頚椎骨折の看護|病態から治療、看護のポイントまで徹底解説
あずかん頚椎骨折は、患者さんの生命やADLに直結する重篤な疾患です。的確なアセスメントと迅速な対応が求められるため、とっては不安も大きいかもしれません。
この記事では、頚椎骨折の基本的な知識から、具体的な看護のポイントまで、自信を持ってケアできるよう、分かりやすく解説します。
頚椎骨折とは
頚椎は7つの骨(C1〜C7)で構成されており、頭部を支え、脊髄を保護する重要な役割を担っています。頚椎骨折は、これらの骨に強い外力が加わることで発生します。
骨折そのものだけでなく、骨片が脊髄を圧迫・損傷(頚髄損傷)することが最も重大な問題です。頚髄は脳と体をつなぐ神経の束であり、損傷部位によって四肢麻痺、呼吸障害、感覚障害など、深刻な後遺症を引き起こす可能性があります。
特に、呼吸筋を支配する神経は上位頚髄(C1〜C4)から出ているため、この部位の損傷は自発呼吸の停止に直結する危険性があります。
頚椎骨折で最も重要なのは「脊髄損傷の有無と程度」である。
上位頚髄の損傷は、呼吸停止のリスクが極めて高い。
頚椎骨折の原因
頚椎骨折は、主に以下のような高エネルギー外傷によって引き起こされます。そして、受傷機転を把握することは、損傷の程度を予測し、合併損傷(頭部外傷など)をアセスメントする上で非常に重要となります。
交通事故:自動車やバイクの事故による、首への強い衝撃。
転倒・転落:特に高齢者の場合、自宅での転倒など、比較的軽微な外力でも骨粗鬆症を背景に骨折することがあります。
スポーツ外傷:ラグビーや柔道、体操など、頭部や頚部に強い衝撃が加わるコンタクトスポーツ。
その他:高所からの飛び込み事故など。
頚椎骨折の症状
頚椎骨折の症状は、骨折の部位や脊髄損傷の程度によって大きく異なります。
| 症状の種類 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 疼痛 | 首の強い痛み、圧痛、可動域制限。 |
| 神経症状(脊髄損傷) | 四肢の麻痺・しびれ:手足が動かない、感覚が鈍い。 |
| 呼吸困難:息がしにくい、呼吸が浅い。 | |
| 排尿・排便障害:尿意・便意がない、失禁する。 | |
| 血圧・体温の異常:ショック状態(神経原性ショック)。 |
受傷直後は症状が軽微でも、体動によって骨片がずれ、遅れて脊髄損傷が進行することがあります(二次損傷)。そのため、頚椎損傷が疑われる患者には、頚椎カラーによる固定を徹底し、安易に動かさないことが鉄則です。
治療・対症療法
治療の主な目的は、頚椎の安定化と脊髄への圧迫解除です。
保存的治療
骨折のズレが軽度で、脊髄損傷がない、または軽微な場合に選択されます。
- ハローベスト固定:頭部に装着したリングと体幹ベストを連結し、頚椎を強力に固定します。
- 頚椎カラー固定:比較的安定した骨折に対して用いられます。
手術療法
骨折のズレが大きい、脊髄への圧迫が強い場合に選択されます。
- 脊椎固定術:スクリューやプレートを用いて、不安定な椎骨を固定します。
- 椎弓形成術:脊柱管を広げ、脊髄への圧迫を取り除きます。
対症療法
脊髄損傷によって生じる様々な症状に対して、以下のような対症療法が行われます。
- 呼吸管理:人工呼吸器の装着、気管切開。
- 循環管理:昇圧剤の投与、輸液管理。
- 薬物療法:ステロイド大量療法(脊髄の浮腫軽減目的、有効性については議論あり)。
看護のポイント
頚椎骨折患者の看護では、全身状態の管理と二次損傷の予防が最も重要です。
救急・急性期の看護
- バイタルサインの厳密な観察
- 呼吸状態:呼吸回数、深さ、努力呼吸の有無、SpO2。呼吸筋麻痺による呼吸不全に注意。
- 循環動態:神経原性ショックによる徐脈、低血圧に注意。
- 頚椎の固定と安静の保持
- 頚椎カラーが正しく装着されているか確認し、患者に体動の必要性を説明する。
- 体位変換は医師の指示のもと、複数人でログロール(頭部-体幹を一直線に保つ)で行う。
- 神経学的所見の評価
- 四肢の運動レベル(MMT)、感覚レベルを定期的に評価し、変化の早期発見に努める。
- 苦痛の緩和
- 疼痛の評価と、医師の指示に基づく鎮痛薬の適切な使用。
- 不動による苦痛を傾聴し、精神的サポートを行う。
回復期・慢性期の看護
- 合併症の予防
- 褥瘡予防:定期的な体位変換、スキンケア、体圧分散寝具の活用。
- 深部静脈血栓症(DVT)予防:弾性ストッキングの着用、間欠的空気圧迫法の実施、抗凝固薬の投与管理。
- 感染予防:特に気管切開や尿道カテーテル留置中の患者。
- 排泄ケア
- 排尿・排便障害に対し、導尿や摘便など、患者の状態に合わせたケアを行う。
- 精神的サポート
- ADLの低下や将来への不安に対し、患者や家族の思いを傾聴し、多職種(リハビリ、MSWなど)と連携して支援する。
- リハビリテーションとの連携
- 残存機能を最大限に活用し、ADL拡大を目指すリハビリが円滑に進むよう、情報共有と連携を密にする。