い流す。 ・泡立てた石鹸を使用する場合は、泡で包み込むように洗い、成分が残らないよう十分にすすぐ。 | ・化学的刺激の除去 便に含まれる消化酵素やアルカリ成分は皮膚バリアを破壊するため、拭き取りだけでは不十分。洗い流すことが最も効果的。 ・感染予防 細菌やウイルスを物理的に除去する。 | 陰唇や陰嚢の裏側、肛門周囲の皺の間に入り込んだ便を見逃さない。ボトルを押す水圧が強すぎると便が飛散するため注意する。 |
| 6. 水分の拭き取り(吸い取り) ・乾いたタオルや不織布で、水分を押さえるように拭き取る(ドライ)。 | ・浸軟の防止 水分が残っていると皮膚がふやけ、次の排泄物による刺激を受けやすくなる。 ・真菌感染の予防 湿潤環境はカンジダなどの真菌増殖のリスクとなる。 | ここでも「こすらない」を徹底する。愛護的に「押さえ拭き」を行う。 |
| 7. 皮膚の観察と保護剤の塗布 ・発赤、びらん、剥離の有無を観察。 ・撥水性クリーム(ワセリン、ジメチコン含有クリーム等)や保護オイルを塗布する。 | ・早期発見 IAD(失禁関連皮膚炎)の兆候を早期に見つける。 ・皮膚バリア機能の補助 撥水性のある保護剤で皮膚をコーティングすることで、次の下痢便が直接皮膚に触れるのを防ぎ、刺激を最小限にする。 | 既にびらんがある場合は、医師の指示に基づき、軟膏処置やパウダーの使用などを検討する。予防的ケアが最も重要。 |
| 8. 新しいおむつの装着 ・ギャザーをしっかり立てる。 ・パッドの位置を調整する(男性は包み込む、女性は密着させる等)。 ・締め付けすぎない。 | ・漏れ防止 水様便は隙間から漏れやすいため、立体ギャザーを確実に立てることが重要。 ・圧迫創の予防 きつく締めすぎると血流障害や皮膚トラブルの原因になる。指が1〜2本入る程度の余裕を持たせる。 | 下痢が続く場合は、吸水量の多いパッドや、軟便用パッド(便を通過させて水分を吸収するタイプ)の選択も検討する。 |
| 9. 片付け・手洗い・記録 ・汚染物は適切に廃棄(感染性廃棄物か一般か区分する)。 ・手袋を外した後、石鹸と流水で手洗い。 ・便の性状、皮膚状態、処置内容を記録。 | ・感染拡大防止 汚染された手袋やエプロンの表面に触れないよう脱ぎ、手洗いを徹底する。 ・情報の共有 継続看護のため、皮膚トラブルの進行度やケアの効果を記録に残す。 | 特にノロウイルス等が疑われる場合、次亜塩素酸ナトリウム液による環境清拭が必要な場合がある。 |