おむつ交換の手順と根拠|皮膚トラブルを防ぐ技
あずかん日々の看護業務の中で頻繁に行われる「おむつ交換」。ルーチンワークになりがちですが、実は患者さんの皮膚状態を守り、安楽を提供する高度な看護技術の一つです。
この記事では、おむつ交換の標準的な手順とその根拠を詳しく解説します。ただ交換するだけでなく、「なぜそうするのか?」という解剖生理学的な根拠を再確認することで、ケアの質を一段階高めましょう。
おむつ交換の目的と重要性
おむつ交換は単なる排泄物の処理ではありません。以下の3つが主要な目的です。
- 皮膚の保清と保護:排泄物による刺激から皮膚を守り、IAD(失禁関連皮膚炎)や褥瘡を防ぐ。
- 感染予防:尿路感染症などのリスクを低減する。
- 観察:排泄物の性状や量、皮膚状態から全身状態をアセスメントする。
おむつ交換の手順と根拠
| 手順 | 根拠 |
|---|---|
| 1. 準備・環境整備 | |
| 必要物品(新しいおむつ、パット、温湯、清拭剤、手袋、エプロン、ゴミ袋など)をベッドサイドに準備する。 室温を調整し、カーテンを閉める。 | 手技の中断を防ぎ、効率的に行うため。 プライバシーを保護し、露出に伴う寒冷刺激や羞恥心を軽減するため。 |
| 2. 患者への説明と同意 | |
| 「おむつを交換しますね」「お尻を洗いますね」と声をかけ、同意を得る。 | 患者の不安や緊張を和らげ、ケアへの協力を得るため。意識レベルに関わらず声かけを行うことで尊厳を守る。 |
| 3. 感染対策 | |
| 手指衛生を行い、使い捨て手袋とプラスチックエプロンを着用する。 | 標準予防策(スタンダードプリコーション)に基づき、排泄物による交差感染を防ぐため。 |
| 4. おむつを開く・観察 | |
| おむつを開放し、排泄の有無、量、性状(色、混濁、血液混入など)を確認する。 汚染がひどい場合、パット等で大まかに拭き取る。 | 排泄物は患者の消化器・腎泌尿器系の状態を知る重要な情報源であるため。 洗浄前に大まかに汚れを取ることで、陰部洗浄時の汚染拡大を防ぐ。 |
| 5. 陰部洗浄(女性の場合) | |
| 陰唇を開き、前から後ろ(尿道口→肛門)に向かってお湯を流しながら洗い流す。 洗浄剤を使用する場合はよく泡立て、優しく洗う。 | 解剖学的に尿道口と肛門が近いため、大腸菌などが尿路へ逆行し感染することを防ぐ(最重要)。 摩擦による皮膚損傷を防ぐため、泡の力で汚れを浮かす。 |
| 6. 陰部洗浄(男性の場合) | |
| 包皮を愛護的に反転させ、亀頭の汚れ(恥垢)を洗い流す。 洗浄後は必ず包皮を元の位置に戻す。 | 恥垢は細菌繁殖の温床となりやすいため。 カントン包茎(包皮が戻らなくなり循環障害を起こす状態)を防止するため。 |
| 7. 水分拭き取り | |
| 乾いたタオルやドライタオルで、押さえ拭きをして水分を除去する。 | 水分が残ると皮膚が浸軟し、摩擦に弱くなり褥瘡やスキントラブルのリスクが高まるため。 こすり拭きは表皮剥離の原因となる。 |
| 8. 側臥位にする・臀部の清拭 | |
| 患者を側臥位にし、背側から古いおむつを丸め込む。 肛門周囲・臀部の汚れを拭き取り、観察(発赤、びらん等)を行う。 | 仙骨部や尾骨部は褥瘡好発部位であるため、おむつ交換時は必ず皮膚状態を確認する必要がある。 |
| 9. 新しいおむつの挿入 | |
| 古いおむつを体の下に入れ込み、その下に新しいおむつをセットする。 おむつの中心線と背骨のラインを合わせる。 | 中心がずれると、のちの「横モレ」の原因となるため。正しい位置合わせが漏れ防止の基本。 |
| 10. 仰臥位に戻す・おむつの装着 | |
| 患者を仰臥位に戻し、古いおむつを抜き取る。 新しいおむつのテープを留める際、指2本が入る程度のゆとりを持たせる。 ギャザー(立体ギャザー)をしっかり立てる。 | 締めすぎは腹圧をかけ苦痛を与えたり、皮膚トラブルの原因になる。逆に緩すぎると漏れる。 ギャザーが寝ていると、そこから尿便が漏れ出すため、必ず立たせて鼠径部にフィットさせる。 |
| 11. 最終確認・環境整備 | |
| 寝衣を整え、シワがないか確認する。 患者に安楽な体位か確認し、使用した物品を片付ける。 手袋を外し手指衛生を行う。 | シワは局所的な圧迫を生み、褥瘡の原因となる。 感染源を持ち出さないため、最後に必ず手指衛生を行う。 |
現場で役立つコツ:スキントラブルを防ぐポイント
撥水性クリームの活用
下痢便が続く場合や、すでに発赤がある場合は、皮膚保護クリーム(撥水クリーム)を使用し、排泄物が直接皮膚に触れるのを防ぎます。
ゴシゴシ洗わない
皮膚のバリア機能は非常に繊細です。汚れが落ちにくい場合でも、洗浄剤の泡で浮かせるか、オイル等で馴染ませてから優しく除去します。