カテーテル関連血流感染症について

カテーテル関連血流感染症(CRBSI)について|原因・診断から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

カテーテル関連血流感染症(Catheter-Related Bloodstream Infection:以下CRBSI)は、中心静脈カテーテル(CVC)などを留置している患者に発生する全身性の感染症です。
重篤化すると敗血症性ショックに至り、患者の予後を大きく左右するため、適切な管理と早期発見が極めて重要となります。
この記事では、CRBSIの知っておくべき病態生理から看護のポイントまでを詳しく解説します。

目次

なぜカテーテル感染が起こるのか

CRBSIは、血管内に留置されたカテーテルを介して微生物が血流に侵入し、増殖することで引き起こされます。細菌が侵入するルートは主に以下の4つが考えられています。

  1. カテーテル外表面からの侵入(主要ルート)
    • 皮膚常在菌が刺入部からカテーテル外面を伝って血管内へ侵入する経路です。短期留置(10日以内)のカテーテルで最も多い原因とされています。
  2. カテーテル内腔からの侵入(ハブ・接続部汚染)
    • 輸液ラインの接続部や三方活栓、ハブなどが汚染され、そこから細菌がカテーテル内腔を通って血流へ入る経路です。長期留置(10日以上)の場合に主因となりやすいです。
  3. 血行性播種
    • 肺炎や尿路感染症など、身体の他の部位にある感染巣から細菌が血流に乗ってカテーテルに付着し、定着(コロニー形成)するケースです。
  4. 輸液製剤の汚染
    • 輸液そのものが製造過程や調製時に汚染されている場合ですが、頻度としては稀です。

【バイオフィルムの形成】
カテーテル表面に付着した細菌は、自ら産生する粘液状の物質(グリコカリックス)でバイオフィルムを形成します。バイオフィルム内の細菌は抗菌薬や免疫細胞の攻撃から守られるため、一度形成されると薬剤での根治が難しく、カテーテルの抜去が必要になるケースが多くなります。

カテーテル感染のリスク因子と起炎菌

主なリスク因子

CRBSIのリスクを高める要因は、患者側とデバイス・管理側の双方にあります。

  • 患者側の要因
    • 免疫不全状態、好中球減少、未熟児、重症熱傷、皮膚疾患、多臓器不全など。
  • デバイス・管理側の要因
    • カテーテルの種類:末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)よりも、内頸・鼠径などのCVCの方がリスクが高い傾向にあります。特に大腿静脈留置は汚染されやすく高リスクです。
    • 留置期間:期間が長くなるほどリスクは上昇します。
    • 手技・管理:挿入時のバリアプリコーション不足、消毒の不徹底、不適切なドレッシング管理。
    • 輸液内容:高カロリー輸液(TPN)や脂肪乳剤は細菌が増殖しやすいため注意が必要です。

主な起炎菌

皮膚常在菌が主な原因となります。

  • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS):最も頻度が高い。
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus):重症化しやすく、転移性病変を作りやすい。
  • カンジダ属(Candida spp.):真菌。TPN使用中や長期抗菌薬使用患者でリスクが高い。
  • グラム陰性桿菌(緑膿菌、大腸菌など)。

感染時の見逃してはいけないサイン

CRBSIを疑うべき臨床所見は以下の通りです。

  1. 発熱(最も重要なサイン)
    • 他の明らかな感染源(肺炎、尿路感染など)がないにもかかわらず、38℃以上の発熱が見られる場合、CRBSIを強く疑います。
    • 特に、「CVCからの輸液開始直後に悪寒戦栗(シバリング)を伴う発熱」が見られた場合(スパイク熱)は典型的です。
  2. 刺入部の局所症状
    • 発赤、腫脹、疼痛、熱感、排膿など。
    • ※注意:刺入部がきれいで炎症所見が全くなくても、CRBSIであることは珍しくありません(全身症状のみのケースが多い)。
  3. 循環動態の変動
    • 頻脈、低血圧、意識障害など、敗血症性ショックの徴候。

治療・対症療法

CRBSIの診断が確定、あるいは強く疑われる場合の治療原則です。

  1. 血液培養の採取
    • 抗菌薬投与前に必ず採取します。
    • 「カテーテルから1セット」+「末梢静脈から1セット」のペア採取が基本です。これにより、カテーテルが原因かどうかの診断精度が高まります(DTP:陽性になるまでの時間差などを比較)。
  2. カテーテルの抜去
    • 原則として、感染源となっているカテーテルは速やかに抜去します。
    • 抜去したカテーテルの先端(約5cm)を無菌的に切断し、培養検査に提出します(カテーテル先端培養)。
    • ※カテーテル温存療法を試みるケースもありますが、黄色ブドウ球菌やカンジダ、ショック状態の場合は即時抜去が原則です。
  3. 抗菌薬投与
    • 培養結果が出るまでは、想定される菌(ブドウ球菌やグラム陰性桿菌)をカバーする広域抗菌薬(エンピリック治療)を開始します。
    • 培養結果判明後は、感受性のある薬剤へ変更します(デスカレーション)。
  4. 全身管理
    • 敗血症性ショックを呈している場合は、大量輸液や昇圧剤による循環管理を行います。

看護のポイント:予防と管理(バンドルアプローチ)

CRBSIは看護師のケアによって予防可能な合併症のため、CDCガイドライン等に基づいたバンドルアプローチの徹底が求められます。

最大滅菌バリアプリコーションの介助

医師がカテーテルを挿入する際、看護師は適切な環境を整えます。

  • 帽子、マスク、滅菌ガウン、滅菌手袋、全身を覆う大きな滅菌ドレープの使用を確認し、不潔操作がないよう監視・介助します。

皮膚消毒の徹底(クロルヘキシジンアルコールの推奨)

  • 刺入部の消毒には、特に禁忌がない限り「1%以上のクロルヘキシジングルコン酸塩エタノール」が推奨されています(ポビドンヨードよりも消毒効果が高く持続性があるため)。
  • 消毒薬が完全に乾燥してからドレッシング材を貼付します。

ドレッシング材と固定の管理

  • 刺入部が観察しやすい透明ドレッシング材を使用します。
  • 交換頻度:透明ドレッシングは7日ごと、ガーゼドレッシングは2日ごと(または汚染・剥離・湿潤した時点で直ちに交換)。
  • カテーテルの無用な動き(ピストン運動)は菌の侵入を助長するため、確実に固定します。

輸液ライン・ハブの管理(Scrub the Hub)

  • 「ハブを磨く」意識が重要です。側注ポートや接続部を使用する際は、アルコール綿で15秒以上(またはメーカー指定の方法で)ゴシゴシと摩擦して消毒します。
  • 不要な三方活栓や延長チューブは極力減らします。

毎日の必要性評価

  • 「このカテーテルは今日も本当に必要なのか?」を毎日評価します。
  • 経口摂取が可能になったり、末梢静脈での投与が可能になれば、医師へ抜去を提案することも重要な看護の役割です。不要な留置期間の短縮が最大の予防です。
参考資料
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